報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「監禁お遊戯」

2021-03-15 11:15:36 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[日時不明 時刻不明 天候:不明 場所不明]
(この話は18禁です)

 私の名前は愛原学。
 都内で小さな探偵事務所を経営している。
 ここはどこだ……?何があった……?
 そうだ。
 確か、あれはホテルで寝ていた時だ。
 突然、窓ガラスが割れた音がしたと思ったら、起き上がって抵抗する間もなく、外へ連れ出されたんだっけ。
 後からは高橋の叫び声とか何やら聞こえたような気がしたが……。
 で、私は夢を見ていた。
 リサにベッドの上で拘束され、暴走したリサに下半身を性的に食い尽くされる夢だ。

 愛原:「リサ……やめろ……。俺はオマエの『親』だぞ……そんな……あぁ……!なに……?『娘』じゃない?『嫁』だって……?いや、そんな……」

 ジュプジュプとチ○○を激しくフ○ラされる。
 リサのヤツ、どこでこんなことを覚え……。

 愛原:「ぅうっ!あっ!はっ……!」

 そして私がついに美少女の口の中に熱いモノを放った時、私はそれが夢ではないことに気が付いた。
 コクンコクンと喉を鳴らして飲み干す者は……。

 愛原:「だ……誰だ……?」

 ベッドの上に四肢を縛り付けられているのは夢と同じ。
 だからこれは一瞬、まだ夢の続きなのではないかと思った。
 だが、さっきよりも随分と感覚が現実的だ。
 だからこれは夢ではない。
 私が何とか頭だけ上げて、下半身を見ると、そこに白い仮面を着けた者がいた。
 口を使う為に、仮面を少しずり上げているようだ。

 ???:「美味しかったよ。さすが『2番』を飼い慣らしてるオジさんだね」
 愛原:「だ、誰だ!?」
 ???:「私のことはイチカって呼んで」

 イチカと名乗る少女は私の上に這って来た。
 ま、待てよ。
 イチカ……イチ……1……『1番』か?!

 愛原:「お前は『1番』か!?」
 『1番』:「だったらどうするの?」
 愛原:「ここはどこだ!?俺を殺す気か?!リサ達はどうした!?」
 『1番』:「ここは霧生市のどこかだよ」

 周りを見渡すと、どこかの廃墟の中のようだった。
 コンクリートの天井、床、壁だけで窓は一切無い。
 室内にはドラム缶の中に入った廃木材などで起こさた焚火が灯っており、それが室内の灯り兼暖房であるようだ。
 よく見ると天井には通気ダクトがあり、それで換気はされているのだろう。

 『1番』:「そして私はあなたを殺す気は無い。……今のところはね。でも、食べたいのは本当。さっき味見させてもらったけど、さすがだね。今まで食った人間よりも美味しかったよ。『2番』達はねぇ……慌てて追いかけて来るとは思うけど、ここまで辿り着けるかどうか……」

 『1番』は仮面の下から出している口に笑みを浮かべた。
 気が付くと私は一糸纏わぬ姿をしていた。

 『1番』:「さ、話はここまで……。まだデキるよね?大丈夫。私の食欲を満たしてくれるのなら、殺しはしない……」

 食欲じゃなくて性欲だろ!?
 私はそうツッコミたかったが、それができなかった。
 仮面を外した少女の顔は、リサとはまた違う美少女の顔つきだった。
 強いて言うならリサがジュニアアイドル的な感じなのに大して、こちらの『1番』はロリ系AV女優のような感じだ。

 『1番』:「まずはチューしよ」

 『1番』は紅潮した顔で私を見つめると、口元に牙を覗かせて私の口に吸い付いた。
 額の上には2本角。
 私は今、『2番』のリサとは別の鬼娘に犯(たべら)れようとしている。

 愛原:「うぅう……!」

 それから何時間経ったのだろう?
 私はキ○○マが空になるほど鬼娘に『白い血』(『1番』がそう言った)を吸いつくされ、体中には『所有の証』と称して、歯形やキスマーク、爪痕を付けられた。
 私が再び意識を無くしていると、顔に温いお湯のようなものを掛けられて起こされた。

 『1番』:「おはよ~」
 愛原:「ぷはっ!何を……!?」
 『1番』:「おくちあーんしましょうね~!」

 『1番』が私の顔の上に中腰になって、放尿していたのだった。

 愛原:「ごぽっ!ごぼぼぼ!」」
 『1番』:「これであなたも感染者!つまり、私のもの!あーっはっはっはっはーっ!」

 『1番』は私の口に聖水を注ぎ込むと、勝ち誇ったように大笑いした。

 『1番』:「ねぇ。『2番』のこと、教えて?」
 愛原:「な、なに?どういうことだ?」

 すると『1番』は足で私のチ○○を踏み付けた。

 『1番』:「私が質問してるんだよ?」

 そういって適度な力で私のアレをグリグリ踏みつける。

 『1番』:「聞かせて?」
 愛原:「な、何を話せば……?」
 『1番』:「自分で考えたらー?」

 『1番』は紺色の靴下をはいた足で、私の勃起したアレをグシュグシュと刺激する。
 おかげで私はまた射精してしまった。
 その様子を見た『1番』がまた興奮した顔になる。

