「英語とは」を良く知らないと:
暫く英語関連の話題から遠ざかっていたところに、President誌の2018.4.16号に“「英語」の学び方”と題した特集があったので、チラと読んでみて一寸した発見をしたので採り上げてみようと考えた次第。お断りしておくが、私がこの特集記事を非難する気も批判する意図もない。ただ、気が付いたことを述べて諸賢のご参考にしようと思っただけだ。
先ずは28頁に「中学英語がよみがえる」とあって次頁に幾つか例文がありそれを一読して、大学1年だったかの頃に同級生がアメリカ人の先生(神父になる前の段階の人で教授ではない)にした質問を思い出させられたものがあった。それは「毎朝、新聞を読んでいます」という日本文を英語にしたものが二つあって、何れが正解かと問うものだった。即ち、
① I read a newspaper every morning. と ② I am reading a newspaper every morning. というものだった。さあ、貴方ならどちらを選びますか。
大学の頃の経験を語れば、それは地方出身者が「arrive in と arrive at とはどう違うのですか」と挙手して諮問したのだった。アメリカ人の先生は
「どちらも正しい表現だが、そういう細かいことに気を取られないで、英語そのもの広く覚える努力をすることを優先しなさい。だが、質問された以上答えておくと、 arrive in は広い場所を示し、arrive at は何処か特定の場所を表していると考えなさい。例文を挙げれば I arrived in Japan and arrived at the Haneda airport. という具合だ。でも、何れを使ってもアメリカでは間違いなく解って貰えると言える程度の誤差だ。だから細かいことに囚われないようにと言っておくのだ」
と答えた。質問した学生はどちらかと言えばキョトンとしていた記憶がある。
私はここに採り上げた二つの例文も上記の 「arrive at と in」 に似たような感じで捉えていた。恐らくどちらを使っても「通じるだろう」ということだが、細かいことを言えば、正解は①なのだとあった。私もそう思って読んだ。②では何故いけないかを夢中になって覚えるよりも、先ず①が自然に口から出てくるように音読でもして覚えなさいと私なら言う。
理屈なんて後から貨車に積まれて追いかけてくるものだ。理論的なことに囚われていれば、何時まで経っても自由自在に話せるようにならないのではないかな。でも、文法は正しく、正確なことばを使って話せるようにすべきだ。
他にも似たような例文が二つあった。それは① I’ll do my best. と② I’ll work hard. で日本文は“仕事で「頑張ります」”だった。矢張り「細かいことに拘泥しないように」と言いたくなるが、正解は②だそうで、①は消極的な言い回しだとされていた。私がアメリカ人の中で働いて Let me see what I can do about it. と言ったら上司に叱責された。それを言うならば I’ll be sure to get the job done. と言えと言って。これならば違いが明白で細かい点も何もない。貴方ならどう考えますか。
次には些か疑問に感じる特集があって、50頁に「試験に絶対出ない大人の基礎英語」とあって、何と事もあろうに fuck、shit、bitch を採り上げていたのだった。しかも、解説文ではこれらの単語を「スラング」だと分類して見せていたのだった。違うと断定する。これらは swearword であり、知識階級では絶対と言って良いほど使わないもの。私が調子に乗って使ってカナダの日系人の婦人にきつく叱られ、副社長に別室の呼ばれて「二度と俺の面前で使うな」と厳しく叱責された種類の言葉だ。
我が国の英語教育ではこれと slang(=俗語)の区別を教えていないようだというか、教える側が区別できていないと指摘する方が正しいだろうと疑うほどお解りではないようだ。こんな言葉をPresident誌ともあろう刊行物が正面から採り上げて解説するのは誤りであると言いたい。この雑誌に出ていたから使ってみようかと思うそそっかしい人が出てきたらどうする気か。これを使えば「私は最下層に属する者です」と声高らかに申告したのも同じだ。
そこで、少し長くなるが私が以前に「英語の言葉の分類」と題して発表した中から swearword のところだけ抜き出してみよう。
>引用開始
Swearwordとは:
「汚い言葉」と訳しておくが、その解説に入る前に、是非この言葉についての私の思い出を採り上げておきたい。
私が1972年8月に生まれて初めてアメリカに出張し、帰路はカナダ西海岸のヴァンクーヴァーからとなった。そこで母親と家内に土産でも買うかと、空港の免税店立ち寄った。応対してくれた販売員はかなり高齢の日系の女性だった。これはと思った物が予算を超過していたので何気なく“Jesus Christ!”と口走った。
