報恩坊の怪しい偽作家!

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 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「高尾山」

2025-03-06 21:03:02 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[7月16日09時43分 天候:晴 東京都八王子市高尾町 京王電鉄高尾線7501電車・10号車内→京王電鉄高尾山口駅]

 高尾駅を出発した電車は、それまでの複線から単線となる。
 相変わらず平地を走るJR中央本線と違い、一気に坂を登って行く。
 高架からトンネルに入るが、そこを出ると一気に景色が山岳地帯となる。
 トンネルを出ると景色が一変するというのは、JR中央本線と共通しているところ。
 カーブもキツくなる為、電車はとても高速では走れない。
 本線を最高時速100km以上で走ったこともあったのとは大違い。

〔「まもなく終点、高尾山口、高尾山口に到着致します。お出口は、右側です。お降りの際はお忘れ物の無いよう、よくお確かめください。高尾山口駅から先、高尾山方面へは高尾登山電鉄のケーブルカーまたはリフトをご利用ください。本日も京王をご利用くださいまして、ありがとうございました」〕

 愛原「もう、周りは山だ。観光地だから賑わってるけど、こういう所で良かったのか?」
 美樹「あー……もうここは、人間の町なんだねェ……」
 愛原「そりゃ、外れとはいえ東京都だからな」

 https://www.youtube.com/watch?v=HDJsQ82FhyE
(高尾山口駅周辺のテーマ)

 

〔「ご乗車ありがとうございました。高尾山口、高尾山口、終点です。お忘れ物、落とし物の無いよう、ご注意ください。……」〕

 ドアが開いて、乗客達がホームに降り出した。
 私達もその後に続く。

 愛原「あー、確かにちょっと空気が違うなぁ……」
 リサ「前来た時もこんな感じだったね」
 愛原「そうだったな」
 美樹「本当に賑わってっぺしゃね……」
 愛原「まあ、3連休だしな。紅葉のシーズンや、年始の初詣でシーズンの時はもっと賑わうよ」

 駅は高架駅となっている。
 階段を下りて、コンコースに向かう。
 コンコースにトイレがあるので、そこに立ち寄って小休止。
 それから改札口を出た。
 尚、交通系ICカードを持っていない美樹はキップで改札口を出る。
 秋田内陸縦貫鉄道では、そんなものは導入されていないからだ。
 JRに乗る機会でもあれば、まだ使う機会もあるのだろうが……。
 駅を出て、『もみじ通り』という遊歩道を進む。
 この先には、乗り換え先である高尾登山電鉄ケーブルカー・リフトがあるのだ。

 愛原「この時点でも、ある程度標高はあるはずだが、まだ暑いな」
 リサ「そうだねぇ……」
 美樹「先生は生身の人間だべしゃ。熱中症にならねェでな?」
 愛原「分かってる。水分補給はこまめにするよ」
 美樹「うちの山でも、人間の登山者が、たまに倒れて死んだりするんだ。ンだから、気ィつけねェと……」
 愛原「クマのエサにでもされちゃ、浮かばれんな」
 美樹「鬼のエサに……あ、いや、クマのエサだべしゃ」
 リサ「…………」

 美樹の発言に、リサが不審そうな顔をした。

[同日10時00分 天候:晴 同地区内 高尾登山電鉄清滝駅→高尾鋼索線ケーブルカー車内]

 

 京王電鉄の高尾山口駅から、ケーブルカーやリフトを運行する高尾登山電鉄の清滝駅までは徒歩5分ほどである。
 その途中でも、土産物屋などが軒を連ねていた。
 もみじ通り以外のルート上にも土産物屋はあるようなので、パールの為に帰りに覗いてみよう。
 酒が好きなので酒でもいいし、甘いお菓子でもいいだろう。
 善場係長にも買って行きたいところだが、公務員としての倫理観からか、賄賂だと思われたくないらしく、頑なに受け取ろうとしない。

 愛原「そういえばキミ、東京土産は買って行ったりするの?」
 美樹「そのつもりです」
 愛原「そうか」
 リサ「2泊3日なのに、随分デカいキャリーケース持って来たの、お土産を詰めて帰る為らしいよ?」
 愛原「マジか。じゃあ、それの土産物も物色しないとな」
 リサ「ぶっちゃけ、東京駅で買えばw」
 愛原「おい!」
 美樹「まあ、せっかく山さ行ったんだがら、山で手に入れるのが1番だべ」
 愛原「そりゃそうだ」

 駅の中に入り、キップ売り場に並ぶ。
 高尾山に登るには、ケーブルカーとリフトの2ルートがある。
 リフトはスキー場のゲレンデとかにある、あれだ。
 2人乗りのリフトが常時運転されており、混雑緩和に役立っているそうだが……。

 リサ「先生と2人で乗れないのなら、ケーブルカー!」
 愛原「はいはい」

 ケーブルカーの始発電車は8時で、終電は月に寄って異なる。
 冬が早くて、夏が遅いパターン。
 で、始発から終電までは15分に1本というパターンダイヤ。
 混雑時は、更に増便することもあるという。
 今のところは、まだ15分に1本のようだ。
 3連休とはいえ、まだ本格的な夏休みに入ったわけではないからだろうか。
 往復乗車券を3人分購入する。

 愛原「キップは1人ずつ持とう」
 美樹「ありがとうございます」
 リサ「わたし、先生の隣!」
 愛原「指定席じゃねーよ!w」
 美樹「リサは本当に、愛原先生の事が大好きだべしゃね」
 リサ「ダーリンだもん!」
 美樹「本当に……いい男を捕まえたもんだべ」
 リサ「でしょ!?」
 愛原「……!」

 その時、美樹の私の見る目が一瞬変わったような気がした。
 それは、『人食い鬼が、獲物の対象となるべき人間を見る目』のようだった。

 美樹「ああ。この匂い……貴重な『稀人(まれびと)』だ」
 愛原「マレビト?何だそれ?」
 美樹「人間の中でも、特に美味い血や肉を持った人間の事だ。食ったら、とでも力ば強くなる。……他の鬼に狙われねがったが、先生?」
 愛原「あ……」
 リサ「チッ!横取りしたらコロス……!」
 美樹「残念だけンど、諦めるべ。獲物の横取りは、村の掟で禁止だべしゃ」
 リサ「そうか……」
 愛原「破ったりしたら、村八分か?」
 美樹「……ま、ンなとこたべね」
 愛原「んん?」
 美樹「先生、この列さ並べばいいんだべ?」
 愛原「そ、そうだな」

 私達は次のケーブルカーの乗車待機列に並んだ。

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