報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「リサの異変?」 2

2023-02-25 20:25:22 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[10月17日13時00分 天候:晴 東京都墨田区菊川 愛原学探偵事務所]

 昼食を食べた後、善場主任が訪ねてきた。

 善場「昨日はお疲れ様でした」
 愛原「善場主任、お疲れさまです。……休み無しなんですね?」
 善場「それは愛原所長方も同じなのでは?」
 愛原「まあ、我々は自営業ですから……」
 善場「検査の結果が出ましたので、お知らせしようと伺ったのです」
 愛原「もうですか!さすがに早いですね!」
 善場「BSAAからも、矢のような催促ですから」
 愛原「ほおほお……。それで、どんな感じでしたか?」
 善場「ちょっと……大変なことになるかもしれません」
 愛原「えっ?」

 応接室に移動して、そこで話をすることになった。
 善場主任が手持ちのノートPCを取り出し、そのモニタにデータを表示する。

 善場「これは前回、リサの検査の結果です。特異菌の存在も示唆されていますが、ご覧の通り、体内のウィルスに関してはGウィルスとTウィルスのみとなっています」
 愛原「はいはい」
 善場「そして、これが今回の結果です」
 愛原「あれ?Tウィルスの割合が減ってる!?……で、特異菌の割合が増えている!?」
 善場「そうなんです。それも微かな差ではなく、かなりの大差です。……Gウィルスは殆ど変わっていませんけどね」
 愛原「さすがは、あのアンブレラも怖くなって棄てたウィルスですね」

 その決定に大きな不満を持った、Gウィルス開発者のウィリアム・バーキン博士が造反した事件が、そもそもアンブレラ終焉の始まりであった。
 アメリカの本体はそうしたが、日本の現地法人はそうしなかった。
 アメリカの本体が廃棄したリサ・トレヴァーに注目したのが、日本法人であった。
 日本法人はアメリカ本体からの独立を果たすことになるが、これが却ってアンブレラの完全なる崩壊を遅らせることになる。

 善場「そうです。問題は、どうして特異菌が強化されたのか、です。Tウィルスが弱体化したのか、はたまた見た目には何も起きていないGウィルスが何か影響を及ぼしたのか、それが知りたいところです」
 愛原「寄生虫は関係ありますかね?」
 善場「それも含めて、ですね」
 愛原「まさか、もう1度藤野に行けと?」

 さすがに、せめて高橋の免停が解除されてからにしてほしい。

 善場「いえ、それには及びません。浜町の診療所は御存知ですね?」
 愛原「あ、あそこですか」

 表向きは一般の社会保険でも受け付けている診療所だが、その運営母体がBSAA極東支部日本地区本部という変わった診療所だ。
 当然ながら、リサのウィルスについても研究している。

 善場「あそこで精密検査をさせてください」
 愛原「では、また週末ですかね?」
 善場「なるべく早い方がいいので、明日にでもいいですか?」
 愛原「分かりました」

 今日と言わなかったのは、さすがに急過ぎると思ったからだろう。

 善場「新事務所、移転の話はどうですか?」
 愛原「いやあ、なかなかいい物件が見つかりませんで……」

 近所とはいえ、たった3人の事務所で住居とを分けるのは効率が悪い。
 住居部分と分けるにせよ、建物は同じで良いのではないかというのが私の考えだ。

 善場「まあ、焦らない方がいいですね」
 愛原「もちろんです」

[同日17時00分 天候:晴 同地区 愛原のマンション]

