報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
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 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「東京モノレールの旅」

2025-02-28 21:50:57 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[7月15日11時20分 天候:晴 東京都港区浜松町 東京モノレール羽田空港線1121電車・最後尾車内]

 

〔空港快速、羽田空港第2ターミナル行きが、発車致します。途中、羽田空港第3ターミナル、羽田空港第1ターミナルにも停車致します〕

 ホームから発車ベルの音が聞こえてくる。
 昔は車掌が乗務するツーマン列車だったが、現在は運転士のみのワンマン運転となっている。
 リサとは、ロングシート部分に隣り合って座っていた。
 展望席がお好みか、先頭車両は混んでいたが、最後尾は逆に空いている。
 リサは私に寄り掛かるように座り、腕を組んで来た。
 制服姿でそれをやられては誤解される恐れがあるのだが、空港ターミナルにしか行かないモノレールなら大丈夫か。
 ホームドアと車両のドアが閉まり、電車が動き出した。

〔東京モノレールをご利用くださいまして、ありがとうございます。ご乗車のモノレールは、空港快速、羽田空港第2ターミナル行きです。次は、羽田空港第3ターミナルに止まります。途中、揺れる箇所もございます。お立ちのお客様は、手すりにお掴まりになり、お荷物からはお手を放さないよう、お願い致します。お1人でも多くの方にお座り頂けますよう、お荷物は座席に置かないよう、お願い致します。大きなお荷物は、車内中ほどにある荷物置き場を、ご利用ください〕

 国際空港に向かうモノレールだからか、車内放送は日本語放送や英語放送のみならず、中国語や朝鮮語も流れる。
 日本語放送は、穏やかな中年女性の声が充てられている。
 AIによる自動音声ではなく、中村啓子女史による肉声放送を録音したもの。
 何故かウィキペディアでは、車内放送の事については紹介されていないものの、電話の時報の声を充てていることは紹介されている。
 そこで気づいたのだが、あまり掛ける側からの評判はよろしくないナビダイヤルの音声も彼女ではないか?
 『ナビダイヤルにお繋ぎします。〇秒ごとに、10円かかります』のあの声。
 リサ曰く、『お母さんみたいな声』とのこと。
 中村女史は現在70代半ば。
 リサがもしも人間のまま生きていられたら、私よりも10歳年上の5〇歳だから、確かに母娘ほどの歳の差となる。
 いや……待て。
 上野医師がリサの血縁上の母親であるとされる斉藤玲子が駆け落ちした時、1970年代だった。
 この時、斉藤玲子は14歳。
 この時既に上野医師は、妊娠覚悟の交わりをしており、もしもリサを生んだのがそれから1年後の15歳くらいだとしたら……。
 斉藤玲子がもしも生きていたとしたら、まだ60代半ばくらいになる。
 うちの父親は、『昭和40年代は、今からは信じられないくらい大雑把な時代だった』と言っていたが、JCと子作りすることも許されていたのか???

 愛原「昼飯の件なんだが……」
 リサ「うん!?」
 愛原「前に、同じ第2ターミナルで食べたレストランがあっただろ?あそこでいいか?」
 リサ「あそこはステーキが食べられた所だね。いいよ!」
 愛原「鬼だから、美樹も食べるだろうなぁ……」
 リサ「食べるだろうけど、あいつは……」
 愛原「ん?」
 リサ「あ、いや……別に」

 リサは何故か口を閉ざしてしまった。

 リサ「まだ、何も証拠が無いから……」
 愛原「何の話?」

 しかし、リサは首を横に振って黙ってしまった。

[同日11時28分 天候:晴 東京都大田区羽田空港 東京モノレール羽田空港線1121電車・最後尾車内→羽田空港第2ターミナル駅]

 東京モノレールは地上を走行中は、とても良い景色の中を走る。
 特に最初の運河の上を走る場所は、解放的だ。
 夜間は夜景がきれいに見えるスポットとのこと。
 また、地下トンネルに潜る時も、まるで海の中に突っ込んでいくかのようなスリル感のあるものとなっている。
 もっとも、それを体験したければ、先頭車に乗る必要がある。
 だが、モノレールの最高速度は意外に遅く、時速80キロである。
 それでもスピード感を感じるのは、揺れが結構大きいからだろう。
 沖縄都市モノレールよりスピードが速いせいか、そこよりも揺れが大きいように思える。
 新整備場駅の手前からは地下トンネルに入り、あとは終点までずっとトンネルの中である。

〔東京モノレールをご利用くださいまして、ありがとうございました。まもなく終点、羽田空港第2ターミナルです。出口は、右側です。国内線は、車内の航空会社別の降車駅案内を御確認ください。お忘れ物に、ご注意ください〕

 愛原「着いたな。あっという間だ」
 リサ「駅弁食べてる暇無いねー」

 リサは立ち上がると、隣の車両を見て言った。
 モノレールの中間車には展望席は無いが、代わりにボックスシートがある。

 愛原「そりゃそうだろ。各駅停車ならワンチャンあるかもしれないが、それでも食う気にはなれんな」
 リサ「そう?」

 今頃、太平山美樹はまだ空中だが、私達は逆に地下にいる。
 このギャップが凄い。
 そして電車は、羽田空港第2ターミナル駅に到着した。

 

 愛原「着いた」

 臨時ホームもある羽田空港第2ターミナル駅だが、定期列車であるこの電車は、臨時ホームには止まらない。

 愛原「まだ少し時間があるな」

 太平山美樹の乗った飛行機が到着するのは、12時10分。
 まだ30分くらいある。
 フライト情報を見ると、美樹の乗った飛行機は予定通りにフライトするとのこと。
 リサのLINEにも、無事に搭乗したという連絡が来ている。

 リサ「トイレに寄って行っていい?」
 愛原「いいよ」

 取りあえず電車を降りると、北口改札に向かうエスカレーターに乗り、それで改札階に上がった。
 ホームは地下2階で、改札口のあるフロアは地下1階とのこと。
 そこにトイレはある。
 まずはトイレを済ませてから、空港ターミナルに向かうことにした。
コメント
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