報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「仙台での調査、終わり」

2023-04-17 20:37:46 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[11月6日16時00分 天候:曇 宮城県仙台市青葉区春日町 せんだいメディアテーク4階仙台市民図書館]

 リサ「あった!あったよ!」
 愛原「あったか!?」

 50年前の新聞記事を図書館で探していたところ、リサが見つけた。

 リサ「これじゃない!?」
 愛原「これは……」

 『未明の火災、3棟焼く!!』『火元の家屋から焼死体数名 家の住人か?』
 という見出しが目立っていた。
 日付は7月15日になっているから、確かに夏休み直前である。
 仙台市の小中学校は7月の下旬(概ね20日から25日までのいずれか)に夏休みに入り、8月の下旬(概ね8月25日前後)までである。
 東京のように8月末までではない。

 愛原「夕刊は無いかな?もしかしたら、続報が出ているかもしれない」
 リサ「ダメ。15日は日曜日だから、夕刊が無い」
 愛原「そ、そうか。それなら、16日の朝刊だ」

 私は16日の朝刊を探した。

 愛原「これは……!」

 さすがに1日経つと詳細な情報が明らかになるのか、もう少し詳しく載っていた。
 被害者の情報を詳しく報道するのは、今も昔も変わらないようだ。
 焼死した家族だけではなく、生き残った斉藤玲子の顔写真まで載っているくらいだ。
 その写真は、卒アルに載っていた物に酷似していた。
 斉藤玲子は無傷だと思われていたが、煙を吸ったということで、病院には運ばれたらしい。
 それなら当時、担任の小松先生は病院には……行かなかったのだろうか。
 いや、学校に連絡が行くのが遅かったのか?
 残念ながら、その後は忘れられたのか、もうこの火災に関する記事は無かった。
 記事を読むと、火元は台所からだとされているが、出火原因は不明とされている。
 今よりも捜査能力は劣っていただろうが、それでも分からなかったのか。

 愛原「よし。これをコピーしよう」
 リサ「いいの?」
 愛原「図書館では、保管している図書のコピーサービスをやっているんだよ。著作権法においても、図書館で閲覧できる図書においては、それをコピーしても良いことになっているんだ。だからこれは、法律でも認められている当然の権利なんだよ」
 リサ「そうなんだ!」

 コピーは合法だが、有料である。
 そして、コピーをする際に改めて記事を読んだ時、私は新聞を落としそうになった。
 顔写真の所に名前が書いてあるのだが、改めて死んだ斉藤玲子の親族の名前を見て驚いたのだ。

 愛原「白井だ……!」
 リサ「えっ!?」

 名字が白井になっていたのである。
 とはいえ、この中に白井伝三郎がいたわけではない。
 だが、もしかすると、白井伝三郎の親族ではなかったのか?
 そう思った。

 愛原「まさか、ここで繋がっていたとは……」

 もしかすると、白井伝三郎がダイレクトに狙っていたのは上野医師ではなく、斉藤玲子だったのか!?
 まだ中学生の少女をダイレクトに狙うわけがない。
 しかし、上野医師との接点が無いと思っていたら……。
 斉藤玲子をダイレクトに狙っていた理由がちゃんとあった!

[同日16時45分 天候:曇 同地区 せんだいメディアテーク→同区立町 ヤマト運輸仙台国分町営業所]

 善場「でかしました!さすがは愛原所長です!」

 電話で報告すると、善場主任も喜んでくれた。

 愛原「明日、コピーした新聞記事をお持ちします」
 善場「いえ、できればすぐにでも送って頂けると助かります」
 愛原「FAXですか?」
 善場「それだと画像が鮮明でない可能性がありますので、所長がお持ちのコピーをそのまま送ってください」
 愛原「今から郵便ですと、レターパックでも、明後日以降とかになりそうですが……」
 善場「宅配便で、1番速いので送ってください。料金は後でお支払いします」
 愛原「わ、分かりました」

 そう都合よく宅配便の営業所があるのかと思って調べてみると、徒歩圏内にヤマト運輸の営業所があることが分かった。
 そこに直接持ち込めば、早く届けてくれるだろう。
 私はトイレを済ませて戻って来たリサを連れて、仙台市民図書館をあとにした。