 リサ「ただいま」
 愛原「おー、お帰り」
 リサ「もう事務所から帰ってたんだ」
 愛原「まあな。それよりリサ、明日は何か予定があるか?」
 リサ「明日?特に無いけど……」
 愛原「それは良かった。実は学校が終わったら、ちょっと付き合って欲しいんだ」
 リサ「先生とデート!?」
 高橋「ンなわけあるか!」
 愛原「高橋、静かにしろ。……残念ながら、デートではないんだ」
 リサ「えー……」
 愛原「浜町のさ、診療所は知ってるだろ?」
 リサ「あー、あそこ」
 愛原「あそこでさ……再検査を受けてもらいたんだ」
 リサ「……そういうこと。分かったよ。で、いつ行けばいいの?」
 愛原「おお!素直に行ってくれるとは!」
 リサ「嫌だって言っても行かなきゃいけないんでしょ?」
 愛原「悪いなぁ……。でも、俺も一緒に行くから」
 リサ「ふーん……?」
 愛原「明日、学校はいつ終わる?」
 リサ「15時だね」
 愛原「15時か。それなら、15時半に迎えに行こう」
 リサ「うん、分かった。……因みに、わたしのどこが悪かったって?」
 愛原「病気とかじゃないんだけど、オマエの体内のTウィルスの濃度が減って、代わりに特異菌が増えてるんだって。因みに、Gウィルスは殆ど変わってない」
 リサ「そう、なんだ」
 愛原「何か心当たりはあるか?体調の変化とか……」
 リサ「うーん……まあ、生理の時に重くなったりするようになったかな」
 愛原「そうなのか?」
 リサ「いつもは、わたしだけ生理の時はいつも軽いのにね。……そっかぁ、Tウィルスが減ったからなんだ……」
 愛原「それは、この前の検査の時には……」
 リサ「言ったよ。問診の時にね」
 愛原「そうか。それ以外は?」
 リサ「それ以外……。特に無いね」
 愛原「そうか、分かった」
 リサ「それより、今日の夕ご飯は何?」
 高橋「秋刀魚だ」
 リサ「サンマかぁ……」
 愛原「近年、漁獲量が減って来ているそうだが、何とか買えたのか?」
 高橋「今回、たまたま特売やってましたね。『秋の味覚祭』ってことで」
 愛原「そうか。それは良かった」

 例によって、リサは骨ごとバリバリ食べるんだろうなぁと思った。

[10月18日06時30分 天候:曇 愛原のマンション]

 私がリサの異変に気付いたのは、この頃辺りからだった。

 リサ「おはよう……」
 愛原「おはよう」

 リサはTシャツに紺色ブルマという恰好で自室から出てきたのだが、起きたばっかりで眠いという感じにしては、やや具合が悪そうだった。

 愛原「どうしたんだ?」
 リサ「うん?何か、眠りが浅かったの……」
 愛原「よく眠れなかったのか?」
 リサ「うん……まあ、そんな感じ。変な夢とか見たし……」
 愛原「そうなのか」

 まあ、このくらいなら、よくあることだろうと思っていたのだが……。

 愛原「今日、診療所に行くけど、大丈夫か?」
 リサ「うん、大丈夫」

 ということだったので。
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“私立探偵 愛原学” 「リサの異変?」

2023-02-25 16:03:34 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[10月16日18時40分 天候:晴 東京都墨田区菊川 都営地下鉄菊川駅]

〔2番線の電車は、各駅停車、大島行きです。きくかわ~、菊川~〕

 私達は無事に菊川駅に辿り着いた。
 鉄道会社や路線名こそ違えど、高尾山口駅から線路で繋がっている。
 電車を降りると、私達は階段に向かった。
 そして、電車は風を巻き起こしながら発車して行った。
 強風で、リサの髪が靡く。
 サラサラと揺れる髪に触れてみたいと思ったが、唐突も無く触ると、さすがにびっくりするだろうと思い、それはやめておいた。
 驚かせてしまったことにより、暴走してしまったBOWの話は聞いたことがあるからだ。

 リサ「ん?」

 前を歩くリサが、私の方を振り向いた。

 リサ「どうしたの?」
 愛原「あ、いや、何でもない」

 階段を上がってコンコースに出る。

 リサ「トイレに行きたい」
 愛原「ああ、分かった」

 JRの駅などは改札内にトイレがあることが多いが、都営地下鉄では公衆トイレの意味合いもあるのか、改札外にトイレがある。
 改札口を出てからトイレに向かった。

 愛原「リサのヤツ、随分寝てたな?岩本町辺りから、スマホを何度も落としそうになってたぞ?」
 高橋「さすがの化け物も、今回は疲れたんでしょうねぇ」

 高橋はカラカラ笑っていた。

 愛原「ふーん……そういうものかな?」

 確かに私も疲れたが、体力自慢の高橋よりも更に化け物のリサだ。
 しかもこれから楽しい夕食だって時に、眠くなるというのはあまり無い。
 疲れて免疫力が落ちて具合が悪くなったのかとも思うが、体内に生物兵器ウィルスを2種類も宿しているBOWだ。
 コロナウィルスはおろか、エボラウィルスさえ食い殺してしまう生物兵器ウィルスの持ち主が、そんなんで具合が悪くなるとは思えない。
 だいいち、その割には昼食はガッツリ食ってたからな。

 リサ「お待たせ」

 トイレから出てきたリサは、多少スッキリした顔をしていた。
 もしかしたら、トイレを我慢していたのかもしれない。
 京王高尾温泉のトイレを使用してから、1度もトイレには行っていなかったからだ。
 いくら有料特急の“京王ライナー”と言えども、さすがにトイレは無いし、ましてや乗り換え先の地下鉄も当たり前だ。
 トイレに行けなかったせいで、少し具合が悪かったのかもしれない。

