魔性の子―十二国記 (新潮文庫 お 37-51 十二国記) | |
クリエーター情報なし | |
新潮社 |
月の影 影の海〈上〉―十二国記 (新潮文庫) | |
クリエーター情報なし | |
新潮社 |
今、日本で代表的なファンタジー作家というと、上橋菜穂子、小野不由美、荻原規子らが挙げられるそうだ。いずれも女性作家ばかりだが、上橋菜穂子の守り人・旅人シリーズを読みだして、その面白さに惹かれた。結局、上橋菜穂子は、獣の奏者シリーズを始めとする他の作品群も全て読み終え、現在は、小野不由美の「十二国記」シリーズを読み漁っている。
この「十二国記」シリーズは、古代中国思想を基盤にした異世界ファンタジー作品で、文化、政治形態は古代中国に類似している。この世界は十二の国と中央の黄海からなり、官僚の力が強い絶対的な王制である。王とその家族、麒麟、一定以上の位を持つ者が神仙となり、その地位にある限りほぼ不老不死となる。王とは、麒麟によって選ばれ、天帝に代わって国を統治する人物のことで、麒麟は、獣であるが神でもある存在で、神獣と呼ばれる。天から二つの使命を受け、王を選ぶことと、選んだ王の統治を臣下として支えることとなっている。物語は、それぞれの国の王と麒麟の関係を記した内容となっており、麒麟によって王に選ばれた者の苦悩や成長、王を選んだ麒麟の苦労などが興味深く描かれている。また、妖獣という妖しい獣や半獣という人間と獣の姿が混じっている物も登場し、いかにもファンタジーらしいキャラクターが数多いのも特徴だ。
中国思想が中心となっているので、登場人物の名前や言葉が難しい漢字ばかりである。読み始めは、漢字が読めなくて、人の名前なのか物の名前なのか妖獣の名前なのか、区別がつかなかったが、何冊か読み進めるにしたがって、理解できるようになっていた。作品全体の主題は、王とそれを選ぶ麒麟、そして天意とは何なのかという問いだとされている。ファンタジーとはいえ、その骨幹を成すものは、なかなか重いテーマでもある。
シリーズは、まだ完結しておらず、最終的にいつ完結するのかは判らないが、近々新刊が出るらしく、今後どうなっていくかが楽しみでもある。現在刊行されているエピソードリストは、以下の通りだ(当初は、講談社から刊行されていたが、現在は新潮文庫から完全版として刊行されている)。
エピソード0 魔性の子
エピソード1 月の影 影の海(上)(下)
エピソード2 風の海 迷宮の岸
エピソード3 東の海神 西の滄海
エピソード4 風の万里 黎明の空(上)(下)
エピソード5 丕緒の鳥
エピソード6 図南の翼
エピソード7 華胥の幽夢
エピソード8 黄昏の岸 暁の天
(エピソード0は、当初、シリーズの一部として書かれたものでなく、現在の日本が舞台となっており、ホラーっぽい内容であったが、エピソード1に繋がる内容であったことが後にわかった)
この小野不由美という作家は、この「十二国記」シリーズ以外では、日本一怖いホラー小説作家としても有名である。一昨年の第26回山本周五郎賞を受賞した「残穢」という作品は、来年1月に映画が公開されるそうだが、相当怖い映画らしい。原作本も、家に置いておくだけでも怖いというから、その内容は計り知れないものだが、怖いもの見たさに読んでみたい気もする。「十二国記」シリーズを全部読み終えたら、他の作品も読む事になるのだろうが、果たして読み進めることが出来るか心配になってきた。