 リサ「トイレ、きれいだった」
 愛原「それは良かった」

 春日町交差点から晩翠通りを南下する。
 仙台市出身の詩人、土井晩翠から取られた名前だ。
 “荒城の月”の作詞者でも有名で、仙台市地下鉄の駅構内では、毎時、時報代わりにそのインストゥルメンタルが流されている。
 それからKKR東北公済病院の前の交差点を右に曲がった路地の途中に、ヤマト運輸の営業所はあった。

 愛原「書類を送りたいんですが、梱包材が無くて……」
 スタッフ「それなら宅急便コンパクトがいいですよ」
 愛原「そうですか。できれば明日の午前中に届けてもらいたいのですが……」
 スタッフ「はい、大丈夫です」

 さすがだ!
 書類は郵便のレターパックみたいな梱包材に入れられた。
 但し、時間指定できるだけあって、料金はさすがにそれよりは高かったが。
 といっても、バカ高いわけではない。

 スタッフ「それではお預かりします」
 愛原「よろしくお願いします」

 私は送り状の控えを受け取って、営業所を出た。
 これは領収証の代わりにもなるので、取っておく。

 愛原「よし。取りあえず、帰るとするか」
 リサ「うん」

[同日17時05分 天候:曇 同区大町 仙台市地下鉄大町西公園駅→東西線電車(列番不明)先頭車内]

 

 ヤマト運輸の営業所から、最も近い地下鉄東西線の駅は大町西公園駅である。
 そこから地下鉄で帰ることにした。

〔1番線に、荒井行き電車が、到着します〕

 東行きホームに、小型車両4両編成が到着する。
 席は空いているものの、そこそこ乗っているのは、今日は日曜日で、始発駅の八木山動物公園からの行楽客が多いからだろう。
 駅名の八木山動物公園だけでなく、副駅名にもなっている八木山ベニーランドという遊園地の最寄り駅でもある。
 座席の真ん中にリサと隣同士で座った。

〔1番線から、荒井行き電車が、発車します〕

 すぐに短い発車サイン音が鳴って、ホームドアと車両のドアが閉まる。
 線内でも乗降客数が少ないということもあり、停車時間はそんなに取られていないようである。
 駆け込み乗車もなく、電車はドアを再開閉することなく、すぐに発車した。

〔次は青葉通一番町、青葉通一番町。藤崎前です〕

 私は母親にLINEを送った。
 既に高橋は客間で寝込んでおり、夕食は18時からだという。
 地下鉄に乗ったので、余裕でその時間までには帰れると伝えておいた。

 母親「リサちゃん、お肉大好きでしょう?生協に行って、ステーキ肉買って来たの。今夜はそれだから」

 という返信が返って来た。
 同じく『魔王軍』メンバーとLINEのやり取りをしているリサに……。

 愛原「今夜はステーキだって」

 と耳打ちすると、動揺してスマホを床に落とすほどだった。
 高橋の方はさすがに高熱で食欲は無いものの、今は病院でもらった薬を飲んで眠っているとのことである。
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“私立探偵 愛原学” 「仙台での現地調査」

2023-04-17 11:30:48 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[11月6日14時18分 天候:晴 宮城県仙台市青葉区中央 仙台駅西口バスプール→仙台市営バス411系統車内]

 仙台駅西口にあるバスプールから、路線バスに乗り込む私とリサ。
 乗る場所こそ違えど、実は往路の時に乗ったバス路線の逆方向である。
 そして、車種こそ違えど、大型のワンステップバスがやってきた。
 これはSuicaやPasmoで乗れるので、それで乗る。
 後ろの2人席に座るが、またしてもリサは私に密着しようとする。
 生理前でムラムラしているとか、そういうことじゃないだろうな?
 パーカーのフードを被っているのは、鬼の角が出ているからだろう。

〔発車致します。ご注意ください〕

 バスはそこそこの乗客を乗せると、バスプールを発車した。
 因みに始発停留所はこのバスプールではなく、北西部にある交通局(木町通車庫)である。

〔ピン♪ポン♪パーン♪ 毎度、市営バスをご利用くださいまして、ありがとうございます。このバスは411系統、三百人町、若林区役所前経由、薬師堂駅行きです。次はJR東日本前、JR東日本前でございます。【中略】日蓮正宗佛眼寺へおいでの方は、東八番丁でお降りになると便利です。次は、JR東日本前でございます〕