 『1番』:「そうだ。『2番』の生体識別番号でいいや。教えてくれたら、私のお○○こで扱いてあげる」
 愛原:「な、何だって!?なに番号?」
 『1番』:「トボけなくていいよ。『2番』が化け物になったら、もうあいつのことは忘れられるよね?『2番』は軍人さん達に殺される。そうなったらオジサン、寂しいよね?だから、『2番』が死んだら、今度は私がオジサンのペットになってあげる」
 愛原:「な、何を言って……!?」

 すると『1番』は私の目の前に、ロクに陰毛も生えていないアレを突き付けた。
 そして、自分の指でソレをいじくり回す。

 『1番』:「ほぉら……。15歳JCのお○○こだよ。ち○○が欲しくて、ウズウズしているの……」
 愛原:「うう……!」

 もしかして、リサも制御不能になったらこんな感じになるのだろうか?

 『1番』:「言う事聞かないと、そろそろ肉の方を食べるよ?」

 『1番』はそう言って私の右腕に食らい付いた。

 愛原:「いでぇっ!!」
 『1番』:「あっは!赤い血と肉も美味しそうねぇ!さあ、どうする!?素直に言う事聞いて、『白い血』を出すか、それとも聞かないで赤い血を出す!?それとも……」

 『1番』はクルッと後ろを振り向いて、今度は肛門を私の顔に向けた。
 プスッという放屁の音がして、肛門が少し広がった。

 『1番』:「今度は私のウ○○食べるぅ?」
 愛原:「や、やめろ……」

 すると突然、地響きがした。
 地震の揺れではなく、砲弾が着弾した時の揺れだと分かったのは、それだけ私も慣れてしまったということだろうか。
 そんなことを考えていると……。

 『1番』:「しょうがないなぁ。じゃあ、本人に直接聞くか」

 『1番』はそう言うと、脱ぎ捨てた白いショーツを穿き直した。
 相変わらず、聖クラリス女学院の制服は着たままだった。

 リサ:「ここかぁ!?」

 鉄扉を蹴破ってリサが飛び込んで来た。
 リサもまた白い仮面を着けていたが、私はすぐにリサだと分かった。

 『1番』:「ようこそ」
 リサ:「『1番』!!先生に何をした!?」
 『1番』:「静かにして。真夜中だよ?近所迷惑だよ」
 リサ:「フザケるな!!」

 リサが両手から触手を出して、『1番』に攻撃を仕掛ける。
 私があられもない姿をしている中、決戦の火ぶたが今切って落とされた。
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“私立探偵 愛原学” 「雪の降る街を」 2

2021-03-14 20:10:00 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[3月6日15:00.天候:曇 福島県南会津郡南会津町 ダイワリンクホテル会津田島]

 私の名前は愛原学。
 都内で小さな探偵事務所を経営している。
 この町は福島県でも豪雪地帯に相当する南会津郡に位置する。
 雪が少なく、温暖な浜通りと比べても、同じ福島県なのかと疑ってしまうほどの気候の違いだ。
 除雪はされているものの、踏み締めなければならない雪道を私達は歩いた。
 寒いからか、栗原さんは制服のスカートなので、その下にストッキングを穿いていた(駅のトイレで穿いてきた)。
 雪自体は今は降っていないものの、空はどんよりと曇り、いつまた雪が降ってきてもおかしくない。
 道行く車の中には、スモールランプやフォグランプを点灯して走行するものもあった。
 時折風が吹くと、積もった雪が舞い上がって視界が妨げられるからである。
 途中、踏切を渡る際に警報機が鳴って遮断機が下りた。
 通過していった列車は、上りの特急列車だった。
 私達が乗って来た下り列車の折り返しと思われる。
 歩道を歩いて、ようやくホテルに到着する。
 ホテルの中は別世界のように暖房が効いて温かった。

 スタッフ:「いらっしゃいませ」
 善場:「それではちょっと行ってきますので、待っててください」
 愛原:「お願いします」

 善場主任はフロントに向かって行った。
 そこで女性スタッフと、会話を交わしている。
 ホテルは2階建てで、ロビーの中に階段がある。
 エレベーターは無い。
 しばらくして、主任が戻って来る。
 手にはカードキーが3枚あった。

