年末にWOWOWで放送された三谷幸喜の「大空港2013」を録画したものを先日やっと見ることができた。このドラマは、三谷幸喜脚本・監督による"完全ワンシーンワンカット"のドラマ第2弾である。"完全ワンシーンワンカット"とは、1台のカメラのみを使用し、最後までカットをかけずに芝居を撮り続けるということだ。通常のドラマは、複数のカメラを使い、いくつものカットを入れて編集して作られるので、"完全ワンシーンワンカット"では、演じるほう、撮るほうとも大変な緊張を伴う。こんな手法で制作されたドラマは、ほとんどなく極めて実験的なドラマともいえる。
さて、ドラマの内容はといえば、こんな感じだ。
長野の松本空港で働くグランドスタッフの大河内千草(竹内結子)は、天候不良で羽田空港に着陸できずに降り立った田野倉一家のアテンドをすることに。飛行機を待つ間、家族に隠し事がある父親の守男(香川照之)やお金に困っているライターの蔵之介(生瀬勝久)ら田野倉一家に、謎の女性(戸田恵梨香)、パイロット姿の男(オダギリジョー)らも加わった大騒動が巻き起こる――というストーリーである。
主役となる竹内結子は、100分ほどのドラマ中、ほぼ9割くらいはカメラに収まっていたであろうか。ワンシーンワンカットだから、カメラが回りだしたら100分の間はずっと本番という事になる。カメラから外れたのはほとんどなかったから息抜きする時間はなかったはずだ。セリフも多いし、脇役の香川照之や生瀬勝久といったクセのある俳優のアドリブにもうまく合わせ、ミスなく役を演じるという事はとても大変なことだったと思う。竹内結子と脇役陣の絡みを面白おかしく楽しめたドラマだった。
また、俳優も大変だったのはわかるが、それ以上に大変だったのは、100分カメラを回し続けたカメラマンだ。1台のカメラだから、当然同じ人が撮り続けなければならない。実在する空港という制約のある環境で、20キロのカメラを抱えながら100分以上にわたって一度もカメラを止めず、複雑に動く大人数の俳優を撮り続けていたのだ。俳優たちのセリフと動きをすべて覚え、突然のアドリブにも瞬時に対応し、視聴者に飽きさせないようなアングルで撮り続けるという事は大変な苦労である。撮影は、実際にある松本空港の運行時間外の早朝の数時間のみという状況で行われ、少しでも失敗したら全て撮り直しになるという過酷な条件下だったというから凄いものだ。
こんなドラマは、スポンサーがつく地上波放送では絶対できない。CMがなく、いろんなしがらみがないWOWOWだからできる。このところドラマと言ったら朝ドラ以外はWOWOWのドラマしか見ていない。お金を払っても見たい良質のドラマが、常に放送されているのでこれからも見続けていくだろう。