 愛原「グーグルマップによると、このバスで宮城の萩大通で降りて、一本、道を入った所が現場らしい」
 リサ「そう……」
 愛原「もう少しで、仙台の家が分かるかもよ」
 リサ「お母さん、大変だったんだね。まあ、わたしもだけど……」
 愛原「だなぁ……。だから、リサには早く人間に戻ってもらって、幸せに……」

 するとリサ、私の顔を覗き込んで言った。

 リサ「幸せになる為の対価が『鬼になること』なんだとしたら、わたしはこのままでいいと思ってるよ?」
 愛原「おい、何言って……」
 リサ「だってぇ……。人間のままだったら、先生に会えなかったじゃない……」
 愛原「オマエなぁ……」

 私はこれ以上、何も言わなかった。

[同日14時35分 天候:曇 仙台市若林区一本杉町 一本杉町東バス停]

〔「一本杉町東です」〕

 私達はこのバス停でバスを降りた。
 バス停名としての『宮城の萩大通』は、次のバス停なのだが、このバス停でも、宮城の萩大通はすぐ目の前である。
 この大通りは片側3車線なのだが、市道である。
 それに対して、私達が通って来た道は片側1車線で歩道も狭い道であるが、県道である為、一本杉町交差点では、格上の県道が優先道路となる。
 つまり、何故か片側3車線の市道の方が青信号が短く、片側1車線の県道の方が青信号が長いという現象が発生している。
 もっとも、県道側とて、昼間は交通量の多い道なのであるが。

 愛原「この道を入って行く」
 リサ「うわっ、狭っ!」

 車が1台入って行けるくらいの路地に入る。
 この道を進んで行き、更に左に曲がったり、右に曲がったりしているうちに……。

 愛原「ん?ここか?」

 グーグルマップで確認したマンションが建っていた。
 マンションというよりは、アパートか?
 3階建てだし。

 リサ「ここがそうなんだ……」
 愛原「よくよく考えたら、あれから50年も経ってるんだ。このマンションだって、後から建てられたものかもしれない」

 築50年にしては新しいからだ。
 見た限り、築10年程度だろう。
 つまり、その前に、焼け跡に何がしかの建物が建っており、それも取り壊されて、新たにここにマンションだかアパートだかが建てられたのだろう。
 分譲ではなく、賃貸だということは見て分かる。
 『入居者募集』の看板が地味だからだ。
 ここで霊感が強いとかあれば、何かしら感じる物があるのだろうが、あいにくと私は霊感なんぞ持ち合わせていないからな……。

 愛原「あ、そうだ」
 リサ「?」
 愛原「もう1軒、付き合ってくれるか?」
 リサ「いいよ」

 あいにくとマンションやその周辺には、50年前の痕跡など無い。
 また、閑静な住宅街ということもあり、なかなか聞き込み調査をすることは難しい。
 そこで、図書館に行ってみることにした。
 1人を除く家族全員が焼死するような不審火であれば、絶対に地元のニュースになったはずだからだ。
 地元どころが、全国紙にも載ったかもしれない。
 そして、図書館なら昔の新聞を保存しているはずだからだ。

[同日14時45分 天候:曇 同区南小泉 仙台市若林図書館]

 幸い図書館は、例の現場から徒歩圏内にある。
 のだが……。

 職員「今から50年前の新聞ですか?」
 愛原「はい。地元の新聞……というと、河北新報になりますかね?それを見たいのですが……」

 窓口で職員に問い合わせてみた。
 全国紙にも載ったであろうが、こういうのは地元の新聞の方が詳しく載っていると思ったのである。

 職員「あいにくですが、当館ではそこまで昔の新聞は保存しておりません」
 愛原「ええっ!?」

 やはり、新聞社に行かないとダメか?

