[3月2日15:00.天候:晴 東京都墨田区菊川 愛原学探偵事務所]
私の名前は愛原学。
都内で小さな探偵事務所を経営している。
今日の午前中は霞が関に行って、そこで政府エージェントの善場主任と打ち合わせをしてきた。
高橋:「確かに近場っスね。高速使えば1時間くらいで行けるんじゃないっスかね」
愛原:「オマエの運転ではな」
高野:「やっと免停解除になったんだから、たまには安全運転しなさいよ」
高橋:「俺はいつだって安全運転だぜ?!」
愛原:「自賛乙」
高野:「自賛乙」
リサ:「自賛乙」
安全運転で免停になるわけねーだろ!
愛原:「しかしまあ、アレだ。地図で調べる限り、そんなに寂しい場所というわけではないものの、確かに電車で行こうとすると不便な場所っぽいや。車で行った方がいいかもしれない」
高野:「今回、善場さん達からのお迎えは?」
愛原:「何も聞いてない。恐らく頼めば迎えに来てくれるんだろうけどな」
高野:「向こうの依頼なんですから、それも面倒看て欲しいものですね」
愛原:「まあ、確かに」
こちらが出した交通費等に関しては、後で請求すれば返って来るのだが。
高野:「そんなに不便な場所なんですか?」
愛原:「駅からは実は直線距離でそんなに離れている感じはしないんだが、ただ、橋を渡ったりして大きく迂回しなきゃいけないのと、何より山ん中だから、これ絶対アップダウンがキツいパターンだろ?駅から歩いて行こうとしたら、絶対後悔するで、これ?」
高野:「たまには運動してくださいな」
愛原:「有酸素運動をやろうとして、酸欠になるパターンかもな」
高橋:「先生、俺が運転しますよ。レンタカーの手配もしておきます」
愛原:「ああ、分かった」
この前の温泉旅行みたいに駅近にあったり、そうでなくてもバスへの乗り換えが便利だったりすればいいんだが、今回はどちらにも当てはまる気がしない。
リサ:「サイトーが来た」
リサは事務所の入口の方を見て言った。
愛原:「よく分かったな。約束でもしていたのか?」
リン:「ううん。匂いで分かる」
愛原:「匂い!?」
事務所入口のドアが開けられる。
斉藤絵恋:「こんにちはー」
リサ:「サイトー、来たー」
愛原:「やあ、こんにちは」
高橋:「ちっ、何しに来やがった」
高野:「そういうこと言わないの。遊ぶなら、あっちの打ち合わせコーナーでね」
絵恋:「はい。あ、あの……今日は別の用事があって来ました」
愛原:「別の用事?」
絵恋:「皆さん、今週末、政府関係の研究所に行かれるんですよね?」
高橋:「誰から聞いたんだ、オメ?」
絵恋:「善場主任さんです」
愛原:「やはり霞が関で、斉藤社長と一緒に善場主任と会ったのか?」
絵恋:「そうです」
愛原:「それで、それがどうしたんだい?」
絵恋:「実は……私も研究所に行くことになりました」
愛原:「ええっ!?それは斉藤社長も一緒ってこと?」
絵恋:「いえ、父は接待ゴルフがありますので……」
また娘を放置か、あの社長。
私が若かりし頃、警備員として某オフィスビルで働いていた頃、休日の癖に出社してくる役員がいて気を使わされたものだが、ありゃきっと家庭が上手く行ってなかったんだな。
絵恋:「私も連れて行ってください!」
愛原:「それは構わないけど……」
高橋:「いいんスか、先生!?」
愛原:「別にいいだろ。どうせ車で行くんだから、1人増えたくらい、どうってことないさ」
絵恋:「ありがとうございます!」
高橋:「その代わり、先生の御為に高級車を用意しろよ?」
愛原:「高橋……」
高野:「自分が高級車を運転したいだけでしょお?」
リサ:「ごめんなさい。新庄は父に付きっ切りなので、代わりにハイヤーの手配しかできなくて……」
高橋:「あぁっ!?オメーはよー、先生の御心が分かってんのかよっ、あぁっ!?」
愛原:「高橋、静かにしろ!」
高野:「アンタが一番先生の御心が分かってないよ」
高橋:「あぁっ!?」
高野:「いいから先生の言う通り、静かにしてな」
高橋:「ちっ……」
それにしても代わりに手配できるのがタクシーではなく、ハイヤーという辺りはスルーできない。
もっとも、高橋が怒ったのは、ハイヤーを手配されると自分で運転できないからだな。
愛原:「いいよ。車はこっちでレンタカー手配するから。ただ、高級車ではないけどね。多分、辛うじてタクシーで走ってる車種だと思うよ」
絵恋:「リサさんと一緒に行けるなら何でも構いません!」
リサ:「サイトー、一緒に行こう」
まあ、研究所と聞いただけで暴走しそうなリサだったが、私が一緒に行くことで何とか宥め切れている所に、更に絵恋さんも一緒に行くというなら逆に心強い。
ん?もしかして善場主任、それを見越して斉藤社長に依頼したのか?