するとその販売員がキッとなって急に日本語に変わって「貴方は何という言葉を使うのですか。少しくらい英語ができるからと言っていい気になって汚い言葉を使うとは何事ですか。即刻お止めなさい。私は戦争中にここで育ったために日本語も英語も中途半端になってしまったが、それでもswearwordを使ってはいけないくらいは心得ています。これから先は絶対に使わないようにしなさい」と将に声涙ともに下る忠告を戴いた。私は言葉もなかった。肝に銘じた。
このエピソードでswearwordとはどういう種類の言葉かお解り頂けたと思う。
これの定番的日本語訳はないだろう。私が好んで採り上げる使用例に「沢尻エリカの“Oh, shit!”」がある。そして、これは最も使ってはいけないswearwordの一つである。Oxfordは”A rude or offensive word, used especially to express anger.としているが、これでは弱いと思う。Websterは”to swear”を”Use profane or obscene language.”としている。
私は当初はこれが何であるかという性質を知らずに覚えていた。だが、知らないのは恐ろしいもので、一旦覚えると何となく使ってみたい誘惑に駆られるものであった。これは戦後に駐在した占領軍の兵士たちが使ったために我が国で広まったのである。特に「ゴッダメ」=“God damn it.”がその代表格だっただろう。英語が何であるか良く知られていなかったあの頃には、何の躊躇いもなくアメリカ人が使う言葉を真似していたと思っている。
何故いけないかは上に述べたように明かである。それは我々が所属した(大)会社の本社組織に属する年俸制の社員ともなれば、人前では使ってはいけないものなのである。それだけでは具体性がない。これを使うと、言いたいことを強調できるのだが、それが同時に「語彙の貧弱さ」と「無教養」とを表し「お里が知れる」ことになるのが良くないのである。例を挙げるが、それを見ればslangとは明確に一線を画していると解ると思う。
shit.=「チクショウ」か「何だよ」辺りになるだろうが、下品である。
bull shit=これも「コンチクショウ」であり「この野郎」にもなるだろうか。“horse shit”と言う場合もある。
He is a hell of a salesman.=「彼は凄腕のセールスマンだ」なのだが、このhellがいけないのだ。“hell of a driver”と言えば「運転が凄く上手い人」という具合だ。
God damn it! これも「コンチクショウ」で、日本語でも余り褒められない表現だ。
Jesus Christ.=「なんてこった」か「コンチクショウ」辺りが訳語だろうか。
fuck.→日本語に訳すのも躊躇うような言葉。fuckingとも言う。
ass hole=日本語にも「何とかの穴の小さい奴」という表現があるが、それとは意味が違うものの、汚い言葉の代表格であろう。
Oh, brother.=「何としたことか」とでも言おうか。
「オーマイガー」(=Oh, my God.のことらしい)が近頃テレビで大流行だが、これも好ましくない”swearword”だと知るべきだ。何故にテレビ局はタレントどもに言わせ多用するのかと思う。どうしても言いたければ”Oh my!”辺りが限度だ。
要注意事項:
汚い言葉の例はまだ山ほどあるが、この辺で打ち止めにする。その言葉がswearwordかどうかの判断の基準には、先ず”four letter word”がある。日本語と妙な符号であるが4文字の言葉を指す。例えば上記の例にも4文字のものが幾つかある。次が動物である。そして最後に宗教関連である。その例は上に掲げたが”brother”もそのうちだろう。
ここに採り上げた分類ではidiomを除いては気安く使わないように注意すべきである。特にswearword=「汚い言葉」は絶対に避けるべきだ。迂闊に使えば上述のように品格の問題になる。残る二つについては時と場合を熟慮して使って欲しい。だが、例を挙げてくれなくてはどれがそうと解らないと言われそうだが、対策を述べておくに止める。
それは、数年前に気が付いたのだが、映画やテレビのドラマに出てくる警官や守衛等の役ではこの言葉が多用されている。私は口語を知ろうと思えば映画を見ると良いと言ってはきたが、英語を学ぼうと思って気安く副音声にしないことだ。私が最も巧みにswearwordを操っていると見た映画は、一寸古い例になるが、“Die hard 2”の空港警備隊のLorenzo隊長役だった。この役者は日常生活でもこの言葉だけで暮らしているのかと思うほど巧みだった。
参考までにswearwordを知って置こうと思われれば、このDVDかVideoを買うか借りて見ることか?これ以外では、アメリカ人を主体として外国人と話をしている時に生ずる問題だから、こちらが知らずに使ってしまったか否かを相手に尋ねればよいし、相手が使ったと思えば”What do you mean by saying so?”であるとか、”What do you mean by using such an expression like hell of a sales person?”とでも質問する方法もある。
<引用終わる