 職員「市民図書館であれば、マイクロ版であれば保存しておりますし、閲覧もできます」
 愛原「マイクロ版?」
 職員「昭和50年以前の原版も保存されてはいるのですが、保存状態状態が悪く、閲覧不可となっております。しかし、それのコピーであるマイクロ版であれば、閲覧可能です」
 愛原「分かりました」

[同日15時30分 天候:曇 仙台市青葉区春日町 仙台市民図書館]

 私はすぐにタクシーを呼び、それに乗って仙台市民図書館に向かった。
 日曜日は18時まで開館しているということで、時間に余裕はあったが、入館時間には間に合っても、肝心の記事を探すのに時間が掛かるだろう。
 だから、急いで行く必要があった。

 リサ「おおっ、広い!」
 愛原「さすがは仙台市図書館の中では、中心的な役割を果たす図書館だ」

 尚、仙台市内には北部の泉区に宮城県立図書館もあって、そちらもかなり広いのだが、いかんせん交通の便が悪い。
 それなら、まだ市街地近くにある市民図書館の方が良いと思ったのだ。

 愛原「探す範囲は1973年の7月前半だ。夏休み直前ということは……」
 リサ「分かった」

 果たして、上手く見つかるかどうか……。
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“私立探偵 愛原学” 「仙台での聞き込み調査」 6

2023-04-16 20:33:24 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[11月6日13時28分 天候:晴 宮城県仙台市青葉区愛子中央 JR愛子駅→仙山線1854M列車先頭車内]

〔この電車は、仙山線、普通、仙台行きです〕

 マクドナルドで昼食を取った私とリサは、JR愛子駅に向かった。
 そこから当駅始発の上り電車に乗り込む。

 

 行きと違って4両編成の電車だったが、2両編成を2編成繋いだものではなく、4両で1編成のタイプであった。
 これだとワンマン運転には対応していない為、車内には整理券発行機も運賃表示器も運賃箱も無い。

 

 ドア横の2人席に座る。
 リサは変化後は平均的な女子高生の体型になったが、それでもバケットシートに座ると両脇が余るほど。
 いつもあれだけ食べているのに、そのカロリーは形態変化や電撃のエネルギーに消費されるという。

〔「お待たせ致しました。13時28分発、普通列車の仙台行き、まもなく発車致します」〕

 1番線や2番線から発車する場合には、構内踏切が作動するのだが、ホームの構造上、3番線から発車する電車に対しては踏切が作動しない。
 この電車がそうだった。
 特に駅の設備に発車メロディや発車ベルがあるわけでもないのだが、車両の車外スピーカーからそれが流れる。
 元々は乗降促進チャイムなのだが、JR東日本では駅の発車メロディと同じメロディが流れる。
 そして、ドアチャイムの後でドアが閉まるが、閉まり切る直前に一旦止まって、それからようやく閉まり切る。
 尚、仙山線にはまだホームドアが無い為、電車のドアが閉まると、すぐに発車する。

〔今日もJR東日本をご利用くださいまして、ありがとうございます。この電車は、仙山線、普通、仙台行きです。【中略】次は、陸前落合です〕

 リサは私に寄り掛かるように座った。

 リサ「お母さんにも『先生』と呼ぶ命の恩人がいて、わたしを生んだということは、その『先生』と結婚して……」
 愛原「おいおい。もしそうだとして、お前のお父さんは上野医師だ。俺は医者じゃなく、しがない探偵だ。しかも、本来は『先生』と呼ばれる職業じゃない。高橋が勝手にそう呼んで、オマエがそれに追随しているだけに過ぎない」

 そして、リサ率いる『魔王軍』のメンバーも。

 リサ「そうかな。わたしにとっては、先生はお医者さん以上に命の恩人だよ?」
 愛原「そうかもな」
 リサ「そっかぁ……。お母さんは、中学生でわたしを生んだのかぁ……」
 愛原「いや、まだ分からんよ?もっと後になってからかもしれんし」
 リサ「でも10代で生んだんでしょう?わたしも負けてられないね」
 愛原「なに変な所で対抗意識持つんだよ!?……まずは、人間に戻ってから。話はそれからだ」
 リサ「わたし……戻れないんじゃないかな?」
 愛原「そ、そんなことはないだろ!現に善場主任は戻ってるんだし……」
 リサ「今のわたしは変化した後で、本当の『鬼』になってる。元々善場さんと同じ方法じゃ戻れないのに、もっと戻る方法が分からなくなってる。もうずっとこのままなんだって、そう思うよ」
 愛原「いや、しかしだな……」
 リサ「だから、先生にはこの状態のわたしを受け入れてもらうしかないね!」
 愛原「おいおい……」

 さすがの上野医師も、普通の人間の女の子と結婚しただろうに……。
 私の相手は『鬼』だで?
 いくら善い行いしていないとはいえ、現世で鬼に責められるとは……。

[同日13時56分 天候:晴 宮城県仙台市青葉区中央 JR仙台駅]