だとしたらさすが政府エージェント、侮りがたし。
高野:「斉藤さんはリサちゃんの付き添いだけ?」
絵恋:「私も検査を受けて欲しいそうです」
愛原:「何だって?キミは別に、霧生市の生還者というわけじゃないだろう?」
絵恋:「この前、静岡に行った時の事件の生還者だからだそうです」
愛原:「そう、なのか?あれ?だけどキミ、あの時、別にハンターからダメージを受けたわけじゃないだろう?」
惨劇を目の当たりにしてしまった精神的ダメージは大きかったものの、直接肉体的なダメージは受けていなかったはずだ。
Tウィルスというのは、バイオハザード発生直後は空気感染するものの、その後は感染者からの接触感染が主となる。
感染者に噛み付かれたり、引っ掻かれたりした際、その負傷者は新たな感染者となる。
絵恋:「そうなんですけど、でも検査を受けろと言われました」
愛原:「ふーん……?」
善場主任には何か思惑があるのだろうか。
Tウィルスは不完全なものなので、10人に1人の割合で最初から抗体を持つ人間がいる。
また、デイライトという名のワクチンが既に開発されており、それを投与すれば後から抗体を作ることもできる。
Tウィルスはアンブレラという製薬会社が開発したウィルス兵器。
アンブレラとは雨傘のこと。
そしてTウィルスに対するデイライトという名のワクチン。
デイライトとは日光のこと。
つまり、『日の光が出ていれば、雨傘は要らない』という英語圏の国ならではの嫌味である。
愛原:「絵恋さんも最初から抗体を持っているということなのかな?」
絵恋:「分かりません」
Tウィルスに対しての抗体があれば新型コロナウィルスへの耐性もあるかどうか。
これを調べるのと、あとはリサのBOWとしての力がそのウィルスへの対抗手段となるか。
これを調べる為に、私達は研究所に呼ばれたのだ。
斉藤絵恋さんは意外だったが。
私の名前は愛原学。
都内で小さな探偵事務所を経営している。
今日の午前中は霞が関に行って、そこで政府エージェントの善場主任と打ち合わせをしてきた。
高橋:「確かに近場っスね。高速使えば1時間くらいで行けるんじゃないっスかね」
愛原:「オマエの運転ではな」
高野:「やっと免停解除になったんだから、たまには安全運転しなさいよ」
高橋:「俺はいつだって安全運転だぜ?!」
愛原:「自賛乙」
高野:「自賛乙」
リサ:「自賛乙」
安全運転で免停になるわけねーだろ!
愛原:「しかしまあ、アレだ。地図で調べる限り、そんなに寂しい場所というわけではないものの、確かに電車で行こうとすると不便な場所っぽいや。車で行った方がいいかもしれない」
高野:「今回、善場さん達からのお迎えは?」
愛原:「何も聞いてない。恐らく頼めば迎えに来てくれるんだろうけどな」
高野:「向こうの依頼なんですから、それも面倒看て欲しいものですね」
愛原:「まあ、確かに」
こちらが出した交通費等に関しては、後で請求すれば返って来るのだが。
高野:「そんなに不便な場所なんですか?」
愛原:「駅からは実は直線距離でそんなに離れている感じはしないんだが、ただ、橋を渡ったりして大きく迂回しなきゃいけないのと、何より山ん中だから、これ絶対アップダウンがキツいパターンだろ?駅から歩いて行こうとしたら、絶対後悔するで、これ?」
高野:「たまには運動してくださいな」
愛原:「有酸素運動をやろうとして、酸欠になるパターンかもな」
高橋:「先生、俺が運転しますよ。レンタカーの手配もしておきます」
愛原:「ああ、分かった」
この前の温泉旅行みたいに駅近にあったり、そうでなくてもバスへの乗り換えが便利だったりすればいいんだが、今回はどちらにも当てはまる気がしない。
リサ:「サイトーが来た」
リサは事務所の入口の方を見て言った。
愛原:「よく分かったな。約束でもしていたのか?」
リン:「ううん。匂いで分かる」
愛原:「匂い!?」
事務所入口のドアが開けられる。
斉藤絵恋:「こんにちはー」
リサ:「サイトー、来たー」
愛原:「やあ、こんにちは」
高橋:「ちっ、何しに来やがった」
高野:「そういうこと言わないの。遊ぶなら、あっちの打ち合わせコーナーでね」
絵恋:「はい。あ、あの……今日は別の用事があって来ました」
愛原:「別の用事?」
絵恋:「皆さん、今週末、政府関係の研究所に行かれるんですよね?」
高橋:「誰から聞いたんだ、オメ?」
絵恋:「善場主任さんです」
愛原:「やはり霞が関で、斉藤社長と一緒に善場主任と会ったのか?」
