私は、険しく上へ続く山道を見上げた。
息を切らせながら、何度も見上げた。
そして、私は分かったんだ。
おはようございます。
どうして、人は山を登るのか。
その答えは、そこに山があるから~!
土曜日、愛知の最高峰『茶臼山』へ登ってきた。
標高は、1415メートル。
1415=い~よ!いっちょ、ゴー!だ。
私は、山に登る気など、なかった。
ふもとにある『カエル館』が目的だったからだ。
弊社の隣のデスクの熟女さんは、ツーリストだ。
その熟女さんから
「茶臼山にはカエル館っていう、生きたカエルが展示してあるの。」
という情報を得た。
私は、カエル好きだ。
カエルが好き過ぎて、でも触れないから、ぬいぐるみを買って、
毎日抱きしめているくらい、好きなんだ。
でも触れない。
生のカエルは、観るのが丁度いい距離感だ。
「そのカエル館と周辺は、パワースポットとしても知られているの。
いわゆるゼロ磁場だそうなのよ。」
「パパパパパっパワースポットなんですね?
い~よ~、いっちょゴーだ。
パワースポットで運気を爆上げして、サマージャンボを買います!」
この時、私はカエルそっちのけで、
まるで虫に食い付くカエルのごとく、凄まじい速度でパワースポットに食い付いた。
行く目的が、秒速ですり替わった瞬間だ。
「いやあのね、おかっぱちゃん?
ゼロ磁場は、そういうとこじゃないから。
体の不調を整えるとか、そういう効果があるとかじゃない?
そんな運気が上がるなら、あの界隈の住民、みんな億万長者になってるでしょ?!」
そんな冷静な熟女さんの言葉を聞いて、私は思った。
なってる!
きっと、みんな億万長者になってるに違いない!
信じ込んだ私は、この暑い最中、
己の出不精をも忘れて、とっとと行って来た。
午前9時、街中は既に、34度。
東へ愛車を走らせ、東へ東へ、さらに東へ・・・・
「もういやだー!帰りたーい!!」
とぐずり始める助手席の私をしり目に、おじさんは東へアクセルを踏み続けた。
到着した頃には、気温27度。
「涼しい~!」
私のご機嫌が治った。
真っ先にカエル館へ入館した。
大人は400円で入れる。
小さな館だ。
その中に幾つかの水槽があり、その中にカエルが暮らしている訳だが、
「どこ?これ?これなのか?」
と、水草にひっそり隠れるカエル達を、1匹たりとも見つけえられない。
館長らしき男性が、
「ここ、立ってみて。足からピリピリくるよ。」
と館内のパワーを強く感じる場所を案内してくれる。
おじさんは、
「あぁぁ、なんか違いますね。」
とパワーを感じているらしいが、私は何も来ない。
ビクともピリとも来ない。一切来ない。
あたし・・・こんなんじゃ運気上がらない。
軽い絶望感のせいで、
死にかけのカエルみたいな目をした私に、館長らしき男性は焦ったのかもしれない。
「あっ、こっちのカエルは触れるよ。」
「はい?」
「抱き上げて写真撮っていいよ。ほら、こっちこっち、このカエル触って。」
いやです!
即座に、そう叫びたかった。
私は、カエルは好きだが、触るのは怖いって昔から言っているじゃないか!
ほんと、昔から口癖みたいに、そう言っているが、
初対面の人が知るはずがない。
姿も見えない水槽に
「どこかしら?良い子ちゃんね~良い子ちゃんね~」
と話し掛けている私の、触れない事情など知る由もない。
「ほら、触って!」
館長は無垢の微笑みで、追い込んでくる。
私は蛇に睨まれた蛙みたいな気分になった。
ということで、
やってやりました!
このサイズのカエルを人生初、抱いちゃいました。
こんな、しょぼい顔で・・・。
ありがとう、ヒキガエルさん。
我が憧れのヒキガエル、本当に可愛かった。
※カエルは体温が低いので、流水で充分に手を冷やしてから、
カエルに触るのも、ごく短い時間におさめ、すぐ離してあげてください。
「これでもう、思い残すことはありません。
ありがとうございました。」
私は半べそのまま、館長らしき男性に深々と頭を下げた。
よし帰ろう。もう帰ろう。
そう思ったが、我が家のおじさんが、
「えっ?茶臼山には、登らないの?」
と発言したせいで、館長らしき男性は
「このすぐ横の道、これ行って~。
30分で登れるから行ってきて~。」
と案内してくれた。
私にとって、この男性は蛇だ。
蛇が言うなら行ってきますのノリで登った。
途中、あたし、死ぬのかもって思った。
けれど、山は続く。
下山する人々は、すれ違いざま声を掛け合う。
「こんにちは~。頑張って~。」
「はい、ありがとうございます。」
山ガールならぬ、山の女神みたいな女性たちも、
「もう少しよ~、頑張って。
下りもきついからね~、うふふふふふ~」
と、もはや這いつくばったカエルみたいな恰好で
必死に傾斜にしがみ付く私を、大いに励ましてくれた。
そうして、45分
茶臼山、登頂!
人生初の登山、やってやりました。
ちなみに、この茶臼山、登山レベル1です。
体力、テクニックとも、レベル1です。
とにもかくにも、
土曜日はいい日だった。
パワースポットのパワーは、一切感じ取れなかったが、
図らずも人生初を2つも経験できて、まったく愉快な旅でした。
あれ?
我が家にも、なにやら御利益ありそうな姿が?
なんか、珍しい生き物みたいだけど
こういうウミウシ、海にいそう・・・
よし、次は海に行ってみようか。