〔まもなく終点、仙台、仙台。お出口は、左側です。新幹線、東北本線、常磐線、仙石線、仙石東北ライン、仙台空港アクセス線、仙台市地下鉄南北線と仙台市地下鉄東西線はお乗り換えです。今日もJR東日本をご利用くださいまして、ありがとうございました〕

 電車は仙台駅に近づく度に乗客を増やして行き、座席は満席、ドア付近やロングシートの前の吊り革にも乗客が掴まるくらいになっていた。
 運行状況としては、だいたいダイヤ通り。
 仙台駅では1番東側にある、仙山線ホームに入線した。
 西口の外観が大宮駅と似てる仙台駅だが、ホーム番線の番号の振り方が東西逆になっていることに注意。
 これは新幹線ホームも同じ。

〔せんだい~、仙台~。本日も、JR東日本をご利用くださいまして、ありがとうございました。お忘れ物の無いよう、ご注意ください〕

 電車を降りた私達は、地下鉄の乗換口ではなく、地上の改札口に向かった。

 リサ「先生、地下鉄に乗り換えないの?」
 愛原「ああ。それに、その前にやることがある」
 リサ「?」

 地上2階の改札口を通過すると、上りエスカレーターに乗って、3階に向かう。

 愛原「帰りの新幹線のキップを確保しようと思う」
 リサ「自由席じゃないんだ」
 愛原「まあな」

 エスカレーターを上って、すぐの所にある指定席券売機の所へ向かった。

 愛原「夜の新幹線にしよう。実家で夕食を食べて、それから東京に戻るといった感じで」
 リサ「分かった」

 私は指定席券売機で、東京駅までの新幹線特急券と乗車券を2枚購入した。
 特急券と乗車券の区間が一致している場合、それは1枚に纏められる(指定席券売機で購入する青券の場合)。
 なので、2人分ということで2枚キップが出てきた。

 愛原「実際に乗る時までは、俺が預かっておくからな?」
 リサ「うん」
 愛原「この後は……」

 再びエスカレーターに乗り、2階に戻る。
 しかし1階には下りず、そのままペデストリアンデッキに出た。

 愛原「バスで現地に向かおうと思う」
 リサ「そう」

 私はリサの手を取って、その路線バスが出る西口バスプールへと向かった。
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“私立探偵 愛原学” 「仙台での聞き込み調査」 5

2023-04-16 15:54:13 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[11月6日12時30分 天候:晴 宮城県仙台市青葉区愛子中央 小松家→同区愛子新宮前 マクドナルド48号愛子ヨークタウン店]

 愛原「それでは先生、最後に、斉藤玲子さんの仙台の家は御存知ですか?」
 小松「うむ……。詳しい住所までは知らんが、おおよその場所までは知ってる。ちょっと待っててくれ」

 小松先生は席を立つと、一旦応接室を出た。
 すると、ドアの向こうにこの家で飼われているチワックスのシェリーがいた。

 リサ「あーっ?」
 シェリー「!」

 シェリーはリサがこっちを見ているのに気づいて、ダッシュで逃げ出した。

 リサ「えー?どうして逃げちゃうのぉ?」
 愛原「そりゃ逃げるわ」
 リサ「えー?」

 しばらくして、小松先生が仙台市の地図を持って戻って来た。

 小松「ここが、中学校だ」
 愛原「あ、はい。そうですね」
 小松「斉藤君の家は……この辺りだな」
 愛原「ちょっと待ってください」

 私はスマホを取り出すと、それでグーグルマップを出した。
 同じような場所を出すと、そこにポイントを付けた。
 試しにその部分をストリートビューで見ると、どうやら今はマンションが建っているようだった。
 ……火事で1人を除く全員が焼死した場所に建ったマンションか……。
 お祓いとかはしているだろうが、何か土地全体が事故物件っぽくてやだな……。
 ストリートビューを見る限りでは、痕跡などは何も無いようだ。
 しかしながら、地下鉄の薬師堂駅から徒歩圏内ということもあり、見に行くことはできそうだった。

 愛原「今はマンションが建っているようですね?」
 小松「土地の地権者が誰だかは分からんが、さすがに家の再建は無理だったのだろう」
 愛原「ありがとうございました」

