うめと愉快な仲間達

うめから始まった、我が家の猫模様。
犬好きな私は、チワワの夢を見ながら、
今日も癖が強めの猫達に振り回される。

人の不幸は、エナジードリンク

2022年07月18日 | 日記

3年前の私は、

怒ってばかりだった気がする。

 

おはようございます。

3年前、たれ蔵とのん太が我が家へやって来た。

たれ蔵は、3兄弟の中で唯一生き残って、我が家にたどり着いた子だ。

のん太は、ほぼ産まれたてホヤホヤで、我が家へ運ばれてきた。

何の生き物だろうが、赤子がやってくるというのは、

めでたいことだ。

 

そりゃ、野良猫の子との出会いは、いつだって突然だから、

私としては、途方に暮れる。

毎度、「あぁぁ~どうしよっ」っとしばらく時が止まる。

もはや、無理くり『めでたい』のだと思い込んでいる節もある。

自己暗示だ。

そんなめでたい奇跡を経験しながら、

私は怒ってばかりの日々が始まる。

 

子猫が成長するに従って、問題も大きくなっていく。

それは、先住猫との関係性だ。

最初はいい。

とりあえず、先住猫を褒めて褒めて褒めちぎっていればいい。

作り笑顔の唇の端が本当にちぎれるのじゃないかというほど、

褒めちぎる。

先住猫の方も、幼い子猫には優しい。

狂犬みたいな、あのきくさんだって、子猫には優しかった。

 

ただ、子猫が腕白盛りになってくると、そうも言っていられない。

私も先住猫も、怒ってばかりだ。

もちろん、怒りたくはない。

私はいつだって、笑顔で穏やかな暮らしを望んでいる。

ヒラヒラしたスカートを履いて白いエプロンなんかを掛けて、

コトコト丁寧に煮込む鍋の前で、鼻歌を歌いながら味見したい。

「よし、出来上がり」

と呟いて、足元に大人しく佇む猫に微笑みかけたい。

けれど、現実は違う。

 

仕事から帰れば、上着だけ脱いで、

ランニング姿のまま、慌てて料理をしながら、

腕白な子猫に、本気で怒る先住猫の威嚇の声が響くたび、

「おたま、シャーシャー言うな!」

と遠くから怒鳴り、それでもダメなら包丁を持ったまま現場へ走る。

まるで、映画シャイニングだ。

その時の私は、おかっぱヘアーのジャックニコルソンだ。

 

なんでも先住猫を優先させる。

これは多頭飼いにおいて、基本中の基本だ。

分かっている。

分かっているが、怒りの矛先は先住猫に向いてしまう。

どうしたって、気心が知れた先住猫には、怒りさえも向けやすいからだ。

これは、私の甘えでしかない。

大きくなったって、たった5~6キロの先住猫に甘えてしまう、

ジャックニコルソンだ。

 

あれから3年、本当に頑張った。

ジャックがじゃない、おたまが頑張ってくれた。

元来、消極的なおたまが、自分から考えて工夫して変わって行くさまに、

私は本当に驚いた。

「猫って、努力するんだぁ」と。

新入りのたれ蔵とのん太も、いろんことを学んできた。

いや、のん太はそんなに学んでいないかもしれないが、

たれ蔵は、おたまとの関係を、自身の頭で考えながら構築している。

たれ蔵も努力する猫だ。

猫は、偉いもんだ。

 

ところが、

ようやく、なんとなくだけれど、

おたまとたれ蔵を笑って見ていられるようになった頃、

母かずこが、ジャックになった。

昨夜も、酷く興奮した声で、電話を掛けてきた。

「ボケてるのに、電話は掛けられるんだぁ」と呑気に感心したが、

実家へ駆けつけると、かずこは頭頂部がかなり薄くなっているから、

本当に、見た目からして、ジャックだった。

怒っている理由なんて、ない。

あるとするなら、頭の中の『アルツハイマー』か、

血中にふんだんに溶け込んだ『ビール』と『焼酎』が暴れているんだ。

認知症の妄想か、ただの悪酔いだ。

 

認知症患者への対応の基本中の基本は、

否定をしない。叱らない。問いたださない。

分かっている。

悪酔いした人間への正しい対応は、飲ませない!それだけだが、

いずれにしても、現実は理想通りにはいかないものだ。

 

ただ、昨夜は一つ、見つけた。

怒り狂ったジャックになった母は、私の過去の失恋話に食い付いた。

そして大いに笑った。

人の不幸が、滋養強壮剤になっているかのごとく、元気に笑っていた。

私の恋話は、リポビタンⅮかよ!と思ったが、

まるで噺家か、浪曲師みたいにノリに乗って話してやった。

あの時の、

笑っていいんだか困惑した表情で同席していた、父の顔が忘れられない。

 

また、かずこさんが怒りに震えていたら、

そうだ!

今度は、あいつの話をしてやろう。

「お前は平成イチクズ野郎だな」って思った、昔のあの男の話を・・・。

 

おい、おたま?

のん太に絡まれてんのか?

 

おぉぉ、おたまが黙して勝ったね。

 

おたま「おらを怒るのか?」

怒らんよ。

おたま、よう頑張ってくれてるもんな。

 

ありがとうな。

おたま「おら、褒められた」

そうだよ。

お前は偉いんだ。