うめと愉快な仲間達

うめから始まった、我が家の猫模様。
犬好きな私は、チワワの夢を見ながら、
今日も癖が強めの猫達に振り回される。

対決の行方

2022年07月24日 | カズコさんの事

ついに、負けてしまった・・・

 

おはようございます。

かずこさんとパチンコ通いをするようになって、

昨日で何度目だろうか。

少なくとも、私としては記憶しきれない回数に至っている。

けれど、勝ち続けてきたということだけは、しっかり覚えている。

私は、勝率10割打者だったんだ。

 

それが、昨日、ついに負けてしまった。

『海物語』に完敗だ。

こんなことで、たかがこんなことで、

上気して、もはや発汗するほど悔しがる自分が、悔しい。

 

そんな時、ここぞという時にやってくれるのが、我がかずこだ。

隣のかずこは、フィーバーに次ぐフィーバーだ。

ここのところ、かずこさんは、

大好きなパチンコ台さえ、その扱いを忘れかけてきている。

お金をどこへ入れて、どのボタンを押せば玉が出て来るのか、もう分からない。

私が横で介助しなければ、機械を動かすことさえ出来なくなった。

そのせいではないだろうけれど、ずっと負け越していたかずこさんが、

昨日は、私の負けた分を取り戻すかのように大勝ちした。

「娘の敵、取ったるで」と言わんばかりのかずこさんは、カッコ良かった。

私は、かずこさんの財産を管理している身でもあるから、

かずこさんのお金を減らさずに済んで、安堵もした。

けれど、実のところ、

「また掛ったじゃん?」とかずこさんの台がフィーバーする度、

かずこさんの肩をポンポン叩いて喜びながら、

心の片隅で、(なんだか悔しい)と思っていた自分にも、悔しいと思っている。

なんという、自分の心の狭さよ!

 

その後は、ご機嫌でうどん屋さんで遅い昼食をとり、

その横にあるスーパーで、鰻を買った。

めっきり食が細くなったかずこさんは、天ぷらうどんを完食した。

「このうどん、なんか、不思議なくらい美味いな」と何度も言う。

そりゃ、そうだ。

勝ちまくった後の飯は、なんだって美味いものなのだよ、かずこよ!

私のピリ辛味噌うどんだって、

今のかずこさんなら、甘いとさえ感じるだろうけれど、

大負けという挫折を味わった私にとったら、痛いくらいの辛さだった。

 

だからといって、かずこさんは、鰻は食べない。

パチンコに勝ったからといって、鰻を買った訳は、自分への褒美ではない。

鰻好きの父さんへの手土産だ。

かずこさんは幼い頃、母親に

「かずこ、鰻は一生食べたらあかんぞ。出世できんようになるでな」

と教えられて以来、今の今まで一口たりとも口にしたことが無い。

親の言いつけを、今でもちゃんと守っているのだ。

なのに、買い物へ行くと、いつも鰻の蒲焼を買おうとする。

パチンコに勝とうが負けようが、そんなことは関係ない。

かずこさんは、母親の言いつけ通り、出世を夢見て生きてきたのに、

その夫には、いつだって好きな鰻を買ってやる。

かずこよ、それって・・・?!

 

そんな深い事を、かずこさんは考えていない。

いつだって、真っすぐでシンプルだ。

だから、

「家に帰りたない。ジジと一緒に居りたないんや。」

と、父の悪口を散々言いながら、鰻を買うのだ。

実際、最近、この夫婦は行き詰っている。

昔から、喧嘩ばかりの夫婦だった。

互いの悪口しか聞かないのも、昔からだけれど、今はちょっと、ニュアンスが違う。

認知症の妻との時間に苦痛を感じている夫と、

認知症が故、自分では訳も分からず叱ってくる夫に、不信感を募らせる妻だ。

 

そろそろ、限界な気がする。

この夫婦を壊したくない。

かずこさんに、どんな時でも鰻を買わせる心だけは忘れて欲しく無いんだ。

だから今、デイサービスなるものを手配してもらっている。

少し離れる時間を設けることで、お互い気分も変わるかもしれない。

とはいえ、かずこさんは難色を示している。

「わしは、人と集まって話したりするんが、嫌いなんや」

確かに、お友達とお茶してくるわなどというセリフを、

かずこさんから聞いたことはない。

そんなガラではない。

遊びに来る友達も、一緒に出掛ける友達も、見たことが無い。

かずこさんの若い頃の日記にも、友達という文字は全く見ない。

酒と煙草と金と男。そして両親の話ばかりだ。

今でも、そうだ。

かずこは変わらない。

人とのコミュニケーションに、苦戦してきた人生でもある。

 

なのに、パチンコ屋へ行っても、スーパーへ行っても

どういう訳か、

「あら~、かずこさん?ちょっと、久しぶりじゃないのー」

と話し掛けてくる人が、一人はいる。

当のカズコは、覚えちゃいないから、どんな関係の人か分からない。

遊びに行くような間柄でも無さそうだ。

それでも、かずこさんっと声を掛けてくれる人がいるのは確かだ。

ここが、不思議なところなのだ。

かずこの七不思議のひとつだ。

 

田舎では浮いて見える、ハイカラで柄の悪い、かずこさん。

さて、デイサービスはうまく行くだろうか。

とりあえず、日にちが決まったら、

かずこにしかできない、かずこならではの、かずこでしかない、

かずこさんらしい、目一杯のお洒落していこうな、かずこさん!

どうしても嫌なら、私はいつだって、負ける覚悟だ。

 

さて、我が家の勝敗は?

やっぱり、のん太よりたれ蔵の方が大きいな。

たれ蔵の勝ちだ

 

たれ蔵「母ちゃん、僕の方が短いよ」

ん?

 

あっ、ほんとだ!

尻尾は、のん太のほうが長いなぁ。

のん太の・・・

 

「ちょっと、待っただ!」

おたま登場か。

そりゃ、おたまが一番、でっかいもんな。

 

おたま「おらは、尻尾も長いんだぞー」

はいはい、おたまの勝ちだな。