 愛原「ああ。それじゃ、ファミレスに行こう」

 私達は地上に向かうエスカレーターに向かった。
 もっとも、エスカレーターは途中までで、そこからは階段となるのだが。

[同日19時00分 天候:晴 同地区 ジョナサン菊川店]

 ファミレスに入る。
 リサはビーフステーキを希望した。
 私はチキンステーキにしたが。
 あとは、ビールだな。
 リサはドリンクバーだが、私と高橋はビールを注文した。

 愛原「大丈夫だったか、リサ?」
 リサ「何が?」
 愛原「電車内で、随分眠そうにしていたが……」
 リサ「さすがに少し疲れただけだよ。だから研究所って嫌い」
 愛原「まあ、さすがに人間ドックを喜んで受ける人はそんなにいないだろうがな」
 リサ「さすがに、久しぶりに全力で体を動かして疲れたというのもある」
 愛原「それもそうか」

 まさかと思うが、善場主任もダウンしてないだろうな?
 善場主任が大学生時代に着ていたという女子陸上ユニフォームは、なかなか似合っていたが……。
 すると、リサが不審な顔になった。

 リサ「何を考えてるの?」
 愛原「あ、いや……。今日はお疲れさん」
 リサ「昨日から大変だったよ」
 愛原「それもそうか」

 しばらくして、料理が運ばれてくる。
 リサは運ばれてきたステーキを、ガツガツと食べ始めた。
 やはり、けして食欲が落ちているというわけではないようだ。
 具合が悪かったのではなく、純粋に疲れて眠かっただけか。

[同日20時30分 天候:晴 同地区 愛原のマンション]

 夕食が終わって帰宅する。

 高橋「洗濯物はカゴに入れとけよ」
 リサ「はーい。特に今日なんか、汗かいたからね」
 愛原「だよなぁ……」
 リサ「JKの汗まみれの体操服とブルマ、何万円で売れるかな?」
 愛原「オマエ、どこでそんなの覚えた!?」
 リサ「学校」
 愛原「未だにブルセラなんて流行ってるのか?」
 リサ「何それ?……んーとね、『魔王軍』のコがイジメっ子に『ネットでオマエの下着とブルマ売れるから脱げ』って言われたんだって」
 高橋「女ってのは、やることエゲつけないっスねぇ~」
 愛原「で、どう対処した?」
 リサ「寄生虫植え付けて、授業中おもらしの刑」
 高橋「やっぱりw」
 リサ「『今度うちのメンバーに手を出したら、次は全体朝礼deおもらしの刑だ』って警告しておいた」
 高橋「おおっ!さすがだぜ!」

 元ヤンの高橋も、制裁とかリンチには反応するようである。

 愛原「あんまりやり過ぎると、BSAAから言われるからな?気を付けろよ」
 リサ「何もされなかったら、わたしも何もしないよ」

 リサは苦笑いをしながら言った。
 この性格は人間時代からのものだったのだろうか?
 それとも、BOW日本版リサ・トレヴァーになってから?

 高橋「『やられたらやり返す!倍返しだ!』ってな」
 リサ「おおー!」
 愛原「懐かしいフレーズが出てきたな」
 高橋「というわけで、オマエの下着とブルマはネットで売るか」
 リサ「あいつら、わたしのなら5万円はいけるってよ?」
 高橋「なにっ!?」
 愛原「おい、お前ら!いい加減にしろ!!」
 高橋「さ、サーセン」
 リサ「ご、ゴメン。これは先生のだったね……」
 愛原「いや、いいから、普通に洗濯しろ!だいたい、そのブルマ、体育で使うんだろうが」
 リサ「そうだった」

 それにしても、地味なスポプラとスポーツショーツでも、JKが着ていたというだけで高値で取引されるとは……世も末だ。

[10月17日06:30.天候:晴 同マンション]

 翌朝になり、私は起床した。
 洗面所に行くと、隣のバスルームではシャワーを使用している音がする。
 リサだった。
 実は昨夜、とても強い眠気に襲われたリサは、入浴せずにそのまま眠ってしまったのだ。
 それで今朝、起きてからシャワーを浴びているというわけか。

 愛原「おっ、リサ」
 リサ「あっ、先生。おはよう」
 愛原「大丈夫なのか?昨夜、急に眠ってしまったが……」
 リサ「やっぱり疲れてたんだね。今は大丈夫だよ?」

 バスルームからバスタオル1枚を羽織っただけのリサが出てきた。

 リサ「すぐに着替えるからね」
 愛原「ああ」
 リサ「それとも見る?先生なら特別タダでいいよ?」
 愛原「体の安売りはイカンよ」
 リサ「それは残念。まあ、確かにそうだよね。だったらね、高いうちに先生に買ってもらうからね?」
 愛原「何だそりゃ……」

