[10月17日13時00分 天候:晴 東京都墨田区菊川 愛原学探偵事務所]
昼食を食べた後、善場主任が訪ねてきた。
善場「昨日はお疲れ様でした」
愛原「善場主任、お疲れさまです。……休み無しなんですね?」
善場「それは愛原所長方も同じなのでは?」
愛原「まあ、我々は自営業ですから……」
善場「検査の結果が出ましたので、お知らせしようと伺ったのです」
愛原「もうですか!さすがに早いですね!」
善場「BSAAからも、矢のような催促ですから」
愛原「ほおほお……。それで、どんな感じでしたか?」
善場「ちょっと……大変なことになるかもしれません」
愛原「えっ?」
応接室に移動して、そこで話をすることになった。
善場主任が手持ちのノートPCを取り出し、そのモニタにデータを表示する。
善場「これは前回、リサの検査の結果です。特異菌の存在も示唆されていますが、ご覧の通り、体内のウィルスに関してはGウィルスとTウィルスのみとなっています」
愛原「はいはい」
善場「そして、これが今回の結果です」
愛原「あれ?Tウィルスの割合が減ってる!?……で、特異菌の割合が増えている!?」
善場「そうなんです。それも微かな差ではなく、かなりの大差です。……Gウィルスは殆ど変わっていませんけどね」
愛原「さすがは、あのアンブレラも怖くなって棄てたウィルスですね」
その決定に大きな不満を持った、Gウィルス開発者のウィリアム・バーキン博士が造反した事件が、そもそもアンブレラ終焉の始まりであった。
アメリカの本体はそうしたが、日本の現地法人はそうしなかった。
アメリカの本体が廃棄したリサ・トレヴァーに注目したのが、日本法人であった。
日本法人はアメリカ本体からの独立を果たすことになるが、これが却ってアンブレラの完全なる崩壊を遅らせることになる。
善場「そうです。問題は、どうして特異菌が強化されたのか、です。Tウィルスが弱体化したのか、はたまた見た目には何も起きていないGウィルスが何か影響を及ぼしたのか、それが知りたいところです」
愛原「寄生虫は関係ありますかね?」
善場「それも含めて、ですね」
愛原「まさか、もう1度藤野に行けと?」
さすがに、せめて高橋の免停が解除されてからにしてほしい。
善場「いえ、それには及びません。浜町の診療所は御存知ですね?」
愛原「あ、あそこですか」
表向きは一般の社会保険でも受け付けている診療所だが、その運営母体がBSAA極東支部日本地区本部という変わった診療所だ。
当然ながら、リサのウィルスについても研究している。
善場「あそこで精密検査をさせてください」
愛原「では、また週末ですかね?」
善場「なるべく早い方がいいので、明日にでもいいですか?」
愛原「分かりました」
今日と言わなかったのは、さすがに急過ぎると思ったからだろう。
善場「新事務所、移転の話はどうですか?」
愛原「いやあ、なかなかいい物件が見つかりませんで……」
近所とはいえ、たった3人の事務所で住居とを分けるのは効率が悪い。
住居部分と分けるにせよ、建物は同じで良いのではないかというのが私の考えだ。
善場「まあ、焦らない方がいいですね」
愛原「もちろんです」
[同日17時00分 天候:晴 同地区 愛原のマンション]
リサ「ただいま」
愛原「おー、お帰り」
リサ「もう事務所から帰ってたんだ」
愛原「まあな。それよりリサ、明日は何か予定があるか?」
リサ「明日?特に無いけど……」
愛原「それは良かった。実は学校が終わったら、ちょっと付き合って欲しいんだ」
リサ「先生とデート!?」
高橋「ンなわけあるか!」
愛原「高橋、静かにしろ。……残念ながら、デートではないんだ」
リサ「えー……」
愛原「浜町のさ、診療所は知ってるだろ?」
リサ「あー、あそこ」
愛原「あそこでさ……再検査を受けてもらいたんだ」
リサ「……そういうこと。分かったよ。で、いつ行けばいいの?」
愛原「おお!素直に行ってくれるとは!」
リサ「嫌だって言っても行かなきゃいけないんでしょ?」