 私は礼を言うと、席を立った。
 で、応接間の外には相変わらずシェリーがいる。

 リサ「てやっ!」

 リサの姿を見て逃げるシェリーに対し、飛び掛かって捕まえるリサ。
 黒い短いスカートから、紺色のブルマが丸見えになる。

 

 シェリー「キャン!」
 リサ「こーら、暴れるなw」
 愛原「リサ、人んちで何フザけてんだ!」
 小松「娘さんは元気でよろしい」
 愛原「早く帰るぞ!」
 リサ「はーい」
 愛原「それでは小松先生、貴重な情報をありがとうございました」
 小松「いやいや。暇を持て余した老人を頼ってくれて、こちらこそありがとう」
 リサ「あのー……」
 小松「ん?」
 リサ「わたしのお母さん……かもしれない人、どんな人でした?」
 小松「彼女ねぇ……。一言で言うなら、『薄幸の美少女』といった感じだったよ。だから、もしも君が娘なら、お母さんの分まで幸せになるんだよ」
 リサ「……はい!」

 薄幸の美少女ね。
 もしかしたら、リサもそうなる可能性が大だったわけだ。
 ……って!

 愛原「リサ、犬は持って帰れないからな?」
 リサ「えー……」
 シェリー「キューン……」

 小松家を出た後、私達は昼食を取ることにした。
 あまり愛子駅周辺には飲食店が無いのだが、国道48号線の愛子バイパス沿道には色々あるようだ。

 愛原「マックがあるらしい。そこでいいか?」
 リサ「いいよ!」

 マクドナルドに向かうまでの間、私は小松先生から聞いた話を善場主任に報告した。

 善場「調査ありがとうございます」
 愛原「福島県のいわき市とか郡山市も調査しますか?」
 善場「それはまた後ほどお願い致します」
 愛原「分かりました。デイライトさんでは、かなりこの調査を重要視されているのですか?」
 善場「重要ですとも。日本版リサ・トレヴァーがどのようにして生まれたのかの調査にも繋がります」
 愛原「なるほど……」

 デイライトでは、日本版リサ・トレヴァーの殆どが血の繋がった姉妹であることが分かっている。
 それを隠す為、研究所ではリサ・トレヴァー達には白い仮面を被せて、互いの顔が分からないようにしたのだろう。
 また、部屋も個室を与えることにより、互いの正体が分からないようにした。
 成人女性だった『6番』とか、男だった『10番』は違うだろうがな。

 愛原「善場主任は、『2番』のリサと繫がりあるのですか?」
 善場「あるわけないですよ。私は大学生時代、白井に捕まったのですから」
 愛原「それもそうですね。失礼しました」
 善場「取りあえず、本日の調査は一旦終了で結構です」
 愛原「分かりました。ただ一応、斉藤玲子の仙台の家があった場所は確認したいと思いますが……」
 善場「はい。それはお願いします」
 愛原「かしこまりました」

 私は電話を切ると、今度は父親のスマホに連絡した。
 すると、さすがに診察は終わり、今は薬が出るのを待っている状態だという。
 想像した通り、急患センターは混雑しており、本当に半日掛かりであったようだ。
 で、PCR検査や抗体検査の結果は陰性。
 コロナはコロナでも、新型コロナではなく、旧型コロナだったようだ。

 父親「それでどうする?今夜には東京に戻るんだろ?高橋君も連れて行くのか?病院で熱を測ったら、38度7分まで上がったが?」

 新型コロナではなかった以上、さすがに入院というわけにはいかなかったか。
 かといって、今日中に帰らなければ、リサが学校に行けなくなる。
 私が残ってリサだけ帰らせるわけにもいかない。
 通学や学校行事以外のリサの単独行動は、認められていないからだ。

 愛原「どうしよう……?」

 せめて37度台まで下がってくれれば、ワンチャン夜の空いてる新幹線で帰京するという手もあるのだが……。

 父親「何なら、熱が下がるまで、家で面倒看てもいいぞ?」
 愛原「悪いねぇ……」

 結局、そうするしかないようだ。

 リサ「大丈夫なの?」
 愛原「ああ。高橋には、熱が下がるまで、家にいてもらうしかないようだ。そして、俺とリサは先に帰る」
 リサ「私は1人で行動しちゃいけないことになってるもんね」
 愛原「まあな……」