絵恋:「そうです」
愛原:「それで、それがどうしたんだい?」
絵恋:「実は……私も研究所に行くことになりました」
愛原:「ええっ!?それは斉藤社長も一緒ってこと?」
絵恋:「いえ、父は接待ゴルフがありますので……」
また娘を放置か、あの社長。
私が若かりし頃、警備員として某オフィスビルで働いていた頃、休日の癖に出社してくる役員がいて気を使わされたものだが、ありゃきっと家庭が上手く行ってなかったんだな。
絵恋:「私も連れて行ってください!」
愛原:「それは構わないけど……」
高橋:「いいんスか、先生!?」
愛原:「別にいいだろ。どうせ車で行くんだから、1人増えたくらい、どうってことないさ」
絵恋:「ありがとうございます!」
高橋:「その代わり、先生の御為に高級車を用意しろよ?」
愛原:「高橋……」
高野:「自分が高級車を運転したいだけでしょお?」
リサ:「ごめんなさい。新庄は父に付きっ切りなので、代わりにハイヤーの手配しかできなくて……」
高橋:「あぁっ!?オメーはよー、先生の御心が分かってんのかよっ、あぁっ!?」
愛原:「高橋、静かにしろ!」
高野:「アンタが一番先生の御心が分かってないよ」
高橋:「あぁっ!?」
高野:「いいから先生の言う通り、静かにしてな」
高橋:「ちっ……」
それにしても代わりに手配できるのがタクシーではなく、ハイヤーという辺りはスルーできない。
もっとも、高橋が怒ったのは、ハイヤーを手配されると自分で運転できないからだな。
愛原:「いいよ。車はこっちでレンタカー手配するから。ただ、高級車ではないけどね。多分、辛うじてタクシーで走ってる車種だと思うよ」
絵恋:「リサさんと一緒に行けるなら何でも構いません!」
リサ:「サイトー、一緒に行こう」
まあ、研究所と聞いただけで暴走しそうなリサだったが、私が一緒に行くことで何とか宥め切れている所に、更に絵恋さんも一緒に行くというなら逆に心強い。
ん?もしかして善場主任、それを見越して斉藤社長に依頼したのか?
だとしたらさすが政府エージェント、侮りがたし。
高野:「斉藤さんはリサちゃんの付き添いだけ?」
絵恋:「私も検査を受けて欲しいそうです」
愛原:「何だって?キミは別に、霧生市の生還者というわけじゃないだろう?」
絵恋:「この前、静岡に行った時の事件の生還者だからだそうです」
愛原:「そう、なのか?あれ?だけどキミ、あの時、別にハンターからダメージを受けたわけじゃないだろう?」
惨劇を目の当たりにしてしまった精神的ダメージは大きかったものの、直接肉体的なダメージは受けていなかったはずだ。
Tウィルスというのは、バイオハザード発生直後は空気感染するものの、その後は感染者からの接触感染が主となる。
感染者に噛み付かれたり、引っ掻かれたりした際、その負傷者は新たな感染者となる。
絵恋:「そうなんですけど、でも検査を受けろと言われました」
愛原:「ふーん……?」
善場主任には何か思惑があるのだろうか。
Tウィルスは不完全なものなので、10人に1人の割合で最初から抗体を持つ人間がいる。
また、デイライトという名のワクチンが既に開発されており、それを投与すれば後から抗体を作ることもできる。
Tウィルスはアンブレラという製薬会社が開発したウィルス兵器。
アンブレラとは雨傘のこと。
そしてTウィルスに対するデイライトという名のワクチン。
デイライトとは日光のこと。
つまり、『日の光が出ていれば、雨傘は要らない』という英語圏の国ならではの嫌味である。
愛原:「絵恋さんも最初から抗体を持っているということなのかな?」
絵恋:「分かりません」
Tウィルスに対しての抗体があれば新型コロナウィルスへの耐性もあるかどうか。
これを調べるのと、あとはリサのBOWとしての力がそのウィルスへの対抗手段となるか。
これを調べる為に、私達は研究所に呼ばれたのだ。
斉藤絵恋さんは意外だったが。
“ゴーストバスターズ”のノリで書く気にはなれなかったな。
あれもあれで面白いと思うけど。
多分、あのノリで近いのは休止中の“アンドロイドマスターシリーズ”だと思う。
ネタ帳に、『バージョン5.0、乗り捨てられた路線バスを無断拝借して敷島を現場へ送迎』とある。
“ゴーストバスターズ”にも似たようなシーンがあることから、多分それを元ネタにしたものだろう。
さすがにゾンビはバスを運転できないし、“ユタと愉快な仲間たちシリーズ”だと、ホウキや魔法で移動するだろうから、そういうシーンは使えない。