愛原「悪いなぁ……。でも、俺も一緒に行くから」
リサ「ふーん……?」
愛原「明日、学校はいつ終わる?」
リサ「15時だね」
愛原「15時か。それなら、15時半に迎えに行こう」
リサ「うん、分かった。……因みに、わたしのどこが悪かったって?」
愛原「病気とかじゃないんだけど、オマエの体内のTウィルスの濃度が減って、代わりに特異菌が増えてるんだって。因みに、Gウィルスは殆ど変わってない」
リサ「そう、なんだ」
愛原「何か心当たりはあるか?体調の変化とか……」
リサ「うーん……まあ、生理の時に重くなったりするようになったかな」
愛原「そうなのか?」
リサ「いつもは、わたしだけ生理の時はいつも軽いのにね。……そっかぁ、Tウィルスが減ったからなんだ……」
愛原「それは、この前の検査の時には……」
リサ「言ったよ。問診の時にね」
愛原「そうか。それ以外は?」
リサ「それ以外……。特に無いね」
愛原「そうか、分かった」
リサ「それより、今日の夕ご飯は何?」
高橋「秋刀魚だ」
リサ「サンマかぁ……」
愛原「近年、漁獲量が減って来ているそうだが、何とか買えたのか?」
高橋「今回、たまたま特売やってましたね。『秋の味覚祭』ってことで」
愛原「そうか。それは良かった」
例によって、リサは骨ごとバリバリ食べるんだろうなぁと思った。
[10月18日06時30分 天候:曇 愛原のマンション]
私がリサの異変に気付いたのは、この頃辺りからだった。
リサ「おはよう……」
愛原「おはよう」
リサはTシャツに紺色ブルマという恰好で自室から出てきたのだが、起きたばっかりで眠いという感じにしては、やや具合が悪そうだった。
愛原「どうしたんだ?」
リサ「うん?何か、眠りが浅かったの……」
愛原「よく眠れなかったのか?」
リサ「うん……まあ、そんな感じ。変な夢とか見たし……」
愛原「そうなのか」
まあ、このくらいなら、よくあることだろうと思っていたのだが……。
愛原「今日、診療所に行くけど、大丈夫か?」
リサ「うん、大丈夫」
ということだったので。
昼食を食べた後、善場主任が訪ねてきた。
善場「昨日はお疲れ様でした」
愛原「善場主任、お疲れさまです。……休み無しなんですね?」
善場「それは愛原所長方も同じなのでは?」
愛原「まあ、我々は自営業ですから……」
善場「検査の結果が出ましたので、お知らせしようと伺ったのです」
愛原「もうですか!さすがに早いですね!」
善場「BSAAからも、矢のような催促ですから」
愛原「ほおほお……。それで、どんな感じでしたか?」
善場「ちょっと……大変なことになるかもしれません」
愛原「えっ?」
応接室に移動して、そこで話をすることになった。
善場主任が手持ちのノートPCを取り出し、そのモニタにデータを表示する。
善場「これは前回、リサの検査の結果です。特異菌の存在も示唆されていますが、ご覧の通り、体内のウィルスに関してはGウィルスとTウィルスのみとなっています」
愛原「はいはい」
善場「そして、これが今回の結果です」
愛原「あれ?Tウィルスの割合が減ってる!?……で、特異菌の割合が増えている!?」
善場「そうなんです。それも微かな差ではなく、かなりの大差です。……Gウィルスは殆ど変わっていませんけどね」
愛原「さすがは、あのアンブレラも怖くなって棄てたウィルスですね」
その決定に大きな不満を持った、Gウィルス開発者のウィリアム・バーキン博士が造反した事件が、そもそもアンブレラ終焉の始まりであった。
アメリカの本体はそうしたが、日本の現地法人はそうしなかった。
アメリカの本体が廃棄したリサ・トレヴァーに注目したのが、日本法人であった。
日本法人はアメリカ本体からの独立を果たすことになるが、これが却ってアンブレラの完全なる崩壊を遅らせることになる。
善場「そうです。問題は、どうして特異菌が強化されたのか、です。Tウィルスが弱体化したのか、はたまた見た目には何も起きていないGウィルスが何か影響を及ぼしたのか、それが知りたいところです」