 善場:「部屋割りはツインが2部屋、シングルが1部屋です」
 栗原:「私がシングルに泊まります」

 栗原さんが先に申し出た。

 愛原:「栗原さん、いいのかい?」
 栗原:「ええ。勤行しなきゃいけないので」
 愛原:「ゴンギョウ……?」
 善場:「18時になったら、またこのロビーに集まりましょう。それでいいですか?」
 愛原:「分かりました」

 私達はカードキーを手に2階への階段を上がった。

 愛原:「2回目だな」

 部屋に入り、ドア横のカードキーボックスにカードキーを挿し込むと部屋の照明が点いた。
 ビジネスホテルにはよくあるタイプである。
 これがキータイプであっても、タグを挿し込んで電源の入り切りをするというシステムに変わりは無い。
 ビジネスホテルの中には照明が電球タイプや間接照明しか無い薄暗いタイプの部屋があったりするが、こちらはちゃんと丸い天井灯が煌々と点灯するタイプだった。
 明るくてアットホームな雰囲気である。

 高橋:「先生、どっちのベッドで寝ますか?」

 ツインルームなので、当然室内にはベッドが2つある。
 通常のシングルベッドより広く、セミダブルくらいの広さはありそうだ。

 愛原:「そうだな……。お前、タバコ吸いに行くだろ?だったらドアに近い方がいいだろ。俺が窓側で寝るから、お前はドア側な」
 高橋:「分かりました」

 寝る場所が決まると、私は早速そのベッドに腰かけた。

 高橋:「じゃあ早速、ちょっと一服してきます」
 愛原:「ああ。行ってこい」

 このホテルは全室禁煙の代わりに、1階に喫煙室がある。
 高橋はタバコを手に、そこへに向かった。
 レースのカーテンを開けると、ホテルの出入口に面した通りが見える。
 この町はあまり高い建物は建っておらず、しかもこのホテルの周りなんか特にそういうこともあって、意外と遠くまで見通せた。
 この前泊まった時は、国道バイパスを高橋のような兄ちゃん達が乗っていたと思われる、ちょっとヤンチャな車が爆音を立てて通過したものだが、さすがに冬は休業だろう。
 だが、私がこのベッドを選択したことは、後に凶となるのであった。

[同日18:00.天候:雪 同町内 同ホテル→麺や 焚く蔵]

 時間になって私達が1階のロビーに行くと、既に善場主任達は待っていた。

 愛原:「お待たせしました」
 善場:「いえ。時間通りですね。行きましょう」

 栗原さんは制服から私服に着替えている。
 上は相変わらずコートを着ているが、下はスラックスを穿いているのが分かった。
 何か、制服よりも私服の方が動き易いような気がするのだが……。
 それでも、麻袋に包んだ刀を持ってくることは忘れていない。
 小雪の舞う中ホテルを出て、目当てのラーメン店に向かう。

 善場:「天気予報によると、また夜は雪のようなので、これ以上積もらないかどうか心配です」
 高橋:「積もるに決まってんだろ。豪雪地帯ナメんじゃねぇ」

 さすが高橋。
 高橋もまた新潟県下越地方という豪雪地帯出身なので、それならではの言葉である。

 愛原:「善場主任、BSAAを呼んでいるのは、もしかして車で行けない場合の保険ですか?」
 善場:「さすが愛原所長。お見通しですね。いざとなったら、BSAAのヘリコプターで行こうかと」
 愛原:「いいアイディアですね。うん、いいアイディアだ」
 高橋:「だったら最初からヘリで行った方が良くね?」
 愛原:「高橋。よく考えろ、“ベタなバイオハザードシリーズの法則”を。カプコン製のヘリって、大抵どうなるんだっけ?」
 高橋:「……あっ!確かにそうですね!サーセンっした」
 リサ:「ネメシスのヤツ、『カプコン製のヘリは墜とし甲斐がある』って言ってた」
 愛原:「つーかむしろネメシスの場合、それが仕事みたいなもんだからな」

 私達はそんなことを話しながら目当てのラーメン店に入った。
 夕食時ということもあって席が空くまで少し待たされたが、回転の良いラーメン店ということもあって、思ったより早くテーブル席に着くことができた。
 そして何より感動的だったのは、緊急事態宣言の対象外地域である為、20時で閉店する時短営業が行われていないということだった。

