[10月16日12時00分 天候:晴 神奈川県相模原市緑区某所 国家公務員特別研修センターB棟体育館]
リサ「ハァ……ハァ……!」
善場「ゼェ……ゼェ……!」
私の名前は愛原学。
都内で小さな探偵事務所を経営している。
午前中に、リサと善場主任の身体能力検査が行われたのだが……そのもようは、とてもレポートできるものではない。
少なくとも、化け物クラスの2人が床に大の字で疲弊するほどの激しい検査であった。
高橋「あ……ありのまま……ありのまま、今起こったことを話すぜ……」
愛原「いや、ダメだ!」
高橋「せ、先生!?」
愛原「ありのまま全部話してしまったら、また1話分が終了……もとい、日が暮れてしまう!」
高橋「は、はあ……」
愛原「まるで、少年ジャンプのマンガの中でよく行われる武闘大会のようだった。そんなところだろ?」
高橋「そ、そうです」
よく体育館が壊れなかったものだ。
まあ……修繕は必要だろうがな。
善場「り……リサちゃん……」
リサ「な……なに……?」
善場「取りあえず……引き分けね……」
リサ「……うん……」
愛原「これで、検査は全て終了ですか?」
主任研究員「……はっ!……えっ、ええ!そ、そうですね、はぁい!こ、これにて以上……終了となります……はぁい」
愛原「それで、これから私達はどうすれば良いので?」
主任研究員「えっ、えーと……。そ、それでは、私服に着替えて頂き、取りあえずは昼食を取ってください。今後のお話は、それからさせて頂きます。はぁい」
愛原「分かりました。……だ、そうです。善場主任」
善場「しょ……承知しました」
私は善場主任を助け起こした。
愛原「高橋はリサを起こしてやれ」
高橋「は、はい」
2人とも汗だくであった。
リサの白い体操服は汗で濡れて、下の黒いスポブラが透けてしまっている。
善場「昼食の前に、シャワーを浴びさせてください」
主任研究員「ど、どうぞ」
善場「C棟のシャワー室を使わせて頂きます。宜しいですね?」
主任研究員「も、もちろんです。はぁい」
愛原「ほ、本当に大丈夫ですか?」
善場「大丈夫ですよ。ご心配をお掛けしました。本当はあそこまで激しい運動をするものではないのですが、思わずハッスルしてしまいました。年甲斐も無く、お恥ずかしいことです」
愛原「い、いえ、そんな……」
それにしても、ラスボスを張る実力を持つリサに、素手で引き分け状態に持って行けるなんて、やっぱり善場主任は、見た目は人間だが、やっぱり人外なのだと思った。
これでは確かに、BSAAからも監視対象のままとなってしまうことだろう。
[同日13時00分 天候:晴 同センターA棟1階食堂→C棟3階313号室]
本当は食堂の営業は13時までなのだそうだが、今日だけ施設側の計らいで、延長してくれた。
昼食はポークカレーとサラダであった。
御ひつに入った米からよそおうのはいつも通りだが、そこに掛けるカレーも鍋からセルフサービスで掛ける方式だった。
リサ「大盛り……いや、特盛で!……ううん、この鍋全部!」
愛原「サイヤ人か!」
善場「私も少し多目にお願いします」
愛原「あ、ハイハイ!……俺達は並盛だぞ?」
高橋「も、もちろんっス!」
2人の日本版リサ・トレヴァーは、シャワーを浴びた後、私服に着替えていた。
リサも、黒いTシャツとデニムのショートパンツに着替えている。
善場主任はスーツだった。
善場「昼食を食べ終わりましたら、このまま帰宅して頂いて結構です」
愛原「1度、C棟に戻って荷物を取って来ませんと」
善場「それもそうですね。あと、車を用意しますので、藤野駅まではそれでお送り致します」
高橋「何だよ。東京まで送ってくれるんじゃねーのかよ」
愛原「高橋!」
善場「申し訳ございません。私達も、残務処理がございますので……」
愛原「いえ、恐れ入ります」
リサは特盛カレーをペロリと平らげた。