 リサはパパッと制服に着替えた。
 10月は調整期間であり、夏服でも冬服でも両方着用が認められている。
 11月を以って、完全に冬服が実施される。
 リサはまだ冬服のブレザーは着ておらず、夏服のブラウスの上にグレーのニットのベストを着用した。
 左胸に校章のワッペンがあり、これも制服の一部なのだと分かる。
 尚、下は夏服の緑色のスカートだった。

 愛原「今日は普通に、午後に帰ってくるんだろ?」
 リサ「そうだよ」
 愛原「分かった」

 私は顔を洗いに洗面所に向かった。
 ドラム式洗濯機からは、稼働する水の音が聞こえる。
 たまたまドアの窓には、洗濯中のリサの緑色のブルマが見え隠れしていた。

 リサ「文化祭の打ち合わせとかあるから、もしかしたら、少し遅くなるかもしれないけどね」
 愛原「そうか。体育祭の次は、文化祭の時期か……」

 『魔王様の肖像画』が展示され、またもやリサは、出し物でBOWの役を本人役で演じるのだろうか?
 オリジナルのリサ・トレヴァーの役をやった時は、リアル過ぎて、校舎内に絶叫や悲鳴が響き渡ったというが……。
 さすがは、今や“学校の七不思議”のほぼ全てを掌握した歩く生物兵器である。
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“私立探偵 愛原学” 「京王から地下鉄へ」

2023-02-22 20:34:39 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[10月16日18時9分 天候:晴 東京都新宿区新宿1丁目 京王線新宿駅→京王新線(都営新宿線)新宿駅]

 北野駅からは、京王線本線をひたすら東へ進む。
 高尾山口駅を出たら北に向かい、高尾駅を出たら南へ向かいと、方向を変えながら進んで行く。
 この辺りは、甲州街道から外れた場所を真っ直ぐに走るJR中央線とは対照的である。
 ドラマやアニメの舞台に採用されやすい高幡不動駅や聖蹟桜ヶ丘駅に停車し、最近では“ウマ娘プリティーダービー”にも登場する府中駅に停車すると、あとは多くの駅を通過していく。

〔♪♪(車内チャイム)♪♪。まもなく新宿、新宿、終点です。京王新線、都営新宿線、都営大江戸線、東京メトロ丸ノ内線、小田急線、JR線はお乗り換えです。京王をご利用くださいまして、ありがとうございました〕

 都営新宿線に乗り換えるには、1番便利な笹塚駅。
 特急は停車するのだが、それよりも速いライナーは通過する。
 その為、都営新宿線に乗り換えたければ、終点の新宿駅で乗り換えるしかない。

〔「……お出口は、左側です。お忘れ物、落とし物の無いよう、ご注意ください。……」〕

 電車は地下に潜り、京王線のホームに滑り込んだ。
 行き止まりの頭端式ホームの為、電車はゆっくりとホームに滑り込んだ。
 2番線はライナーが発車するホームである。
 そこに入ったということは、折り返し、また“京王ライナー”として運行するということだろうか。
 乗車ホームにはホームドアがあるが、降車ホームにはそれが無い。
 その代わり、ドア以外の場所には柵が立っている。

〔「ご乗車ありがとうございました。新宿、新宿、終点です。お忘れ物、落とし物にご注意ください」〕

 私達は電車を降りた。
 都営新宿線は5番線から出るので、京王新線ホームに移動しなければならない。
 そこに改札口を出ずに向かうには、3番線ホームから出ている連絡階段を通ると良い。
 頭端式のホームの良い所は、車止めの後ろを回り込んで、階段の上り下りをすることなく、他のホームに移動できる所である。
 幸い先頭車に乗っていたので、それは簡単にできた。
 問題は、3番線。
 4番線、5番線の連絡階段は3番線ホームの下り方向先端部分にあるので、3番線を延々と歩かないといけないという……。
 で、階段を上って辿り着く。
 そう、階段しか無いので、3番線経由での乗り換えは注意。
 京王新線のコンコースに辿り着くと、ホームに向かうのに、また階段を下りなければならないという。
 尚、こちらはエスカレーターもエレベーターもある。

