新宿少数民族の声

国際ビジネスに長年携わった経験を活かして世相を論じる。

南北首脳会談に思う

2018-04-28 15:39:31 | コラム
ROKとDPRKの首脳会談に思う:

結果がどう出るかは概ね予測できたので、と言うか多くの所謂「専門家」の方々があちこちで色々と予測を語っておられたので、この私でさえ読むことが出来ただけのことだった。午後6時過ぎだったか、両首脳の共同記者会見(なのかどうか彼らを取りまく人数が画面では非常に少なく見えた)では金正恩は非核化に触れなかったし、如何にも「6月終わりまでには開催されるだろうと言われるトランプ大統領との会談まで引っ張っておくだろう」との専門家の予測通りかと思った。

先日、ジムのサロンでチラと拾い読みした NY Times では「金正恩が撒いた餌に韓国側が飛びついた」との見出しがあって、余り好意的な記事ではなく、DPRKが自ら非核化を認めるまでには至るまいとあった。あの新聞ならば、トランプ大統領が金正恩との会談の開催を真剣に見込んでおられる以上、それくらいは言うだろうと思っていた。

しかし、文在寅大統領にとっては恐らく一生一世の大仕事だっただろうから、その凝りに凝った演出と言うか筋書きは誠に絢爛豪華なもので、大いに印象的だった。専門家の方々のご意見では多くの狙いが籠められていたようだったが、「南北統一」が最大の狙いだったのは間違いないようでも、金正恩が自国の非核化を真っ先に云々するだろうとは到底予測できなかった。もしもそうすれば、これまでに繰り返してきた発射の試験はどうなるか、核実験に費やした費用はどうなるのかとの疑問にぶつかるのだ。

両国間に存在する数多くの問題点と課題、それら以外にDPRKが長年にわたって全世界でなければ少なくとも、アメリカ、中国、ロシア、フィリピンを始めとする東南アジアの諸国を巻き込んだ埋め立て地問題等々、それに最後に述べるから小さな問題と思われてはならない我が国に対する拉致問題等等々がたった一度の首脳会談で解決の糸口が見つかるはずがないと私は思いながら、この言わば歴史的な会談の中継を見たし、専門家の解説を聞いていた。

だが、何処まで金正恩が引っ張っていく気なのか、何処まで経済制裁に耐え続けていく用意があるのか、本気で中国に縋り付くのか、ただ単に挨拶に行っただけなのか、制裁が辛いから何とか落ちらでトランプ大統領に対して援護射撃をとお願いに出たのか等々の読みにくかった事案の行く先が、少しは見えてきたかのような会談だったと思う。だが、あのお二方が会談しただけで世界の情勢が変わって行くのではなく、飽くまでも変わって行く為、変わらせる為の切っ掛けになっただけだと思う。

本番というか、世界情勢に大きな真の変化をもたらすだろう催し物は、本当に開催されるか否かを未だに危ぶむ向きもあるし、トランプ大統領自身が『事によっては席を蹴って立ち去る』と言われる「トランプ大統領対金正恩との会談」であろう。それだけではない、私には未だに昨日金正恩が約束したような事柄を信ずべきか否かなどは解らないのだ。現に文在寅大統領が伝えると安倍総理に約束したと報じられていた「拉致問題」が採り上げられたという話は、関連の報道にはチラとも出なかったではないか。

今や信ずべき事は、安倍総理が囲み取材の際に「我が国が蚊帳の外ということはない」と断言された点だけである。その為に出張されて「トランプ大統領と11時間も語り合ってきた」と強調されたことだ。


ハリルホジッチ前監督の再来日

2018-04-28 08:57:18 | コラム
日本と欧州人との思考体系の違い立証の旅となった:

3年と一寸ではハリルホジッチ氏は我が国の思考体系が、欧米人のそれとは大いに異なることを全く理解できずに終わったようだと思う。中には昨日同氏が行った90分を超える記者会見を聞いて、その不満を納得されたか、同情するか、協会の不手際だと思われた方がおられても、私は格別不思議なことでも何でもないと考える。それは、我が同胞が日常的に、彼らの育ってきた文化と思想・信条・哲学に深く接する機会など先ずないからである。欧米人だって同様であると断じる。

これまでに何度も繰り返して指摘したことだが「彼らの思考体系では『非は自分たちにある』と認めて謝ることは先ず絶対と言って良いほどあり得ない」のである。一方、我が国では「潔く自らの過ちを認めて謝罪すること」が美徳であり、社会通念でもあるのだ。だからこそマスコミも一般大衆も何かにつけて「謝罪がない」と非難し且つ批判して攻撃するのだ。だからこそ、私は傲慢だと感じるが、テレ朝は福田淳一前財務省事務次官に謝罪がないと憤ってみせるのだ。我が国には「謝罪の文化」があるのだ

私は何もハリルホジッチ氏にこれまでの3年有余の指導法に誤りがあったのだから謝罪せよなどと言うつもりもない。それは、彼がただ3年有余の日本のサッカー選手と協会に接していただけの短期間に「我が国には欧米にはあり得ない『謝罪の文化』が減算として存在していたこと」を知り得る機会もなかっただろうし、協会も通訳の任に当たった方も、そこまでの文化比較論を勝手に(?)講釈をされたとは考えにくいからだ。

欧米のサッカーの世界だけで過ごしてこられたハリルホジッチ氏は「お互いに人間である以上同じだ」とでも素直に信じて、指導してこられたのだろう。コミュニケーションとやらも欧米流で取ってこられたのだろう。その意味では私は彼が文化と思考体系の違いを知らなかったことを責めようとは思っていない。だが、何度か述べてきたことだが、私は本当の意味で「日本とアメリカの間に存在する文化と思考体系の違い」を把握して語れるようになるまでに10年以上も要したのである。

それも、彼らの会社で使用人としてそれだけの年数を過ごしたからこそ認識できたのだ。ハリルホジッチ氏は監督として君臨し自らの文化と思考体系を基にして指導されたのであれば「我こそは」と善意で信じておられたのだろう。巷間伝えられていたように指導者である彼に何らかの物申す選手を、怪しからんと不快に思って外していったのは特別に不思議ではないと思う。

アメリカの会社で副社長兼事業本部長に向かって「運営方針が間違っている」となどと真っ向から具申に行く人など見たことも聞いたこともなかった。そのようなことをすれば、それこそ、トランプ様ではないが You are fired. と宣告されに行く玉砕戦法にも等しい行為だから。副社長兼事業本部長は全権を持って運営している存在で、そこには「上意下達」しかあり得ないのだ。

という次第で、私の目にはハリルホジッチ氏は「文化と思考体系が異なる我が国には『謝罪の文化がある』とは知らずに不満を訴えに来られて、生き恥を曝した結果に終わったという結果になるのではと危惧する次第だ。もしも、彼がその点を承知ていれば、冒頭に「代表テイームの選手たちと意思の疎通を欠き100%の指導ができずに申し訳ありませんでした」と言えば、事情は大いに変わったと思う。そこで彼は無罪放免に近い状況に持って行けて、大方の同情をも得られただろうから。