昼食を食べ終わると、私達はC棟に向かった。
313号室に戻り、荷物を持ち出す。
それと、管理室から頼まれたのは、使用済みのリネンを廊下に出しておくこと。
合宿所ならではと言える。
このリネンには、浴衣も含まれる。
愛原「よし、忘れ物ないな?」
リサ「うん」
高橋「大丈夫っス」
愛原「それじゃ、行くか」
C棟から再びA棟に戻り、そこで部屋のカードキーを返却する。
それから守衛所に行き、退構手続きを行う。
守衛長「どうでしたか?今日の検査は……」
愛原「ここに来る度、非日常を体験させてくれますよ」
守衛長「はは、そうですか」
愛原「早いとこ、日常に戻りたいものです」
守衛長「でもね、愛原さん。非日常も、それが続いて慣れれば、日常と化すものですよ」
愛原「……それもそうですね」
高橋「歩く非日常がここにいやがる」
リサ「何が?お兄ちゃんもでしょ?」
高橋「ンだとォ!?」
愛原「こら、2人とも!……っと、俺もか」
退構手続きが終わると、駐車場から黒塗りのミニバンがやってくる。
善場「どうぞ、お乗りください」
愛原「失礼します」
そして、固く閉ざされていた正門の門扉が左右に開いた。
私達が乗り込むと、車がゆっくりと走り出す。
守衛達の敬礼に見送られて、私達は研修センターをあとにした。
善場「今回はお疲れさまでした」
助手席に座る善場主任が、後ろを振り向いて行った。
愛原「いえいえ。私なんかより、善場主任の方がお疲れでは?」
善場「こう見えましても、体力には自信がありますので」
高橋「自信どころの騒ぎじゃねー」
愛原「高橋!」
善場「いえ、その通りですね」
愛原「すいません。高橋には、後で言っておきますので……」
善場「いいえ、大丈夫ですよ」
体力には自信があると言った主任だが、精神的な疲れについては、まだ回復していないようだった。
[同日14時38分 天候:晴 同区小渕 JR藤野駅→中央本線1460M列車最後尾車内]
〔本日もJR東日本をご利用くださいまして、ありがとうございます。今度の2番線の列車は、14時38分発、普通、高尾行きです。この列車は、3つドア、6両です〕
藤野駅で善場主任達と別れる。
私達は手持ちのICカードで改札口を通り、すぐにホームに向かった。
高橋「先生。高尾で、中央快速に乗り換えですか?」
愛原「いや、京王にする」
高橋「なるほど。都営新宿線に、そこからもう乗るってことですね」
愛原「いや、違うよ」
高橋「は?」
〔まもなく2番線に、普通、高尾行きが参ります。危ないですから、黄色い点字ブロックまで、お下がりください。この列車は、3つドア、6両です〕
往路に乗った時と同じように、211系と呼ばれる中距離電車がやってきた。
往路は6両で1編成の電車だったが、今度やってきた電車は、3両編成を2編成連結した6両編成だった。
〔ふじの~、藤野~。ご乗車、ありがとうございます。次は、相模湖に、停車します〕
前3両はボックスシート車だったが、私達の乗った後ろ3両はロングシートの車両だった。
最後尾は空いていて、長い座席の真ん中に3人並んで座れた。
すぐに発車メロディがホームに流れる。
〔2番線の、ドアが閉まります。ご注意ください。次の列車を、ご利用ください〕
プシューと大きなエアー音がして、ドアが閉まる。
ホームドアなど無いので、全部の車両のドアが閉まり切れば、電車がすぐに発車する。
〔「次は相模湖、相模湖です」〕
往路の時と同様、一段下降式の窓が開いているので、トンネルに入ると、強風が車内に入って来る。
高橋「高尾から、どの電車に乗り換えるって言うんです?」
愛原「まあ、俺に任せとけ。リサは身体的に疲れただろうし、俺達も精神的に疲れただろ?それを癒しに、ちょっと寄り道をしようと思うんだが、いいかい?もちろん、金は俺が出す」
高橋「俺は先生にどこまでも付いて行きます!」
リサ「わたしも」
愛原「よし、決まりだな」