 愛原:「何か、こういう所に来ると、ビール飲みたくなるなぁ……」
 善場:「明日に影響が出ない範囲でなら、自己責任でお願いします」
 愛原:「じゃ、じゃあ一杯だけ……」
 高橋:「お供します!」
 リサ:「お供します」
 愛原:「リサはあと5年待ちなさい!」
 リサ:「えーっ!」
 栗原:「鬼は酒好きって本当だねぇ……」
 愛原:「ソフトドリンクならいいよ。栗原さんも」
 栗原:「ありがとうございます。私はウーロン茶で」
 リサ:「オレンジジュース」

 結局、善場主任もハイボール頼んでたから、一杯くらいは飲みたかったのだろう。
 私はいつものように醤油チャーシュー麺を注文し、そこに味玉をトッピングしたが、やはりリサが大食いであった。
 どうしても肉を食べたいリサは、私と同じ物(但し、味玉のトッピングは無し)にプラス唐揚げ5個を注文したのだから。
 その割にはそんなに体は大きくないのに、食べたものはどこに行くのだろうかと思う。
 それはやはり形態変化の際と、変化した後の怪力を使う時に消費されるのだそうだ。
 だからそれを維持する為、BOWは高い栄養価を得る手段として食人をするのだと善場主任は言った。
 それをあえてリサは人間と同じ食事をする為に、ロリ体型体が小さいのだという。
 それでも人間離れした変化や怪力を放ってくれるのだから、体型の小ささは大してハンデにはならないと思う。
 そういえば明らかに食人をしていた『6番』の吉田美亜はムッチリとした体つきだったが、そういうことだったのか。
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“私立探偵 愛原学” 「雪の降る街を」

2021-03-14 15:52:08 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[3月6日14:08.天候:曇 福島県南会津郡南会津町 会津鉄道会津田島駅]

〔♪♪♪♪。「長らくの御乗車お疲れさまでした。まもなく終点、会津田島、会津田島に到着致します。2番線に入ります。お出口は、右側です。お降りの際、お忘れ物の無いよう、よくお確かめください。会津田島からのお乗り換えを御案内致します。会津線下り、湯野上温泉、芦ノ牧温泉、西若松方面、快速“リレー”117号、会津若松行きは3番線から14時19分の発車です。……」〕

 列車が北上する度に、車窓には雪景色が広がった。
 もう3月だというのに、凄い雪だ。
 でも、当たり前だろう。
 今はコロナ禍で運休しているが、東武線唯一の夜行列車にしてスキーツアー列車の“スノーパル”は3月下旬まで運転されるのだから。
 夜行列車そのものは運休しても、代わりに早朝出発の特急“リバティ会津”を売り出しているらしい。
 早朝に出発しても、スキー場に着くのは昼頃になるだろう。
 そこで夕方くらいまで滑り、再びバスと列車で帰るという行程のようだ。
 コロナ禍でJRでは“サンライズエクスプレス”以外の夜行列車が全て廃止されてしまったが、もしかして、この“スノーパル”も?なんて思ってしまう。

 善場:「そろそろ着きますので、降りる準備をしてください」
 愛原:「はい」

 車窓は時々、吹雪で外が見えなくなることがあるが、恐らくそれは列車が走行中に舞い上げた雪煙だろう。
 JR北海道は雪に悩まされ、その除雪費用は会社の経営を圧迫するほどらしいが、首都圏なら間違いなく運休するであろう大雪の中を、雪煙を濛々と上げ、ドラゴンの咆哮のような警笛を鳴らして突き進んでいく様は旅情を掻き立てられるのだそうだ(作者の経験)。
 席を立って荷棚から荷物を下ろしていると、列車は最後の踏切を通過した。
 場内信号の先にある踏切なので、ここを過ぎると、もう駅構内である。

〔「ご乗車ありがとうございました。会津田島、会津田島、終点です。車内にお忘れ物の無いよう、ご注意ください。会津田島から先、会津若松方面にお乗り換えのお客様は、3番線に停車中の快速“リレー”117号をご利用ください。……」〕

 3両編成の先頭車から降りた私達は、首都圏とは明らかに違う寒気の歓迎を受けた。
 ここはもう東北地方なのだということを思い知らされる。
 跨線橋や構内踏切を挟んで、反対側にあるホームでは、2両編成の気動車がディーゼルエンジンのアイドリング音を立てて停車していた。
 あれがこの特急列車に接続するリレー快速であろう。
 電化区間はこの駅まで。
 ここから先は、非電化区間となる。
 地方の三セクで、路線が1つしか無いのに、電化区間と非電化区間両方持っている鉄道会社はなかなか珍しいのではないかと思う。
 因みに会津鉄道の電化区間の乗務を受け持つのは、電車の運転免許を持つ野岩鉄道の社員で、会津鉄道から南の区間に乗り入れる気動車は、その運転免許を持つ会津鉄道の社員が担当するのだそうだ。
 こうすることで、人件費を圧縮しているのだろう。

