新宿少数民族の声

国際ビジネスに長年携わった経験を活かして世相を論じる。

3月9日 その2 アメリカの景気と関税とTPP

2016-03-09 08:06:14 | コラム
TPP反対論者が大統領になったらどうなるのかな:

私はTPPの件が盛り上がって甘利前大臣が懸命の努力をしていた頃から「アメリカにTPP結成を云々する資格があるのか」を中国やインドネシア等のアジアの新興国から輸入される印刷用紙に高率の反ダンピングと相殺関税をかけて閉め出している事実を挙げて論じてきた。アメリカ商務省は業界の請願を受けて次にはキャッシュレジスターのレシートに使用される中国やドイツから輸入されている感熱紙にも同様な措置を採る保護貿易政策を推し進めてきた。このやり方の何処が「聖域なき関税撤廃」なのか、オバマ大統領さん。

しかも、目下の指名獲得競争中の状況下で、ヒラリー・クリントンもバーナード・サンダースもドナルド・トランプもTPPに否定的ではないのか。トランプなどは真っ向から我が国と中国を名指しで騒いでいる状態だ。

この当時にはTPPと関連のない国々を閉め出したのだが、アメリカの製紙産業界が一向に立ち直らず、先頃は世界最大のInternational Paper(IP)が2007年に売却した印刷用紙工場群が形成していた大手メーカーのVerso Paperも、遂にChapter 11という「民事再生法」による保護を申請する羽目になってしまった。この辺りにも昨日採り上げた印刷媒体(紙媒体)の低迷となって現れている景気回復に未だに本格的ではない傾向が見えると思っている。

この事態に立ち至って、米国貿易委員会(ITC)は5カ国から輸入されているカットサイズ紙(解りやすく言えば「コピー用紙」のこと)に関税を賦課することを決定したと報じられた。その5カ国とはオーストラリア、ブラジル、中国、インドネシア、ポルトガルで、何とTPP加盟国のオーストラリアも含まれているではないか。

因みに、ITCが2月9日に決定した反ダンピング関税の国別の率は、オーストラリアの全メーカーが138.87%、ブラジルの全メーカーが26.95%だが、中でもIPブラジルには41.39%が課せられる。中国には全メーカーに149.00%と高率だ。インドネシアには大手のAPPには17.39%でそれ以外の全メーカーには2.05%だ。ポルトガルには全メーカーに7.80%となっている。

このような措置を採る陰にはアメリカでは既に大手の新聞用紙メーカーが数年前に、段ボール原紙メーカーもその後でChapter 11で立て直されていたし、その他にもMWVが売り払った印刷用紙部門が新会社のNewPageも同様にChapter 11となっていたほど、紙媒体の衰退が著しいのである。私はそこには勿論インターネットに押されたという事実は否定出来ないものもあると思うが、アメリカの景気回復には未だ跛行的な面があると見ているのだが。

参考資料:紙業タイムス社刊FUTURE誌、16年3月14日号

kazkさんに申し上げます

2016-03-09 06:42:41 | コラム
女子サッカー代表の崩壊に思う:

コメントを有り難う御座いました。何時ものことながら、鋭い分析と観察に敬意を表します。実は、私もオーストラリアに先取点を取られた辺りで半ば以上諦めていました。

しかし、極めて遺憾に思うことは、今になってマスコミは佐々木監督と選手たちの間に軋轢があったと報じ始めたことです。もとより、記者ではない私にはそういう事情など分かりませんが、そう聞かされてみれば澤穂希が理由の解説もなく外された件などは、彼らは承知していたはずでしょうに。だが、それを報じることによる問題が起きたでしょうから黙殺していたとは。

私はW杯優勝組を引っ張りすぎたことは止むを得ぬ措置だと思うのですが、世代交代の遅れと言うよりも今となっては軋轢も弱体化の一因だったとは、女子テイームの監督の難しさをも表しているかと思うのです。これは嘗て女子のヴァレーボールの新監督が着任した際に「おっさん何しに来たん」と有力選手に言われたという週刊誌の記事を記憶しております。

技術論に戻せば、私は中学の頃に教えられた「サッカーとはanticipationのゲームである」を信奉しております。それは「次に何が起きるのか」を素早く読んで、あるいは察知してか、または山勘でも良いかも、動くようにならねばならないゲームだという意味でしょう。そこには天性のものもありますが、経験を積むことで、試合の数を重ねることで、読む力が増してくると思いますし、四十雀までやっていた経験からも「経験」の大切さが言えると思っております。そういう点から考えれば、W杯優勝メンバーを引っ張ったのは理にかなっている面もあるかと。

マスコミ報道で佐々木監督が私には理解不能な選手起用を続けた理由も少しは見えましたが、それだけが今回の敗退の理由でも原因でもないでしょう。二線級の拙さと、何と言っても私の信念である「基礎技術の未熟さ」は一つの大きな要因だったと言いたいのです。

この状態で宮間が抜け、後誰が抜けていくかは知る由もありませんが、次の監督になる方は茨の道を進むことになるでしょう。最早短期間での成功は望めず、基礎からの積み上げを重要視して、下部組織の充実を図って欲しいと思うのです。