報恩坊の怪しい偽作家!

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“私立探偵 愛原学” 「高橋正義の脱走」

2025-02-13 20:46:30 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[7月5日06時30分 天候:雨 東京都墨田区菊川2丁目 愛原家3階・ダイニング]

 

 梅雨空の朝。
 私とリサとパールは朝食を食べる。
 今朝はハムエッグだった。

 リサ「調理実習でハムエッグやらベーコンエッグとか作ったから、わたしも作れる」

 但し、今朝の朝食はパールが作っている。

 愛原「そうなのか。それじゃ、今度の週末はリサにお願いしてみようかな」
 パール「それはいいですね」
 愛原「高橋がいなくなって、家事の当番が大変になったもんなぁ……」
 パール「私は構いません。この家に置いて下さる為でしたら……」
 愛原「それは構わないよ」

 パールにはうちの事務所の住み込み事務員として、ここにいてもらっている。
 家の同居も寮代わりだ。
 高橋とも結婚したことだし、いっそのこと近くのアパートでも借りて、そこから通勤してみてはと提案したことがある。
 家賃は福利厚生で、何割かの住宅手当を支給しようかと思っていた。
 しかし、この2人は断っている。
 そこで寮費を無料にする代わりに、家の家事全般をお願いしていた。
 それは高橋と2人合わせてを想定していた物なので、今のパール1人ではキツいのでは思っている。
 事務所の掃除くらいは、私もヒマな時にしているのだが……。
 高校2年生くらいまでの時は、リサやリサの友達が事務所清掃のアルバイトに来てくれたこともあった。
 さすがに高3の今となっては、受験勉強で忙しいので、そのバイトも頼めなくなっている。
 私に対する傷害罪だけで逮捕されている高橋なら、私自身が被害届を出していないこともあり、すぐに釈放されるのかと思ったが、余罪がバレてしまい、再逮捕された為に、またしばらくは戻って来れなくなってしまった。
 しかも再逮捕の理由が、世界的なバイオテロ組織『コネクション』のメンバーとして、テロ実行犯の手伝いをした疑いである。
 弁護士の秤田先生によると、高橋は警察の取り調べに対し、黙秘を貫いているとのこと。
 ヘタに供述すると、組織に消されることを恐れてのことだろう。
 ということは、闇バイトの実行犯的な、その犯罪組織ではいてもいなくてもいいような存在ではないということだ。
 闇バイトの実行犯が警察に逮捕され、自分が知っていることを警察に話すというくらいは闇バイト運営側も想定しており、実行犯が逮捕されたくらいでは、自分達の所に捜査が及ぶようなことはないよう、予防線を張っている。
 そうではなく、高橋が供述することで、組織の幹部に捜査の手が及ぶ恐れがあるというのなら、高橋の立場は……実行犯ではなく、指示役か?
 表向きは実行犯の手伝いということになっているが、実は実行犯に対する指示役だったのかもしれない。
 指示役なら、更に上の幹部から、計画の詳しい内容を聞かされているだろうから、それが供述されると……。

 愛原「俺は俺で、千葉刑務所に行く計画が進んでるからね」
 リサ「長野の屋敷で、先生を殴ったヤツ……!」
 愛原「あの映像ではな」

 デイライトさんに送ったビデオーテープやDVDは無事に届いたらしく、解析が今も行われている。
 もちろん善場係長には、私の記憶と実際の映像の内容に食い違いがある旨も報告済みだ。
 昔の監視カメラの映像ということもあり、画像が荒く、それらを編集してきれいにしてからでないとよく分からないらしい。
 ましてや、DVDよりも劣化しやすいVHSテープに保存されていたというのもある。

 パール「面会はできそうなのですか?」
 愛原「ああ。『私の贖罪は、私がこれまでしてきたこと、見知って来たことを包み隠さず話すことです。群馬の兄にもそう言われました。もしも愛原様がそれを望まれるのでしたら、私はいつでもお待ち申し上げております』という手紙が届いた」
 パール「そうですか。では、今から……」
 愛原「いや。刑務所側の都合で面会ができないこともあるから、一応その確認の手紙を送ってからにするよ。まあ、来週ってところかな」
 パール「そうですか」
 愛原「高橋の方はどうなんだ?」
 パール「今日、東京拘置所に移送される予定です。黙秘のまま、起訴されることになりました」

 黙秘していても、確たる証拠があるということか。
 警察署における拘束期間が過ぎて尚、検察庁に身柄を送れない場合は釈放するしか無くなる。
 『コネクション』のメンバーと信じてやまない警察としては、どうしても高橋を釈放したくないのだろう。
 確たる証拠があるのなら、それを持って検察庁には送れる。

[同日09時00分 天候:雨 同区菊川3丁目 墨田菊川郵便局]

 リサは学校に行った。
 私は雨の中、傘を差して、郵便局に手紙を出しに行った。
 千葉刑務所側からは普通郵便しか出せないようだが、こちら側からは速達郵便が出せる。
 なるべく早く沖野献受刑者と面会に漕ぎ付ける為、私が送る時は速達で送ることにした。
 そして、郵便局が開く9時に向かった。
 パールがお使いを申し出たのだが、これは私が個人的にやっていることだ。
 パールには事務所で留守番しててもらうことにした。
 五十日ということもあってか、朝一に行っても、やや窓口は賑わっていた。
 もっとも、1番賑わっていたのは金融関係の方。
 貯金窓口やATMの方だ。
 郵便窓口の方は、2~3人の先客がいただけだった。
 局内の椅子に座って、自分の順番が来るのを待つ。
 そして、私の順番が来た。

 愛原「これを速達でお願いします」
 局員「かしこまりました」

 料金を払い、お釣りと領収書、控えを受け取って、郵便局をあとにした。

 愛原「ん?」

 新大橋通りに出ると、何だか空が騒がしい。
 悪天候だというのに、何機もの大型ヘリが飛行しているようだ。
 しかも、通りをサイレン鳴らしたパトカーが何台も通過していった。
 何か大きな事故でもあったのだろうか?

[同日09時15分 天候:雨 同区菊川2丁目 愛原学探偵事務所2階]

 愛原「ただいまァ」

 濡れた傘を持っているので、ガレージ側からエレベーターではなく、正面玄関から階段で2階に上がった。

 パール「せ、先生!大変です!」

 パールが青い顔をして私を出迎えた。

 愛原「どうした?」

 パールは自分のスマホを見せた。
 そこにはニュース速報が出ている。

 パール「ま、マサが……マサが脱走しました!!」
 愛原「はぁーっ!?」

 スマホの画面には、『都内の警察署で銃乱射事件。容疑者1名、逃走!』というタイトルが大きく出ていた。

 愛原「これだけで、どうして高橋が脱走したって分かるんだ?」
 パール「……これだけの手際で、警察署から容疑者を奪還できる組織は数えるほどしかありません。BSAAがそんなことするわけないですし、“青いアンブレラ”も違いますよね?そうなると……」
 愛原「『コネクション』かぁ!?」
 パール「きっと、『コネクション』がマサを奪還しに……」

 ちょっと待て!
 すると、高橋はそれだけの立場のメンバーだったってことなのか!?
 だとしたら、何故今さら!?

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