 駅員:「ありがとうございました」

 乗客の半分くらいは3番線に向かって行ったが、私達を含むもう半分は改札口に向かう。
 1番線と2番線からなら、直に改札口に出入りできる。
 改札口は自動化されていないので、ブースの中に駅員が立っていて、キップは駅員に渡すシステムである。
 ブースには、そこに立つ駅員を囲むようにアクリル製の囲いがしてあるが、コロナ対策ではなく、寒さ対策であろう。
 寒さ対策に設置したパーテーションが、結果的にコロナ対策にも繋がったというわけだ。

 愛原:「主任、今日の宿泊先は……?」
 善場:「初めてこの町に来た時に泊まったホテルです。あの……さっきの踏切を渡った所にある……」
 愛原:「ああ。あの新しいホテルですか。そりゃあ良かった。ということは、夕食はあのラーメン屋かな?」
 善場:「私は構いませんけど、皆さんは?」
 高橋:「俺は先生の御意向に従います」
 リサ:「激しく同意、略して禿同」
 栗原:「やっぱり寒い時期にはラーメンですかね」
 善場:「分かりました。では、そうしましょう。途中にコンビニもありますしね。でも、その前に……」

 善場主任は駅舎の外には出ず、駅舎2階のレストランに向かった。

 善場:「ホテルのチェック・インは15時からですので、休憩も兼ねて、ここで時間潰しさせて頂きます」
 愛原:「あ、なるほど。そうだったのか」
 善場:「ついでに、今後の予定について話させて頂こうかと」
 愛原:「分かりました」

 レストランに入ると、お昼時を過ぎているからか、店内は空いていた。
 テーブル席に座り、私達がコーヒーやら紅茶やらをチョイスする中、リサは……。

 リサ:「ハンバーグ定食」
 愛原:「をい」
 リサ:「じゃあ、カツカレー」
 愛原:「コラ」
 リサ:「じゃあ、ソースカツ丼」
 愛原:「食い過ぎだっつの」
 栗原:「本気で言ってるの?」
 リサ:「うん。ガチ」
 栗原:「……その食欲、人に向けなければいいけどね」
 善場:「愛原所長がいる限り、それは大丈夫でしょう。リサ、食事は夕食まで我慢しなさい。スイーツは頼んでいいから」
 リサ:「……はぁーい」

 リサはケーキセットを注文した。
 因みにケーキはモンブランである。
 そういえば昔、同じ読みのAV女優がいてだなぁ……。

 善場:「それでは今後の予定について、お話しさせて頂きます」

 注文した物が来てから、善場主任が口を開いた。
 因みにケーキを頼んだのは、リサだけではなく、栗原さんもだった。
 鬼斬りと鬼の形をしたBOWの間柄とはいえ、実は気が合うんじゃないのかと思う。
 ま、栗原さんが頼んだのはレーズンケーキだったが。

 善場:「今日のところは、これからホテルにチェックインして、体の疲れを癒やしてください。夕食は愛原所長の御意向と皆様の同意により、この前行ったラーメン店にします。翌日は朝7時半に出発します」
 愛原:「おおっ、早いですな」
 善場:「なるべく午前中には霧生市に入りたいと思っていますので。ホテルの朝食時間は朝6時半からということですので、朝食を食べてから出発ということになるかと思います」
 愛原:「分かりました。やはり霧生市には車で?」
 善場:「はい。明日、私の部下が迎えに来ますので」
 愛原:「なるほど。BSAAにも連絡済みですね?」
 善場:「もちろんです。しかし、BSAAが来るのは最低限の人数です」
 愛原:「えっ?」
 善場:「大々的に出動すると、『1番』にまた逃亡される恐れがあります」
 リサ:「されると思うね。『1番』、卑怯だし、臆病だからすぐに逃げると思う」
 善場:「そういうことです。今回は、栗原さんに花を持たせたいと思っているのです。兄弟を食い殺され、御自身は左足を食い千切られた過去を持ちますから」
 栗原:「必ず、あの首を刎ねてやる」
 リサ:「私も手伝う。……手伝います」
 栗原:「うん」
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“私立探偵 愛原学” 「特急“リバティ会津”117号」

2021-03-11 20:22:32 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[3月6日12:39.天候:曇 栃木県日光市今市 東武日光駅]

〔♪♪♪♪。「下今市、下今市です。お出口は、左側です。下今市駅では、列車の切り離し作業を行います。前3両、1号車から3号車が会津田島行き、後ろ3両、4号車から6号車が東武日光行きです。お手持ちの特急券をお確かめの上、お乗り間違えの無いよう、ご注意ください。……」〕