暫く英語関連の話題から遠ざかっていたところに、President誌の2018.4.16号に“「英語」の学び方”と題した特集があったので、チラと読んでみて一寸した発見をしたので採り上げてみようと考えた次第。お断りしておくが、私がこの特集記事を非難する気も批判する意図もない。ただ、気が付いたことを述べて諸賢のご参考にしようと思っただけだ。
先ずは28頁に「中学英語がよみがえる」とあって次頁に幾つか例文がありそれを一読して、大学1年だったかの頃に同級生がアメリカ人の先生(神父になる前の段階の人で教授ではない)にした質問を思い出させられたものがあった。それは「毎朝、新聞を読んでいます」という日本文を英語にしたものが二つあって、何れが正解かと問うものだった。即ち、
① I read a newspaper every morning. と ② I am reading a newspaper every morning. というものだった。さあ、貴方ならどちらを選びますか。
大学の頃の経験を語れば、それは地方出身者が「arrive in と arrive at とはどう違うのですか」と挙手して諮問したのだった。アメリカ人の先生は
「どちらも正しい表現だが、そういう細かいことに気を取られないで、英語そのもの広く覚える努力をすることを優先しなさい。だが、質問された以上答えておくと、 arrive in は広い場所を示し、arrive at は何処か特定の場所を表していると考えなさい。例文を挙げれば I arrived in Japan and arrived at the Haneda airport. という具合だ。でも、何れを使ってもアメリカでは間違いなく解って貰えると言える程度の誤差だ。だから細かいことに囚われないようにと言っておくのだ」
と答えた。質問した学生はどちらかと言えばキョトンとしていた記憶がある。
私はここに採り上げた二つの例文も上記の 「arrive at と in」 に似たような感じで捉えていた。恐らくどちらを使っても「通じるだろう」ということだが、細かいことを言えば、正解は①なのだとあった。私もそう思って読んだ。②では何故いけないかを夢中になって覚えるよりも、先ず①が自然に口から出てくるように音読でもして覚えなさいと私なら言う。
理屈なんて後から貨車に積まれて追いかけてくるものだ。理論的なことに囚われていれば、何時まで経っても自由自在に話せるようにならないのではないかな。でも、文法は正しく、正確なことばを使って話せるようにすべきだ。
他にも似たような例文が二つあった。それは① I’ll do my best. と② I’ll work hard. で日本文は“仕事で「頑張ります」”だった。矢張り「細かいことに拘泥しないように」と言いたくなるが、正解は②だそうで、①は消極的な言い回しだとされていた。私がアメリカ人の中で働いて Let me see what I can do about it. と言ったら上司に叱責された。それを言うならば I’ll be sure to get the job done. と言えと言って。これならば違いが明白で細かい点も何もない。貴方ならどう考えますか。
次には些か疑問に感じる特集があって、50頁に「試験に絶対出ない大人の基礎英語」とあって、何と事もあろうに fuck、shit、bitch を採り上げていたのだった。しかも、解説文ではこれらの単語を「スラング」だと分類して見せていたのだった。違うと断定する。これらは swearword であり、知識階級では絶対と言って良いほど使わないもの。私が調子に乗って使ってカナダの日系人の婦人にきつく叱られ、副社長に別室の呼ばれて「二度と俺の面前で使うな」と厳しく叱責された種類の言葉だ。
我が国の英語教育ではこれと slang(=俗語)の区別を教えていないようだというか、教える側が区別できていないと指摘する方が正しいだろうと疑うほどお解りではないようだ。こんな言葉をPresident誌ともあろう刊行物が正面から採り上げて解説するのは誤りであると言いたい。この雑誌に出ていたから使ってみようかと思うそそっかしい人が出てきたらどうする気か。これを使えば「私は最下層に属する者です」と声高らかに申告したのも同じだ。
そこで、少し長くなるが私が以前に「英語の言葉の分類」と題して発表した中から swearword のところだけ抜き出してみよう。
>引用開始
Swearwordとは:
「汚い言葉」と訳しておくが、その解説に入る前に、是非この言葉についての私の思い出を採り上げておきたい。
私が1972年8月に生まれて初めてアメリカに出張し、帰路はカナダ西海岸のヴァンクーヴァーからとなった。そこで母親と家内に土産でも買うかと、空港の免税店立ち寄った。応対してくれた販売員はかなり高齢の日系の女性だった。これはと思った物が予算を超過していたので何気なく“Jesus Christ!”と口走った。