 愛原「案外、歩くな、こっちのルートも」
 高橋「そうっスね……」

 3番線に到着する電車なら良いだろうと思うかもしれないが、あいにくと3番線は乗車専用。
 降車ホームは反対側のドアが開く。
 それでも整列乗車をやっていなければ、3番線側から降りても良いのかもしれない(東武東上線や西武池袋線などはOK)。
 尚、体力自慢の若者である高橋や、もっと化け物のリサは全く気にしていないもよう。

[同日18時17分 天候:晴 同地区 京王新線(都営新宿線)新宿駅→都営新宿線1806T電車先頭車内]

 都営新宿線には新宿止まり、新宿始発の電車がある。
 これらの電車は新宿駅到着後、すぐに折り返し運転をするわけではない。
 4番線に到着して乗客を全部降ろした後、引き上げ線に引き上げて行く。
 そして、1本前の本八幡方面行きが出発した後、引き上げ線から5番線に回送してくるのである。

〔「5番線の電車は、18時20分発、各駅停車の大島行きです」〕

 やってきたのは、都営の車両だった。
 フロント部分のイチョウのマークや、京王電車には無い黄緑色の塗装が目立つ。
 そして、JR東日本の普通列車と同じ音色のドアチャイムと共に、ドアが開いた。
 夕方とはいえ、ラッシュの無い日曜日で、10両編成の電車がまるっと空車状態で入線してくるわけだから、ドアが開いても熾烈な席取り合戦が行われることはなく、私達を含めた乗客達は皆、粛々と乗り込んで空席に座って行く。

〔この電車は、各駅停車、大島行きです〕

 電車に乗り込んで、座席に座る。
 初期車は座席が硬いタイプで、そのタイプであった。
 柔らかい座席の京王電車から乗り換えると、尚更硬さが際立つような気がする。
 まあ、乗車時間はそんなにあるわけではない。

〔「18時20分発、都営新宿線、各駅停車の大島行きです。発車まで、3分ほどお待ちください」〕

 駅構内もWi-Fiが入る。
 しかし、都営大江戸線と違って、電車内にもWi-Fiがあるわけではない。
 その為、リサは停車中の今のうちにネットをやっていた。

 愛原「『魔王軍』とやり取りしてるのか?」
 リサ「うん、そう」
 愛原「そうか……」

 『魔王軍』のメンバーは、リサに寄生虫を植え付けられていることが分かっている。
 但し、健康被害さえ無ければ、デイライトも動くつもりはないらしい。
 恐らく、何らかの実験のつもりなのだろう。

 それから発車の時間になり、電車はダイヤ通りに発車した。

〔都営新宿線をご利用頂きまして、ありがとうございます。この電車は、各駅停車、大島行きです。次は新宿三丁目、新宿三丁目。丸ノ内線、副都心線はお乗り換えです。お出口は、右側です〕

 駅を出ると、もう電車内ではWi-Fiが使えない。
 リサは諦めて、スマホの画面を閉じた。
 あと、Wi-Fiが使えるのは駅に停車している時、あとは夕食先として予定しているファミレスくらいか。

 リサ「うーん……」

 リサは欠伸をした。
 白いマスクをしているので、牙が見えることはない。

 愛原「眠いのか?」
 リサ「うん……少し……」

 温泉に入って疲れを取ったはいいが、今度は眠くなってきたということか。

 愛原「寝れば、少しは食欲が落ちるんじゃ?」
 リサ「目が覚めた後のお腹空いてる感ハンパ無いから、食べておいた方がいい」
 愛原「そうか」

 するとリサ、私に寄りかかる。

 リサ「着くまで寝るね」
 愛原「ああ、分かった」

 因みにリサ、フード付きのパーカーを着ているが、フードも被っておいた。
 恐らく寝ている間に、第1形態に戻ってしまっても、誤魔化せるようにする為だろう。
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“私立探偵 愛原学” 「寄り道からの帰り」

2023-02-22 15:25:55 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[10月16日16時00分 天候:晴 東京都八王子市高尾町 京王高尾山温泉]

 風呂上がり後、食事処で飲み物と甘味を楽しむ私達。
 リサは何か食事をしたかったようだが、それは止めておいた。
 クリームあんみつとオレンジジュースで宥めておく。

 リサ「先生、今度わたしのオッパイで背中洗ってあげるねぇ?」
 愛原「何で知ってるんだ!?」
 リサ「わたしの蟲が……」

 リサの口の中から、百足型の寄生虫が顔を出して……。

 寄生虫(百足型)「ヨッ!」
 高橋「蟲にスパイさせんな!」
 愛原「いつの間に!?」

 スルスルとリサの体内に戻って行く蟲。

 愛原「段々とオマエ、人間離れしていってないか?」
 高橋「化け物の道、まっしぐらですな」
 リサ「でも、役に立つんだよ、このコ達!この前なんか、ピッキングしてみせたんだから!」
 高橋「自慢できることじゃねぇ!」
 愛原「いや、待て。アンブレラの施設を探索する際に、鍵が無いと開かないドアを開けたいのに鍵が無い場合は、役に立つかもしれんな」
 リサ「エヘヘ……そうでしょ?」
 高橋「都合よくまたそんな仕事、来ますかね?」
 愛原「ははっ(笑)、もう無いか?」