 私達を乗せた列車は下今市駅に到着しようとしていた。
 ここは大観光地、日光と有名温泉地、鬼怒川温泉への分岐点である。
 先に発車するのは前3両であり、私達の乗っている会津田島行きである。
 しかしそれでも4分間停車するということで、ホームの自販機でジュースを買うくらいはできそうだ。

 

〔「ご乗車ありがとうございました。下今市、下今市です。お忘れ物の無いよう、ご注意ください。……」〕

 愛原:「ちょっと、ジュース買いに行って来る」
 高橋:「あ、先生。俺が行きますよ。先生はゆっくりなさっててください」
 愛原:「そうか」
 リサ:「私も行くー」
 愛原:「おっ、行ってこい」
 高橋:「姉ちゃん達は何かいるか?」
 善場:「私は結構です。まだお茶があるので」
 栗原:「私も降りよう。自分で買う」

 栗原さんも席を立つ。
 ホームへジュースを買いに行くだけなのだから、刀くらい置いて行けばいいのに、それでも栗原さんは持って行く。
 リサがまだ信用できないのか、或いは敵の襲撃に備えているだけなのか……。

 愛原:「俺は缶コーヒーな?ボトル缶入りの」
 高橋:「了解ッス」

 3人の若者達は列車を降りて行った。

 愛原:「栃木県内に入っていますが、エブリンとかの影は無いですね。ほら、何回か栃木県に来る度にそういった影がチラホラ出ていたものですが……」
 善場:「そうですね。実際、いたのでしょう。しかし今は死体になってしまいました。私達も栃木県内は怪しいと見ていますので、引き続き調査対象地域に指定しているのですよ」
 愛原:「栃木県内で昔、何件か小さい女の子が誘拐されて、今もなお未解決事件になっているのは……」
 善場:「ええ。日本アンブレラが絡んでいると思います。リサが日本アンブレラに連れ去られる前に入所していた児童養護施設も、栃木県に程近い埼玉県内でしたから」
 愛原:「なるほど。何か理由でもあるんですかね?」
 善場:「あるかもしれませんし、ただの偶然かもしれません。ただ、地方は治安が良い為に、逆に地元警察の捜査能力が弱く、組織犯罪を起こすには打ってつけだと言われています」
 愛原:「そうなんですか」
 善場:「かつて、オウム真理教が富士山麓の村に施設を建設したのも、そういう理由からなんですよ。あのサリンもそこで造られたわけですから」
 愛原:「なるほど……」

[同日12:43.天候:曇 東武鉄道鬼怒川線1117列車1号車内]

〔「お待たせ致しました。12時43分発、特急“リバティ会津”117号、会津田島行き、まもなく発車致します。次は、新高徳に止まります。また、列車発車後、ポイント通過の為、大きく揺れる場合がございます。お立ちのお客様は、ご注意ください」〕

 発車の時間が迫る頃、バタバタと高橋達が戻って来た。

 高橋:「お待たせしました!」
 愛原:「おー、ギリギリだったな」
 高橋:「サーセン!自販機、ホームの後ろにしか無くて!」
 愛原:「そうだったのか」

 私は高橋からボトル缶入りのホットコーヒーを受け取った。
 その直後、電車が走り出す。

〔♪♪♪♪。この電車は、特急“リバティ会津”117号、会津田島行きです。停車駅は新高徳、東武ワールドスクウェア、鬼怒川温泉、鬼怒川公園、新藤原の順に止まります。【中略】次は、新高徳です〕

 JRのとは違う女性声優による自動放送が車内に流れる。
 尚、東武鉄道線内では乗り入れ先の停車駅までは案内しない。
 乗り入れ先の野岩鉄道会津鬼怒川線や会津鉄道会津線内でも、通過駅はあるのだが……。
 下今市駅までは複線だった線路も、ここから先は単線となる。
 東武日光線の方は終点まで複線なのにだ。
 これは東武鬼怒川線の方が、後で東武鉄道に吸収された下野電鉄という別の鉄道会社だったからである。
 東武鉄道より小さい鉄道会社だった為に、線形が元祖東武鉄道である東武日光線よりも悪かったりする。

 愛原:「リサ。お前以外のBOWの気配とかあるか?」
 リサ:「今のところ無い」
 愛原:「そうか」
 リサ:「でも油断しない方がいい。『1番』も間違いなく霧生市に向かってる」
 愛原:「……だろうな」

 制御できない『1番』と、制御できている『2番』。
 年恰好は全く同じ、作り方も全く同じように造られたはずなのに、この差は一体何だったのか。
 前者は人を食い殺しまくり、後者は人食いに対する欲求はありつつも、それを抑えることができている。
 これについては今のところ明確な答えは出ていない。
 多分、本人達の性格の問題ではないかとされている。
 『2番』のリサは幼少の頃から児童養護施設にいたこともあり、我慢強い性格に育ったからとも言われているが、そもそも人体と一緒に人格も改造するような実験で、その理論は正しいのかと思う。
 栗原さんにあっては……。