するとその販売員がキッとなって急に日本語に変わって「貴方は何という言葉を使うのですか。少しくらい英語ができるからと言っていい気になって汚い言葉を使うとは何事ですか。即刻お止めなさい。私は戦争中にここで育ったために日本語も英語も中途半端になってしまったが、それでもswearwordを使ってはいけないくらいは心得ています。これから先は絶対に使わないようにしなさい」と将に声涙ともに下る忠告を戴いた。私は言葉もなかった。肝に銘じた。
このエピソードでswearwordとはどういう種類の言葉かお解り頂けたと思う。
これの定番的日本語訳はないだろう。私が好んで採り上げる使用例に「沢尻エリカの“Oh, shit!”」がある。そして、これは最も使ってはいけないswearwordの一つである。Oxfordは”A rude or offensive word, used especially to express anger.としているが、これでは弱いと思う。Websterは”to swear”を”Use profane or obscene language.”としている。
私は当初はこれが何であるかという性質を知らずに覚えていた。だが、知らないのは恐ろしいもので、一旦覚えると何となく使ってみたい誘惑に駆られるものであった。これは戦後に駐在した占領軍の兵士たちが使ったために我が国で広まったのである。特に「ゴッダメ」=“God damn it.”がその代表格だっただろう。英語が何であるか良く知られていなかったあの頃には、何の躊躇いもなくアメリカ人が使う言葉を真似していたと思っている。
何故いけないかは上に述べたように明かである。それは我々が所属した(大)会社の本社組織に属する年俸制の社員ともなれば、人前では使ってはいけないものなのである。それだけでは具体性がない。これを使うと、言いたいことを強調できるのだが、それが同時に「語彙の貧弱さ」と「無教養」とを表し「お里が知れる」ことになるのが良くないのである。例を挙げるが、それを見ればslangとは明確に一線を画していると解ると思う。
shit.=「チクショウ」か「何だよ」辺りになるだろうが、下品である。
bull shit=これも「コンチクショウ」であり「この野郎」にもなるだろうか。“horse shit”と言う場合もある。
He is a hell of a salesman.=「彼は凄腕のセールスマンだ」なのだが、このhellがいけないのだ。“hell of a driver”と言えば「運転が凄く上手い人」という具合だ。
God damn it! これも「コンチクショウ」で、日本語でも余り褒められない表現だ。
Jesus Christ.=「なんてこった」か「コンチクショウ」辺りが訳語だろうか。
fuck.→日本語に訳すのも躊躇うような言葉。fuckingとも言う。
ass hole=日本語にも「何とかの穴の小さい奴」という表現があるが、それとは意味が違うものの、汚い言葉の代表格であろう。
Oh, brother.=「何としたことか」とでも言おうか。
「オーマイガー」(=Oh, my God.のことらしい)が近頃テレビで大流行だが、これも好ましくない”swearword”だと知るべきだ。何故にテレビ局はタレントどもに言わせ多用するのかと思う。どうしても言いたければ”Oh my!”辺りが限度だ。
要注意事項:
汚い言葉の例はまだ山ほどあるが、この辺で打ち止めにする。その言葉がswearwordかどうかの判断の基準には、先ず”four letter word”がある。日本語と妙な符号であるが4文字の言葉を指す。例えば上記の例にも4文字のものが幾つかある。次が動物である。そして最後に宗教関連である。その例は上に掲げたが”brother”もそのうちだろう。
ここに採り上げた分類ではidiomを除いては気安く使わないように注意すべきである。特にswearword=「汚い言葉」は絶対に避けるべきだ。迂闊に使えば上述のように品格の問題になる。残る二つについては時と場合を熟慮して使って欲しい。だが、例を挙げてくれなくてはどれがそうと解らないと言われそうだが、対策を述べておくに止める。
それは、数年前に気が付いたのだが、映画やテレビのドラマに出てくる警官や守衛等の役ではこの言葉が多用されている。私は口語を知ろうと思えば映画を見ると良いと言ってはきたが、英語を学ぼうと思って気安く副音声にしないことだ。私が最も巧みにswearwordを操っていると見た映画は、一寸古い例になるが、“Die hard 2”の空港警備隊のLorenzo隊長役だった。この役者は日常生活でもこの言葉だけで暮らしているのかと思うほど巧みだった。
参考までにswearwordを知って置こうと思われれば、このDVDかVideoを買うか借りて見ることか?これ以外では、アメリカ人を主体として外国人と話をしている時に生ずる問題だから、こちらが知らずに使ってしまったか否かを相手に尋ねればよいし、相手が使ったと思えば”What do you mean by saying so?”であるとか、”What do you mean by using such an expression like hell of a sales person?”とでも質問する方法もある。
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