まあ、この電車は終点まで乗るのは間違いない。
リサ「ハァ……ハァ……!」
善場「ゼェ……ゼェ……!」
私の名前は愛原学。
都内で小さな探偵事務所を経営している。
午前中に、リサと善場主任の身体能力検査が行われたのだが……そのもようは、とてもレポートできるものではない。
少なくとも、化け物クラスの2人が床に大の字で疲弊するほどの激しい検査であった。
高橋「あ……ありのまま……ありのまま、今起こったことを話すぜ……」
愛原「いや、ダメだ!」
高橋「せ、先生!?」
愛原「ありのまま全部話してしまったら、また1話分が終了……もとい、日が暮れてしまう!」
高橋「は、はあ……」
愛原「まるで、少年ジャンプのマンガの中でよく行われる武闘大会のようだった。そんなところだろ?」
高橋「そ、そうです」
よく体育館が壊れなかったものだ。
まあ……修繕は必要だろうがな。
善場「り……リサちゃん……」
リサ「な……なに……?」
善場「取りあえず……引き分けね……」
リサ「……うん……」
愛原「これで、検査は全て終了ですか?」
主任研究員「……はっ!……えっ、ええ!そ、そうですね、はぁい!こ、これにて以上……終了となります……はぁい」
愛原「それで、これから私達はどうすれば良いので?」
主任研究員「えっ、えーと……。そ、それでは、私服に着替えて頂き、取りあえずは昼食を取ってください。今後のお話は、それからさせて頂きます。はぁい」
愛原「分かりました。……だ、そうです。善場主任」
善場「しょ……承知しました」
私は善場主任を助け起こした。
愛原「高橋はリサを起こしてやれ」
高橋「は、はい」
2人とも汗だくであった。
リサの白い体操服は汗で濡れて、下の黒いスポブラが透けてしまっている。
善場「昼食の前に、シャワーを浴びさせてください」
主任研究員「ど、どうぞ」
善場「C棟のシャワー室を使わせて頂きます。宜しいですね?」
主任研究員「も、もちろんです。はぁい」
愛原「ほ、本当に大丈夫ですか?」
善場「大丈夫ですよ。ご心配をお掛けしました。本当はあそこまで激しい運動をするものではないのですが、思わずハッスルしてしまいました。年甲斐も無く、お恥ずかしいことです」
愛原「い、いえ、そんな……」
それにしても、ラスボスを張る実力を持つリサに、素手で引き分け状態に持って行けるなんて、やっぱり善場主任は、見た目は人間だが、やっぱり人外なのだと思った。
これでは確かに、BSAAからも監視対象のままとなってしまうことだろう。
[同日13時00分 天候:晴 同センターA棟1階食堂→C棟3階313号室]
本当は食堂の営業は13時までなのだそうだが、今日だけ施設側の計らいで、延長してくれた。
昼食はポークカレーとサラダであった。
御ひつに入った米からよそおうのはいつも通りだが、そこに掛けるカレーも鍋からセルフサービスで掛ける方式だった。
リサ「大盛り……いや、特盛で!……ううん、この鍋全部!」
愛原「サイヤ人か!」
善場「私も少し多目にお願いします」
愛原「あ、ハイハイ!……俺達は並盛だぞ?」
高橋「も、もちろんっス!」
2人の日本版リサ・トレヴァーは、シャワーを浴びた後、私服に着替えていた。
リサも、黒いTシャツとデニムのショートパンツに着替えている。
善場主任はスーツだった。
善場「昼食を食べ終わりましたら、このまま帰宅して頂いて結構です」
愛原「1度、C棟に戻って荷物を取って来ませんと」
善場「それもそうですね。あと、車を用意しますので、藤野駅まではそれでお送り致します」
高橋「何だよ。東京まで送ってくれるんじゃねーのかよ」
愛原「高橋!」
善場「申し訳ございません。私達も、残務処理がございますので……」
愛原「いえ、恐れ入ります」
リサは特盛カレーをペロリと平らげた。
昼食を食べ終わると、私達はC棟に向かった。
313号室に戻り、荷物を持ち出す。