 私にとっては、居眠りした本人の代わりに宿題を片付けたその能力の方が凄いと思う。

 愛原「検査の時に、寄生虫なんかも調べられたんだろ?」
 リサ「うん。1種類ずつ取られたよ」
 愛原「1種類ずつ?」
 リサ「今の百足型でしょ?芋虫型でしょ?蜘蛛型でしょ?他にもゴキブリ型や蜂型もあるよ」
 愛原「全種類コンプリートする気か!」

 私は2017年にアメリカのルイジアナ州で起きたバイオハザード事件を思い出した。
 そこはベイカー農場という農場やその近辺の湿地帯などが舞台だったが、農場経営者の奥さんもまた特異菌の感染者で、彼女は蟲を駆使した攻撃をイーサン・ウィンターズ氏に繰り出していたと聞いた。
 リサのその異能もそれと似たようなものだとすると……。

 愛原「なあ。もしかしてその蟲達、特異菌も影響してないか?」
 リサ「うん。研究員達も言ってた。どの蟲からも、TウィルスとGウィルス、そして特異菌の反応があったんだって」
 愛原「アメリカのベイカー農場事件だって、特異菌オンリーだったのに、オマエはそれにプラスしてTとGウィルスか」
 高橋「歩く生物兵器っスね」
 愛原「何を今さら……」

 で、海外ではこういう場合、すぐさま暴走して、周辺にウィルスや特異菌をばら撒いて、ゾンビだらけにするのがオチだが、リサはこうやって制御できている。
 はっきり言って、奇跡以外の何物でもないそうだ。
 それは偏に、私という存在が大きいからだとされる。
 もちろん、リサ自身が化け物だという自覚があるというのもあるが(BSAAに追い回される化け物達の中には、自分がそうだという自覚が無い者もいる)。

[同日17時00分 天候:晴 同地区 京王電鉄高尾山口駅→京王高尾線7506電車先頭車内]

 温泉で体の疲れを癒やした後、私達は再び駅に戻った。

 

 愛原「チケットレスサービスだから、紙の特急券は要らないよ。乗車券だけICカードでいい」
 高橋「八王子行きと同じっスね」
 愛原「そういうこと」

 

 さすがに夕方ということもあり、駅は帰りの行楽客で賑わっている。
 元々この駅始発だから、並んでいれば座って帰れるのだが、もう1度今度は上りの“京王ライナー”に乗ってみたいというのがあった。
 もちろんこれは、私の趣味なので、自分のポケットマネーである。

 

 とはいうものの、3人並んで座れる席と言ったら、連結器横の席だけということになるが。
 座席は背もたれが高く、ヘッドレストも付いているとはいえ、横向き席はあまり人気が無いもよう。
 それでも、充電コンセントは付いている。
 尚、ライナー以外での運用に当たる場合は優先席であるが、ライナーとして運転する場合は優先席ではなくなる。
 クロスシートの方が旅情はあるのだが、足の長い高橋にとっては、足が伸ばせる横向き席の方が良いのかもしれない。
 私達が座る向かい側の席は車椅子スペースになっていて座席が無い為、広々としている。
 で、発車前に“京王ライナーのテーマ”が流れているところは、新宿発の下り列車と一緒。

〔ご案内致します。この電車は、“Mt.TAKAO”号、新宿行きです。途中、高尾、めじろ台、北野、高幡不動、聖蹟桜ヶ丘、分倍河原、府中、明大前に止まります。この電車は、全車指定席です。予め座席指定券をお買い求めの上、指定された席をご利用ください〕

 リサ「それで先生、夕食は?」

 連結器横の座席に座るリサが、真ん中に座る私の方を向いて言った。

 高橋「食う事ばっかだな」
 愛原「人を食い殺すよりはマシさ。菊川に着いたら何か食おう」
 リサ「菊川ね……」
 愛原「新宿駅に着いたら、今度は新宿始発の都営新宿線に乗り換えできるんだ。それでスムーズに、帰宅できるんだよ」
 リサ「で、何を食べるの?」
 愛原「リサが食べたいものでいいよ」
 リサ「じゃあ、肉」
 愛原「だろうな。また、ジョナサンでいいか?」
 リサ「いいよ」