 栗原:「どんな性格であれ、人を1人でも食べた鬼は斬る」

 という信条だ。
 家が剣術を使った退魔士の家系だったというのもある。
 かつては神道による退魔の術を応用していたらしいが、いつの頃からか、それが法華経に変わっている。

 愛原:「法華経というのは創価学会かい?」

 と私が聞くと、栗原さんは大きく首を横に振った。

 栗原:「お寺の方ですよ」

 と答えたので、私は池上本門寺をイメージした。
 後で、違う宗派と寺であったことを知ることになる。

 リサ:「雪が所々積もってる」
 愛原:「ああ。これからもっと山深い所に行くから、もっと雪が積もっているだろうな」

 何しろこの線路をスキーツアーの夜行列車が走行するくらいだ。
 その列車の終点は会津高原尾瀬口駅だが、名前からしても雪深いイメージだ。
 もっとも、コロナ禍による緊急事態宣言のせいで、その夜行列車は運休を余儀無くされているという。
 今その夜行列車は、私達が乗車している500系リバティの車両が使用されるとのことだ。
 かつては座席がリクライニングしない電車で運転されていたので、より寝やすくはなったと思う。

 栗原:「霧生市も冬は雪の凄い所です。今も多分、雪は積もっていると思います」
 愛原:「そうか……」

 廃墟の町だから、除雪なんて全くされていないだろう。
 そんな中を行っても大丈夫なのかと、私は別の不安を覚えた。
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“私立探偵 愛原学” 「さぁさようこそ♪いらっしゃい♪昼の浅草♪大賑わい♪」

2021-03-09 19:56:23 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[3月6日10:30.天候:曇 東京都台東区駒形 都営地下鉄浅草駅→台東区花川戸 東武鉄道浅草駅]

〔2番線の電車は、普通、印旛日本医大行きです。あさくさ~、浅草~〕

 私達を乗せた都営地下鉄電車が浅草駅に到着する。
 コロナ禍でなければ、もっと観光客などで賑わう駅なのだろうが、今は普通の週末といった感じ。
 都内だから賑わっているというだけであって、浅草だから賑わっているという感じはしない。
 ほら、何となく分かるだろう?
 関西でも、例えば京都市は大都市だから賑わっているが、その中で特に観光地最寄りの駅はそれだからこその賑わいというのがある。
 しかし、そういうのが無い。
 ただ単に人口が多いからその分、駅の人も多いだけといった感じ。
 今の浅草駅はそんな感じだった。
 そう思うのは観光客が少なく、地元民の方が多いからだろう。
 そういう私達だって、都内脱出組だ。
 しかも、これから観光地に行こうってわけではない。
 カーブの途中にあるホームに降り立つと、東武浅草駅に向かった。
 ただ、都営地下鉄の浅草駅は東武浅草駅からは若干離れている。
 東京メトロ銀座線を挟んで北側に東武浅草駅が存在し、南側に都営地下鉄浅草駅があるといった感じ。
 TX浅草駅は【お察しください】。

 愛原:「雨が降って無くて良かったな。ここ最近、天気が悪い日とかあったから」
 高橋:「そうっスね。傘差すのが面倒っスね」

 そんなことを話しながら、浅草松屋の中にある東武浅草駅に向かう。
 元々は三越や高島屋辺りを誘致したかったらしいが実現せず、松屋が入居することになり、今に至る(もしも三越の入居が実現したら、東京メトロ浅草線の三越前駅、日本橋駅、そして浅草駅を制覇したことになっただろうに……)。

 愛原:「さあ、着いた。松屋」
 高橋:「先生、デパートに買い物に来たんじゃないっスよ」
 愛原:「分かってる。あくまでも東武浅草駅は松屋の3階に入居しているという体なんだ」

 リニューアル前までは普通のビルの外観といった感じだったが、リニューアル後は昭和初期の開業当時の雰囲気を出している。
 アール・デコ建築となり、時計台も復活している。
 私が記憶している限り、都内で時計台があるのはこの浅草松屋と銀座の和光ビル、それと新宿NSビルくらいである(但し、こちらはビル内の吹き抜けの中に存在する)。
 そんなビルの1階は東武浅草駅の入口でもある。
 改札階へ向かうエスカレーターと階段の前に、善場主任と栗原蓮華さんがいた。