 私とリサはバイパス沿いのマクドナルドに到着し、そこで昼食を取った。
 予想通り、リサはビッグマックのLサイズのセットを頼んでいたが。
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“私立探偵 愛原学” 「仙台での聞き込み調査」 4

2023-04-13 20:16:42 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[11月6日11時30分 天候:晴 宮城県仙台市青葉区愛子中央 小松家1F応接間]

 シェリー「キャン!キャン!(おしっこ!おしっこしたいワン!)」
 リサ「あ、ダメ、シェリー!どこ行くの?逃げちゃダメ!」

 リサに抱っこされているチワックスのシェリー。
 名前からして雌であろう。
 リサから逃げるように体をよじった。
 しかし、リサの体から逃げるが、リサの素早い動きに尻尾を掴まれてしまう。

 シェリー「キャンキャン!キャワン!」
 愛原「おい、リサ。放してやれよ」
 リサ「はーい」

 リサがパッと手を放すと、ドアの下の小さなスペースを潜って応接間を出て行った。

 小松「ふーむ……。その顔……!」

 門伝先生や斉藤玲子が中学3年生の時の担任だった小松先生が、リサの顔と当時の卒業アルバムの写真を見比べる。

 小松「そのコ……。斉藤君に似てますな?」
 愛原「他人とは思えませんでしょう?もしかしたらこのコは、斉藤玲子さんの実の娘かもしれないのです」
 小松「何ですと!?」
 愛原「卒業アルバムには住所録がありますでしょう?そこには岩手県平泉町の住所が書かれていました」
 小松「思い出した……!確かに私が一教員だった頃、そのようなコを受け持ったことがあります」
 愛原「教え子に、音楽教師の道に進んだ門伝涼子先生もいらっしゃいます」
 小松「うむうむ。門伝君と同じクラスだったな」
 愛原「中学3年生の夏休みに入る直前、仙台の家が不審火で全焼したそうです。それで、平泉の親戚の家に行ったとか……」
 小松「うむ、そのコで間違いない。確か家が火事になったことで、そこの家族も全員死んでるはずです」
 愛原「ええっ!?」
 小松「もし生きているのなら、一緒に避難したはずでしょう。それなのに彼女1人だけ平泉に避難したというのは、おかしいと思いませんか?」
 愛原「た、確かに……。じゃ、じゃあ、その火事では斉藤玲子さんだけ生き残ったのですか?」
 小松「うむ。それも無傷でね。ですが、煙を少し吸ったのか、持病の喘息が悪化したので、その療養の為にと空気の良い岩手県に滞在するということでした」
 愛原「当時まだ現役だった国道4号線沿いで、食堂や民宿を経営していた家ですね?」
 小松「ドライブインと聞いていたが、まあ、似たようなものでしょう。探偵の愛原さんが捜しておられるということは、斉藤君は行方不明ということですか」
 愛原「というか、もう見つかっているも同然ですが」
 小松「! どこにいるのです!?」
 愛原「あの世ですよ」
 小松「あの世!?もう、亡くなったと!?」
 愛原「そうです。そこでお聞きしたいのですが、小松先生は福島県の桧枝岐村を御存知ですか?」
 小松「桧枝岐?確か、南会津にある山奥の村ですな。平家の落人伝説があって、村民の苗字はそれら落人伝説に由来するものばかりだそうで……」
 愛原「さすがは中学校の先生だったお方です」
 小松「こう見えても、社会科の教員でしたので」
 愛原「そうだったんですか!」
 小松「その桧枝岐がどうかしましたか?」
 愛原「村内を通る林道の、更に脇道に入った先に、2人の白骨死体が見つかりました。そのうち1人が、斉藤玲子さんである可能性が出てきました」
 小松「何ですと?」
 愛原「そしてもう1人は、上野という名前の医者である可能性があります。東京の総合病院で外科医をしていたそうですが、このお医者さんに心当たりは?」
 小松「いや、全く無いですが……。斉藤君はどうして、その医師と一緒に亡くなっていたのですか?」
 愛原「話せば長くなるのですが、愛の逃避行を続けていたようです」
 小松「な、何ですと……!?」

