報恩坊の怪しい偽作家!

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“私立探偵 愛原学” 「五十嵐元社長との接見」

2025-01-28 20:39:42 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[7月1日20時45分 天候:雨 群馬県吾妻郡東吾妻町某所 ペンション『いたち草』3階プレイルーム&バー]

 私達を乗せた古めかしいエレベーターが3階に着く。
 しかし、鉄格子状の扉が開くと、目の前には鉄扉が閉じられていた。
 この鉄扉は……防火扉だ。
 防火扉には鍵が掛かっておらず、執事はそれを手で開けた。
 なるほど。
 3階に行った時、エレベーターの存在に気付かなかったのは、防火扉で仕切られていたからか。
 防火扉の向こうは、見覚えのある廊下があった。

 執事「こちらでございます」

 相変わらず、窓の外からは大雨と雷の音が響いている。
 明日、本当に帰れるのだろうか?
 吾妻線は大雨に弱いイメージだから、もしかすると今は運転見合わせになっていたりするのかも。

 愛原「オーナーズルームがあるんですか?」
 執事「いいえ。確かに御主人様の御部屋はあるのですが、御主人様はそこではなく、プレイルームへ御案内するようにとのことです」
 愛原「プレイルーム?」
 リサ「ど、どんなプレイするの?」(;゚∀゚)=3ハァハァ
 愛原「エロい話じゃないぞ?プレイルームってのは、小さな小さなラウンドワンみたいな部屋のことだ」
 リサ「ラウンドワンかぁ……」

 そうして執事に案内された部屋には、確かに『プレイルーム』と、ドアに書かれていた。

 執事「失礼致します」

 執事はドアをノックして開けた。

 執事「愛原様方を御案内してございます」
 五十嵐皓貴「御苦労……」

 プレイルームの中は、カジノバーとしての色が濃い感じになっていた。
 まず、小さなバーカウンターがあり、そのカウンターの丸椅子に、1人の男が座っている。
 部屋の中央にはビリヤード台やルーレット台があり、壁際にはスロットマシーンの他、ブラックジャックやポーカーをやる為のトランプ台もある。
 ピンボールゲームやダーツもあった。
 これは恐らく、アンブレラ時代からある設備だろう。
 ジュークボックスからは、ピアノソロのジャズが流れていた。

 https://www.youtube.com/watch?v=PyJFlvqrdiQ

 五十嵐皓貴「……何か、前にも会ったことがあるような気がしますが、取りあえず、このペンションのオーナーとしては、『初めまして』って事で宜しいですか?」

 元社長……いや、オーナーは立ち上がると、私ににこやかな笑顔を見せた。
 年齢は60代前半といったところか。
 そこの執事より10歳若いと言った感じ。
 それでも白髪が目立ち、それをオールバックにしている。
 ペンションではシェフも務めているということだが、今は調理士の服は着替え、黒いベストとネクタイを着けている。

 愛原「そうですね。『宿泊客』として、お世話になっております、『オーナー』」
 五十嵐「色々と私に聞きたいことがあるようですね。結構ですよ。立ち話も何ですから、どうぞ、お掛けください。何か飲まれますか?サービスに致しますよ」
 愛原「えらくサービスがいいですね。それとも、その料金も斉藤さんが払ってくれたんですか?」
 五十嵐「サイトウ?いいえ。本日はそのような名前のお客様はお泊まりになっておりませんが?」
 愛原「は!?」
 五十嵐「サトウ様でしたら、お泊まりになっておられましたけどね、何やら急にこの悪天候の中を出て行かれたようですが……」

 も、もしかして、斉藤元社長、ここでも偽名で宿泊していたのか!?

 愛原「あっ!」

 それで分かったことがある。
 どうして善場係長が、今の五十嵐元社長には何の罪も無いと仰ったのか。
 もしも逃走中の容疑者だということが分かっているのであれば、即座に通報しないと、犯人隠匿の罪に問われる恐れがある。
 それが無いということは……。

 愛原「オーナーは、『斉藤容疑者が宿泊していたことを知らない』テイで行っているわけですね!?」
 五十嵐「……はて?何の話ですかね?」

 今の今まで姿を現さなかった理由も分かった。
 斉藤元社長がいる間は姿を隠すことで、『斉藤容疑者は偽名を使っていたし、フロント業務は事情を知らない執事がやっていたし、自分はシェフとして厨房にずっといたから、斉藤容疑者の事は一切知らない。だから、犯人隠匿の罪に問われる筋合いは無い』ということにするつもりなのだ!

 五十嵐「それより、私に何か聞きたいことがあるのでは?その前に、お飲み物は何か?おつまみも御提供しますよ?」
 リサ「……カシスオレンジ」
 五十嵐「カシスオレンジ風ノンアルコールカクテルですね。他には?」
 リサ「サラミとソーセージの盛り合わせ」
 愛原「肉か……」
 五十嵐「愛原様は何になさいますか?」
 愛原「ジン・トニック。あと、おつまみは『山盛りポテト』で」
 五十嵐「かしこまりました」

 作っている間、私はオーナーに話し掛けた。

 愛原「ここは、日本アンブレラの研究施設だったんですか?」
 五十嵐「そうです。表向きは保養施設だったんですけど、研究施設もありました。もっとも、日本版リサ・トレヴァーは、あくまで霧生市の開発センターが専門で、こちらは専らTウィルス関係の研究だけでしたがね」
 愛原「ウィルスが漏れたということは無さそうですね」
 五十嵐「アメリカの管理が杜撰だっただけです。もっとも、あれは幹部養成所のマーカス所長の造反だったというのが真相ですが。こちらでは、そんなことはありませんでしたよ」
 愛原「今しれっと日本版リサ・トレヴァーの話が出ましたが、やっぱり社長として知っていたんですね?」
 五十嵐「私は息子や白井から、『難病の治療の為』だと聞いていました。要は、『難病の治療薬開発の為の施設として、霧生市の開発センターを運営していく』と、聞いていました。その為、私は息子の副社長を、その統括担当に任命したわけです。……まあ、実態は愛原様も御存知だと思いますが」
 愛原「すると、任命責任はあるわけですね」
 五十嵐「それで私は、裁判所から懲役5年の実刑判決を受けました。息子の責任は更に重く、高裁から懲役12年を言い渡されましたが、御遺族方からの反発は強く、今は最高裁で争っている所ですね」

 もし高裁で懲役12年が確定しても、それまで拘置所などに未決囚として収監されていた時期は差し引かれるから、実際に服役する期間は10年を下回るだろう。
 果たして最高裁は、この12年よりもっと重い刑罰を元副社長に言い渡すことができるのだろうか。

 五十嵐「どうぞ」

 私がしばらく考え込んでいると、オーナーは注文したカクテルと軽食をカウンターの上に置いた。

 愛原「いただきます」

 私は斉藤元社長との関係について聞いてみたが、これには答えたくないようで、『元同業の経営者』とか、『互いに現役時代、業界内で会ったことがあるだけ』としか話さなかった。
 また、“青いアンブレラ”のことについても、『存在自体は知っているが、私は何もタッチしていない』とのことだった。

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