 これで決まった。

[同日17時15分 天候:晴 京王電鉄高尾線7506電車先頭車内]

 ピンポーンピンポーンとJR東海の普通列車と同じ音色のドアチャイムが鳴り、車両のドアが閉まった。
 高尾山口駅にはホームドアが無い為、電車のドアが閉まると、運転室から発車合図のブザーの音が微かに聞こえてくる。
 私鉄や地下鉄ではこれが当たり前で、それが省略されているJRの方が特殊なのかもしれない(新幹線や気動車を除く)。
 それから電車が、ゆっくりと走り出した。
 高尾駅までは単線であり、本線に入る為にポイント通過がある関係で、速度制限が掛かるからだ。
 チーン!と運転室からチンベルの音が聞こえてくる。
 信号が切り替わる際に鳴る合図だ。
 車両によっては、御仏壇の鈴の音にも似ている。

〔♪♪(車内チャイム)♪♪。京王をご利用くださいまして、ありがとうございます。“Mt.TAKAO”、新宿行きです。途中、高尾、めじろ台、北野、高幡不動、聖蹟桜ヶ丘、分倍河原、府中、明大前に止まります。次は、高尾です。高尾の次は、めじろ台に止まります〕

 山中を走るからか、トンネルも通過する。
 JR中央本線も高尾駅を出ると山の中に向かって行くが、そちらは登るという感覚は無い。
 恐らく蒸気機関車の時代に開通したことから、急な上り坂の線路は引けなかったのだろう。
 対して京王高尾線は、ぐんぐん登って、まるで登山電車のようである。
 こちらは最初から、馬力のある電車を運行する前提で開通したからであろう。
 今は逆方向だから、下り坂を下りて行くといった感じだ。
 それでもJRと接する高尾駅では、京王線ホームの方がやや高い位置にある。
 夕食だが、私としては一瞬、居酒屋のような所で一杯引っかけて……と思ったのだが、リサのような若いコはファミレスの方が良いようだ。
 ま、そこでもビールは飲める。
 私達は東京都の西部から、東部へと歩を進めた。
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“私立探偵 愛原学” 「寄り道の温泉」

2023-02-20 21:14:35 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[10月16日15時03分 天候:晴 東京都八王子市高尾町 京王電鉄高尾山口駅→京王高尾山温泉]

〔「ご乗車ありがとうございました。高尾山口、高尾山口、終点です。車内にお忘れ物の無いよう、お降りください。……」〕

 

 私達はJR高尾駅で電車を降りると、今度は京王電車に乗り換えた。
 しかし、新宿方面ではなく、高尾山口方面。
 因みに、『たかおさんぐち』と呼ぶ。
 『たかおやまぐち』ではない。

 高橋「何スか、先生?今から山登りっスか?」
 愛原「違う違う。温泉だよ」
 高橋「温泉?そりゃまあ、こんな山奥なら、温泉の1つでもありそうですけどね……」
 愛原「まあ、黙ってついてこい」

 電車を降りてから、階段を下り、改札口を出る。

 愛原「ほら、ここだよ」
 高橋「近っ!」

 駅に隣接するような形で、温泉施設がある。
 名前を『京王高尾山温泉』という。
 実は日帰り温泉チェーンの極楽湯なのだが、ここは京王がフランチャイズでやっている所なのである。

 

 愛原「ここで疲れを癒してから帰ろうよ」
 高橋「さすがは先生です」
 愛原「実は電車の中から見えたんだぞ」
 高橋「え?そうなんスか?」
 愛原「まあ、反対側のドアが開いたから分かんなかったかもしれないな。ほら、券は俺が買ってやる」
 高橋「ありがとうございます」
 愛原「リサもゆっくり入ってこいよ」
 リサ「……うん、分かった」

 リサは、『温泉になど入らなくても、BOWはすぐに回復する』とでも言いたかったのだろうが、私の厚意を素直に受けるつもりになったようだ。

 リサ「混浴?」
 愛原「ンなわけない」
 高橋「先生の御背中は、俺が流して差し上げるから、オメーは安心しろ」
 リサ「ぶー……」

 館内に入ると、まずは靴を脱いで靴箱に入れる。
 もちろん、鍵が掛かる。
 あとは券売機で、必要な券を買えば良い。
 尚、京王の運営らしく、館内には高尾山口駅の発車標なんかもある。