 私は2人のなりそめを小松先生に話した。

 小松「そんなことが……」
 愛原「2人は平泉の民宿を出た後、海に向かったそうです。私は一瞬、気仙沼辺りの海を想像したのですが、小松先生は心当たりがありますか?」
 小松「行き先を決定したのは、斉藤君なのですか?」
 愛原「それは分かりません。上野医師かもしれませんし」
 小松「上野医師がヤクザに追われて、東京からなるべく離れようとしているのであれば、北の海に向かったとは思いますが……」
 愛原「あー、なるほど……。しかし、彼女らは最終的には桧枝岐村に隠れ住んでいました。実は私達、現地を調査してきました。今でも交通不便な山村ですが、今から50年前はロクに国道すら無かった時代だったでしょう」

 今は国道がいくつかあるし、会津田島からのアクセスなら、取りあえず村の中心部までなら、冬期間であったとしても車でアクセスできるようにはなった。
 しかし、今から50年も前の時代はどうだっただろう?

 小松「ふむ。人間心理的にはなるべく遠くへというのが人情ですが、『灯台下暗し』とも言いますからな。また、閉鎖的な村へ上手く潜り込むことができたなら、例えヤクザ者であっても、余所者の侵入は村人達が何としてでも食い止めようとするでしょう。今はどうだか分かりませんが、昭和時代の田舎はそういう所が多々ありました」
 愛原「はい。上野医師は医師の立場を利用し、村人の病気を治すことで、上手く村に潜り込むことができたようです」
 小松「それでもヤクザ者の侵入を拒むことはできず、殺されてしまったのですか?」
 愛原「それは分かりません」

 私は否定しようとしたが、さすがに白井達に殺されたとは言えないので、分からないとしておいた。
 ……のだが。
 あくまでもあれは、私やリサがたまたま見た夢である。
 もしかしたら、本当に暴力団員の索敵能力を阻止できず、ついに見つかって殺され、そのまま山中に埋められた可能性も否定できなくはない。
 もっとも、そういう捜査は警察がやることだ。
 今は私達の夢の内容が信用されて、BSAAが捜査しているが。

 愛原「分からないのは、確かに隠れるなら、先生の仰る通り、閉鎖的な田舎の村に上手く入り込むことだと思います。しかし、それだけなら、日本中にあったでしょう。その中から、2人がどうして桧枝岐村を選んだのかが分からないのです」
 小松「その2人のうち、どちらかが縁があったのでしょうかな」
 愛原「分かりません。先生は心当たりはありませんか?」
 小松「いやあ……。桧枝岐という地名を斉藤君から聞いたことはありません。私が知っているのは、元々は郡山に実家があって……あっ!」
 愛原「あっ!」

 私と小松先生、同時に気が付いた。

 愛原「元々、福島県が実家なんですね!」
 小松「うむ。ということは、その実家が何か繋がりがあったのかもしれませんな。それに……」
 愛原「それに?」
 小松「今は野外活動という名前になって、県内の『自然の家』に泊まるそうですが、当時は臨海学校がありました」
 愛原「臨海学校?」
 小松「はい。実は私、斉藤君が2年生の時も担任をやっていました。その時、臨海学校があったんですよ。今は野外活動で山の方に行くようですが、当時は海に行ってました」
 愛原「具体的には、どこら辺の?」
 小松「いわき市です」
 愛原「いわき!?」
 小松「今は震災による大津波でだいぶ地形も変わったようですが、当時……四ツ倉だったかなぁ……。あの辺に合宿所がありましてね。で、海水浴場もあるので、あそこで臨海学校が行われていたんですよ。もちろん、斉藤君も参加してましたね」
 愛原「あっ!」

 その時、私は卒アルに臨海学校の写真があったことを思い出した。

 愛原「上野医師が、『療養の為に海に行こう』と誘った時、斉藤玲子さんが、『それなら前に臨海学校に行った、いわきの方に行きたい』と言ったら……」

 そういう話になったとしよう。
 それなら療養をやめて、いわきから正反対の桧枝岐に向かった理由は、やはり不明だ。
 しかし……。

 小松「ヤクザに見つかってしまったのではないかね?」
 愛原「ああ!」

 あくまで可能性の1つだ。

 小松「海は危険だということで、今度は山に逃げ込もうとした可能性も考えられる」
 愛原「そしてその時、実家と何がしかの縁があったかもしれない桧枝岐にしたと!?」

 すると、郡山の実家を調べる必要があるか……。
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