愛原「寄生虫は関係ありますかね?」
善場「それも含めて、ですね」
愛原「まさか、もう1度藤野に行けと?」
さすがに、せめて高橋の免停が解除されてからにしてほしい。
善場「いえ、それには及びません。浜町の診療所は御存知ですね?」
愛原「あ、あそこですか」
表向きは一般の社会保険でも受け付けている診療所だが、その運営母体がBSAA極東支部日本地区本部という変わった診療所だ。
当然ながら、リサのウィルスについても研究している。
善場「あそこで精密検査をさせてください」
愛原「では、また週末ですかね?」
善場「なるべく早い方がいいので、明日にでもいいですか?」
愛原「分かりました」
今日と言わなかったのは、さすがに急過ぎると思ったからだろう。
善場「新事務所、移転の話はどうですか?」
愛原「いやあ、なかなかいい物件が見つかりませんで……」
近所とはいえ、たった3人の事務所で住居とを分けるのは効率が悪い。
住居部分と分けるにせよ、建物は同じで良いのではないかというのが私の考えだ。
善場「まあ、焦らない方がいいですね」
愛原「もちろんです」
[同日17時00分 天候:晴 同地区 愛原のマンション]
リサ「ただいま」
愛原「おー、お帰り」
リサ「もう事務所から帰ってたんだ」
愛原「まあな。それよりリサ、明日は何か予定があるか?」
リサ「明日?特に無いけど……」
愛原「それは良かった。実は学校が終わったら、ちょっと付き合って欲しいんだ」
リサ「先生とデート!?」
高橋「ンなわけあるか!」
愛原「高橋、静かにしろ。……残念ながら、デートではないんだ」
リサ「えー……」
愛原「浜町のさ、診療所は知ってるだろ?」
リサ「あー、あそこ」
愛原「あそこでさ……再検査を受けてもらいたんだ」
リサ「……そういうこと。分かったよ。で、いつ行けばいいの?」
愛原「おお!素直に行ってくれるとは!」
リサ「嫌だって言っても行かなきゃいけないんでしょ?」
愛原「悪いなぁ……。でも、俺も一緒に行くから」
リサ「ふーん……?」
愛原「明日、学校はいつ終わる?」
リサ「15時だね」
愛原「15時か。それなら、15時半に迎えに行こう」
リサ「うん、分かった。……因みに、わたしのどこが悪かったって?」
愛原「病気とかじゃないんだけど、オマエの体内のTウィルスの濃度が減って、代わりに特異菌が増えてるんだって。因みに、Gウィルスは殆ど変わってない」
リサ「そう、なんだ」
愛原「何か心当たりはあるか?体調の変化とか……」
リサ「うーん……まあ、生理の時に重くなったりするようになったかな」
愛原「そうなのか?」
リサ「いつもは、わたしだけ生理の時はいつも軽いのにね。……そっかぁ、Tウィルスが減ったからなんだ……」
愛原「それは、この前の検査の時には……」
リサ「言ったよ。問診の時にね」
愛原「そうか。それ以外は?」
リサ「それ以外……。特に無いね」
愛原「そうか、分かった」
リサ「それより、今日の夕ご飯は何?」
高橋「秋刀魚だ」
リサ「サンマかぁ……」
愛原「近年、漁獲量が減って来ているそうだが、何とか買えたのか?」
高橋「今回、たまたま特売やってましたね。『秋の味覚祭』ってことで」
愛原「そうか。それは良かった」
例によって、リサは骨ごとバリバリ食べるんだろうなぁと思った。
[10月18日06時30分 天候:曇 愛原のマンション]
私がリサの異変に気付いたのは、この頃辺りからだった。
リサ「おはよう……」
愛原「おはよう」
リサはTシャツに紺色ブルマという恰好で自室から出てきたのだが、起きたばっかりで眠いという感じにしては、やや具合が悪そうだった。
愛原「どうしたんだ?」
リサ「うん?何か、眠りが浅かったの……」
愛原「よく眠れなかったのか?」
リサ「うん……まあ、そんな感じ。変な夢とか見たし……」
愛原「そうなのか」
まあ、このくらいなら、よくあることだろうと思っていたのだが……。
愛原「今日、診療所に行くけど、大丈夫か?」
リサ「うん、大丈夫」
ということだったので。