 愛原「17時15分発の“Mt.TAKAO”6号で帰るからな」
 高橋「結構、ゆっくりですね」
 愛原「まあな」
 高橋「あれも予約制ですか?」
 愛原「もち」

 私はスマホを見せた。
 今はスマホで、座席予約なんかもできてしまう。

 高橋「さすがは先生です」
 愛原「鉄道ミステリーなら、解けてしまえそうだよ」
 高橋「頼もしいです!」
 愛原「というわけで、ゆっくり入ろうや」
 リサ「お兄ちゃんは、LGBTのGなんだよね?」
 高橋「Bだよ」
 愛原「嘘つけ、Gだろうが!……それがどうかしたのか?」
 リサ「私もTのつもりで、今は男……」
 愛原「無理だ!」
 高橋「体がどうなのかの問題だ!中身は関係無ェ!」

 ……のはずなのだが、数ヶ月後の未来が……。

 リサ「それじゃ、また」
 愛原「ああ」

 私と高橋はタオルなどもレンタルすると、男湯に向かった。

 高橋「あんな化け物と混浴なんて、フザけてますよね?」
 愛原「そんなこと言ったら、今の女湯の人達が大変だよ。それに、プールくらいなら一緒に入ったことがあるだろう?」
 高橋「まあ、プールは水着っスから……」

 私と高橋は観光客で賑わう大浴場に入った。

 愛原「まずは体を洗ってからだが……」
 高橋「お任せあれ!この不肖の弟子、高橋正義が!あ、愛原大先生のォ~!あ!お背中をォ~お!お流し奉り候~也~ィ~ッ!」
 愛原「何でそこだけ歌舞伎っぽくなるんだよ?」
 高橋「そんなこと言いっこ無し!さ、先生!こちらへどうぞ!」

 高橋は空いている洗い場に、私を座らせた。

 高橋「先生の御背中を、この手で洗うことは何と恐れ多い!」
 愛原「じゃ、何で洗うんだよ?」
 高橋「俺のナニで洗って差し上げます!」

 高橋、自分のチ○○にボディソープを塗りたくる。

 愛原「やめろや!気持ち悪い!てか、何で少し起ってんだよ!?」
 高橋「先生の御背中を流せるこの喜びを、下半身で感じているのッス!」
 愛原「全身じゃねーのかよ。とにかく、俺の背中はタオルで洗うこと!それ以外は禁止!」
 高橋「分かりました!」

 高橋、自分のタオルをチ○○に巻き付ける。

 高橋「では、失礼致します!」
 愛原「待てや、コラ!」
 高橋「は?ちゃんとタオルを使いますよ?」
 愛原「そこじゃねぇ!俺はLGBTでも何でもねぇんだから、オマエのチ○○には興味無ェんだ!普通に手で洗え!」
 高橋「分かりました。ノーマルの先生には、どノーマルの洗い方でってことですね……」
 愛原「そういうことだ」

 高橋、ようやくタオルを手に持って、それで私の背中を洗い始めた。

 愛原「ったく。こんなんだったら、まだリサのオッパイで洗ってもらった方がいいよ……」
 高橋「は?!」
 愛原「え?……あっ!」
 高橋「何言ってんてすか、先生!?あんな人食い化け物のオッパイがいいだなんて!?リサに何をされました!?」

 しまったーっ!
 つい、本音と感想がポロッと口から出てしまったーっ!

 愛原「い、いや、俺はノーマルな男だ。男のチ○○で洗ってもらうくらいなら、まだリサのオッパイの方がマシだという意味だ。あれでも、見た目は人間の女の子なんだからな?」
 高橋「先生、人を見た目で判断してはいけません!」
 愛原「いや、イケメンとして見た目で人生得してるお前が何を言う?」
 高橋「俺だってね、先生!好きでイケメンに生まれたわけじゃないんですよ!?」
 愛原「だからそのセリフ、全国のブサメンを敵に回すからやめろって」

 悪意が無いだけに、余計タチが悪い。

 愛原「とにかく、性的にはノーマルの俺は、同じ男のオマエよりは性別女のリサの方を選ぶってだけの話だ」
 高橋「そんなぁ……!」
 愛原「いや、それが普通だって。……泣くなよ」
 高橋「先生のそのお言葉、LGBT法案が可決されたら、ヘイトスピーチになるので気をつけてください」
 愛原「なにシレッと脅し掛けてんだよ!……ほら、体洗ったら、さっさと露天風呂に行くぞ」
 高橋「いきなりの露天風呂っスか?」
 愛原「こういう所は、露天風呂に入ってナンボだろ?」
 高橋「お供します!」
 愛原「ああ、付いてこい」

 こいつらといると退屈しないのだが、度を超すと疲れるな……。
コメント (3)
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