とっちーの「終わりなき旅」

出歩くことが好きで、趣味のマラソン、登山、スキーなどの話を中心にきままな呟きを載せられたらいいな。

図書館の魔女(上下) /高田 大介 (著)

2016-05-27 23:57:50 | 読書
図書館の魔女(上)
クリエーター情報なし
講談社


図書館の魔女(下)
クリエーター情報なし
講談社


上巻内容(「BOOK」データベースより)
鍛冶の里に生まれ育った少年キリヒトは、王宮の命により、史上最古の図書館に暮らす「高い塔の魔女」マツリカに仕えることになる。古今の書物を繙き、数多の言語を操って策を巡らせるがゆえ、「魔女」と恐れられる彼女は、自分の声をもたないうら若き少女だった―。ファンタジー界を革新する大作、第45回メフィスト賞受賞作。

下巻内容(「BOOK」データベースより)
「ことば」を身につけゆくキリヒトと、「ことば」を操る図書館の魔女・マツリカ。二人だけの秘密が、互いの距離を近付けていく。だが、一方で、周囲の強国との緊張関係は高まるばかり。発言力を持つがゆえに、一ノ谷と図書館は国内外から牽制され、マツリカを狙う刺客まで遣わされる。迫る危険と渦巻く陰謀に、彼らはどう立ち向かうのか。2000枚の超弩級リブラリアン・ファンタジー!

この作品に出会えた事は、本当に幸運だったとしかいえない。たまたま読んだ週刊誌の書評欄に「図書館の魔女」が紹介されていたからだ。図書館と魔女という組み合わせが意外で、ファンタジー物が好きな自分としては、いたく興味がそそられた。さっそく、地元図書館のHPで検索すると、全く予約が入っておらず、すぐに借りることができた。しかし、借りてみて、その厚さは1冊で単行本2冊分もある大長編作品であった。上下2巻だから単行本4冊分といっていい。総ページは1450ページにも渡る。

著者は、高田大介氏で、現在はフランスの大学に籍を置く言語学者だという。この作品は、高田氏のデビュー作で、第45回メフィスト賞を受賞している。読み始めた当初は、こんな厚い本を読むのは一苦労だなあと思っていた。しかも、出だしは、鍛冶の里に生まれ育った少年キリヒトが、王宮の命により、史上最古の図書館に暮らす「高い塔の魔女」マツリカに仕えることになるまでのいきさつが延々と描かれている。さすが、言語学者の作品らしく難しい言葉遣いや漢字がいっぱい出てくる。このまま読み進んでいくことができるのだろうかと心配であった。

だが、読み進むにつれてそんな心配も無用になってきていた。何といっても登場人物のキャラクターが意表をついているのがいい。「高い塔の魔女」マツリカは、自分の声を持たないうら若き少女ながら、図書館のすべての書物に精通し、数多くの言語を解する世界一賢い人物であるのだ。しかも、その知識によってもたらされた策略を弄することで、自分の国はおろか、近隣諸国をも動かすことが出来る力を持っているのである。ただ、口がきけないため、手話を使わないと相手に言葉を伝えることができない。そこで、マツリカ専任の手話通訳者として選ばれたのがキリヒトという少年だ。だが、キリヒトは文字を書くことも読むこともできない。はたして、キリヒトは、マツリカが満足するようなお務めができるのだろうかというところから話が進んでいく。マツリカには、キリヒトが来る前からキリンとハルカゼという二人の女性司書がいて、マツリカの手話通訳をしていたのだが、そのスピードに満足できないマツリカは、キリヒトとの間で二人だけにしかわからない指話での会話を開発してしまう。握りあった手の指の動きで会話ができてしまうというのがすごい。キリヒトはマツリカの指の動きを一瞬で言葉に変えてしまうようになっていく。

上巻は、マツリカとキリヒトの胸キュンとなるほんわかな関係が、読んでいて心地良かった。マツリカは、周りから魔女と恐れられているが、決して魔法や呪術を使うわけではなく、気位は高いが年頃の少女らしさを兼ね備えた優しい少女でもあるのだ。しかし、物語はそれで終わるわけではない。下巻では、物語が大きく動いていく。ほのぼのとした日常の冒険の話が、やがて政治的駆け引きや近隣諸国の覇権争いの関わりへと繋がっていく。いよいよ「図書館の魔女」の本領が発揮されるのだ。こうなると、ストーリーの展開も目が離せない。マツリカの深謀遠慮で、敵対する大国同士を一つにまとめてしまうという件は、読んでいてもワクワクしてしまう。しかも、政治的な話だけではなく、ミステリー的な要素もいっぱい詰まっていて、ページをめくる手がなかなか止まらなくなっていた。

ファンタジーとはいえ、ストーリー的には現実の世界にも当てはまる内容で、それほど違和感はない、また、一人一人の登場人物のキャラクターもきわだっていて、魅力的な人物が揃っている。作者のデビュー作になるのだが、最初からこんな面白い作品をかけるなんと凄いとしか言いようがない。読み始めだけ戸惑ったが、物語の世界に馴染んでしまうと、どんどん引き込まれていった。ここ何年かでは、最も面白いと思った作品になった。しかし、本屋大賞にもノミネートされたことがなく、図書館の借り手がほとんど付いていないというのはどういうことだろう。あまりにも分厚い本をみて、読むのをためらってしまった人が多いのだろうか?書店員の目は節穴としか言いようがない。最近、文庫化され、全4巻に分割して発売されるようになり、読みやすくなったようだ。今後も、続編が出てもおかしくない内容だけに、キリヒトとマツリカの登場を期待したい(既に、「図書館の魔女 烏の伝言」が刊行されているが、マツリカが最後にちょっと登場するだけで、キリヒトは登場しない)。

最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。