 善場:「おはようございます」
 愛原:「おはようございます」

 善場主任は相変わらずのスーツ姿の上にコートを羽織っているが、栗原さんは制服姿だった。
 キャリーバッグの中に私服は持って来ているが、これが道着よりもむしろ戦闘服なのだそうだ。
 まあ、剣道着は竹刀を使うだろうが、BOW相手には真剣を使うからな。
 ぶっちゃけ、剣道着よりも動き易いだろう。

 善場:「自動改札機を通るので、キップは1人ずつ持ちましょう」
 愛原:「ありがとうございます」

 やはりというべきか、私と高橋とリサで一塊になるように指定されていた。

 善場:「それでは参りましょう」

 善場主任の先導で、私達はエスカレーターを昇った。
 そしてまずは自動改札口を通って、コンコースに入った。
 特急に乗るには、そこから更に特急ホームに入る為、有人改札口を通らなくてはならない。
 しかしその前に、その特急改札口の手前左方向に行くと売店がある。
 かつては快速や区間快速、臨時列車が発車した5番線に向かう通路上だ。
 しかし今は快速や区間快速は廃止され、臨時列車も、あの“スノーパル”や“尾瀬夜行”でさえ5番線を使用しない為、今は富士宮駅の1番線の如く殆ど廃止ホームとなってしまった。

 愛原:「すいません。リサが駅弁食べたがって……」
 善場:「いいですよ。リサは食べ盛りですからね」
 栗原:「え?」

 何の疑いも無く駅弁を手に取った栗原さん。

 善場:「あ、ごめんなさい。育ち盛りがもう1人いましたね。失礼しました」

 もっとも、リサが手にしたのは『すき焼重』であり、栗原さんが手に取ったのは『松花堂弁当』だったが。
 私と高橋はのり弁を手にした。
 善場主任はロースカツサンド。

 愛原:「サンドイッチだけでいいんですか?」
 善場:「ええ。私は朝食が遅かったので」
 愛原:「そうでしたか」
 善場:「あと、他にも飲み物とかを購入しておいた方がいいですよ。今、特急列車の車内販売は全面休止中ですから」
 愛原:「それもそうですね」

 ジュースくらいならホームの自販機でも購入できる。
 何しろ、ここから会津田島まで片道3時間以上の旅だ。
 しかも、霧生市はここから更に車で1時間という距離にある。
 ぶっちゃけどこに位置する町だ。

 係員:「ありがとうございます」

 特急改札口にいる女性係員に特急券を見せ、これで晴れて特急列車の乗客となれる。
 既に4番線ホームには、3両編成の電車を2台繋いだ6両編成が停車していた。
 500系リバティと呼ばれる車両である。
 先頭車の1号車が指定されていたが、何しろこの駅は有効長が1番線を除いて6両編成しか無く、その先端部分は大きく湾曲している。
 東武浅草駅の名物の1つである。
 その為、湾曲している部分は電車の乗降ドアとホームとの間の隙間が半端無く、停車中は渡り板が設置されるほどである。
 発車直前には係員達によって、渡り板が外される。
 前方車両の駆け込み乗車は、もう1つの意味で命懸けなので非推奨である。
 失敗したら線路に転落すること請け合い。
 1号車に向かう最中、3番線ホームに15という数字の看板があるが、これは制限速度の標識。
 浅草駅を出発した電車は、90度の直角カーブ(本当の直角ではもちろん無いのだが、そう形容しても良いくらい)を曲がることになるので、厳しい速度制限が課せられているのである。

 愛原:「えーと……ここだな」

 1号車に乗り込み、指定されている座席を見つける。
 新型車両ということもあって清潔であり明るく、シートピッチも新幹線の普通車並みに広いのだが、従来の車両にはあった窓下のテーブルが無くなっている。
 代わりに背面テーブルが設置されているし、ひじ掛け収納タイプのテーブルも存在する。
 向かい合わせにした時に必要な窓下のテーブルが無くなったのは痛いかな。
 なので向かい合わせにした私達はひじ掛け下のテーブルと、窓の桟の部分に飲み物や弁当を置き、善場主任と栗原さんは背面テーブルを使用することになる。

 愛原:「もう食べるのか、リサ?」
 リサ:「うん!」

 リサはウーロン茶のペットボトルを開け、駅弁の蓋を開けた。
 周りを見ると、栗原さんも駅弁に箸を付けている。
 ま、10代は食欲旺盛な方がいい。
 元気に育ってほしい。

 高橋:「先生はビール買わなかったんスね」
 愛原:「まあ、遊びに行くわけじゃないからな」

 私はそう言って、緑茶のペットボトルの蓋を開け、駅弁の蓋を開けた。
 そして、11時ちょうど発の特急“リバティ会津”117号は、後部に東武日光行きの“リバティけごん”17号を併結して東武浅草駅を定刻通りに発車した。
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