それと、管理室から頼まれたのは、使用済みのリネンを廊下に出しておくこと。
合宿所ならではと言える。
このリネンには、浴衣も含まれる。
愛原「よし、忘れ物ないな?」
リサ「うん」
高橋「大丈夫っス」
愛原「それじゃ、行くか」
C棟から再びA棟に戻り、そこで部屋のカードキーを返却する。
それから守衛所に行き、退構手続きを行う。
守衛長「どうでしたか?今日の検査は……」
愛原「ここに来る度、非日常を体験させてくれますよ」
守衛長「はは、そうですか」
愛原「早いとこ、日常に戻りたいものです」
守衛長「でもね、愛原さん。非日常も、それが続いて慣れれば、日常と化すものですよ」
愛原「……それもそうですね」
高橋「歩く非日常がここにいやがる」
リサ「何が?お兄ちゃんもでしょ?」
高橋「ンだとォ!?」
愛原「こら、2人とも!……っと、俺もか」
退構手続きが終わると、駐車場から黒塗りのミニバンがやってくる。
善場「どうぞ、お乗りください」
愛原「失礼します」
そして、固く閉ざされていた正門の門扉が左右に開いた。
私達が乗り込むと、車がゆっくりと走り出す。
守衛達の敬礼に見送られて、私達は研修センターをあとにした。
善場「今回はお疲れさまでした」
助手席に座る善場主任が、後ろを振り向いて行った。
愛原「いえいえ。私なんかより、善場主任の方がお疲れでは?」
善場「こう見えましても、体力には自信がありますので」
高橋「自信どころの騒ぎじゃねー」
愛原「高橋!」
善場「いえ、その通りですね」
愛原「すいません。高橋には、後で言っておきますので……」
善場「いいえ、大丈夫ですよ」
体力には自信があると言った主任だが、精神的な疲れについては、まだ回復していないようだった。
[同日14時38分 天候:晴 同区小渕 JR藤野駅→中央本線1460M列車最後尾車内]
〔本日もJR東日本をご利用くださいまして、ありがとうございます。今度の2番線の列車は、14時38分発、普通、高尾行きです。この列車は、3つドア、6両です〕
藤野駅で善場主任達と別れる。
私達は手持ちのICカードで改札口を通り、すぐにホームに向かった。
高橋「先生。高尾で、中央快速に乗り換えですか?」
愛原「いや、京王にする」
高橋「なるほど。都営新宿線に、そこからもう乗るってことですね」
愛原「いや、違うよ」
高橋「は?」
〔まもなく2番線に、普通、高尾行きが参ります。危ないですから、黄色い点字ブロックまで、お下がりください。この列車は、3つドア、6両です〕
往路に乗った時と同じように、211系と呼ばれる中距離電車がやってきた。
往路は6両で1編成の電車だったが、今度やってきた電車は、3両編成を2編成連結した6両編成だった。
〔ふじの~、藤野~。ご乗車、ありがとうございます。次は、相模湖に、停車します〕
前3両はボックスシート車だったが、私達の乗った後ろ3両はロングシートの車両だった。
最後尾は空いていて、長い座席の真ん中に3人並んで座れた。
すぐに発車メロディがホームに流れる。
〔2番線の、ドアが閉まります。ご注意ください。次の列車を、ご利用ください〕
プシューと大きなエアー音がして、ドアが閉まる。
ホームドアなど無いので、全部の車両のドアが閉まり切れば、電車がすぐに発車する。
〔「次は相模湖、相模湖です」〕
往路の時と同様、一段下降式の窓が開いているので、トンネルに入ると、強風が車内に入って来る。
高橋「高尾から、どの電車に乗り換えるって言うんです?」
愛原「まあ、俺に任せとけ。リサは身体的に疲れただろうし、俺達も精神的に疲れただろ?それを癒しに、ちょっと寄り道をしようと思うんだが、いいかい?もちろん、金は俺が出す」
高橋「俺は先生にどこまでも付いて行きます!」
リサ「わたしも」
愛原「よし、決まりだな」
まあ、この電車は終点まで乗るのは間違いない。