新宿少数民族の声

国際ビジネスに長年携わった経験を活かして世相を論じる。

トランプ大統領の考察

2018-04-21 16:42:08 | コラム
何もかもご承知の上でのことなのか:

私は事ここに至って「トランプ大統領は色々な意味でアメリカの歴史に名を残す大統領になってしまうかも知れない」と思うようになった。だが、依然として「あの大統領は本当に何もかもご承知で、あの unpredictable とジャーナリズムなどに揶揄されていたような、これまでの予測不可能な政策を打ち出したり言動をされるのかは、就任後1年4ヶ月を経ても読み切れないのだ。と言うことは「実際には何らご存じでないが為に恐れを知らずに、世界をも驚かすような思い切った手が打てるのではないか」という言わば失礼な疑いを抱かざるを得ないのだ。

それらの中には法律的にいくつかの州で波紋を巻き起こした「7ヵ国からのイスラム教徒の入国を禁じる大統領令の発令」があったかと思えば、「習近平との会談中にシリアにミサイル攻撃をかけた事」もあれば、「メキシコにあるアメリカの企業の工場からの輸入にボーダータックスを賦課する」と言い出したかと思えば、「NAFTAを見直し、TPPからは離脱して、今後は日本を含めて関係国とのFTAを推進する」という世界の貿易の秩序と仕組みを変えていくかのような意志を示したような、これまでの常識というか慣行を打破してみせると宣言してしまったと受け取れる新機軸が打ち出されていたのだった。

ところが事はこんな程度では収束せず、金正恩と会談した韓国の特別な使節団が彼の「トランプ大統領との首脳会談を望む」との意向を伝え聞くやいなや即決で「良し。会おう」とこれぞ歴史に名を止めるだろう会談を受けて立たれたのだった。この決断については国務省にも何処にも相談することなく大統領としての決定だったと報じられている。「これはこれまでの常識というか、大統領府としての決定の手続きを踏んでいない型破りである」との見方があるが、トランプ氏のそれ以前の振る舞いから見れば、あっても不思議ではなかったのではないかと思わせる。

その決断と前後して「アメリカの安全保障の為に」と言われて「鉄鋼とアルミへの関税賦課」の大統領令も決定された。そこにはアメリカの貿易赤字の削減というあるべき姿を目指す手法が採られたと思えるのだ。尤も、高率の関税をかければ国内にインフレ傾向が生ずると予測できるが、トランプ大統領にとっては貿易赤字削減の大目的の為にはそこに生ずるだろう障害は眼中になきがごとしで、免除を申し出た盟友の安倍総理との会談では拒絶していたのだった。

この辺りの強引とも見える手法には「トランプ大統領はアメリカという国が根本的に輸出国ではなく、中国等の諸国からの非耐久消費財等のの輸入に依存せざるを得ない体質になっていた事実や、主たる産業か何故空洞化してアメリカを出て行ったのかと言ったような過去乃至は歴史は度外視されて、アメリカに売り続けた諸国がアメリカを利用してきたのでないか」と、恰も「その時代を終わらせる時が来た」と宣言されたようにも聞こえる。

しかし、公約を着々と実行され続け、支持率が長く続いた38%が遂には40%台に達するまで、岩盤の支持層だった「プーアホワイト以下」ではなく、もしかしてそれ以上の層に支持基盤を拡張することに成功したのかとすら思わせてくれる事態である。金正恩との会談には「何処の非核化か」などという大命題があるが、既に国務長官就任が内定しているポンペオCIA現長官をDPRKに密かに派遣して金正恩と会談させ、本日はDPRKに「核実験とmissileの停止声明」をださせていた。それを信ずべきか否かは過去の歴史から見れば疑わしいが、声明は出たのだ。

このポンペオ氏派遣は我が国には事前通告がなかったと「蚊帳の外説」を強調するかのようなマスコミ報道もあった。流石にCIAだとは思わせてくれるが、この辺りにも、トランプ大統領は「金正恩との会談も辞さない」と公約にもあった項目の実現の為には、安倍総理との親密な間柄はあるが「大義親を滅す」にも似た二進法的な割り切りがあったようだ。私は「矢張りトランプ大統領ならあり得ることだったか」と考えさせられた。私はここには「これまでに何度も約束を反故にされたアメリカだったが、自分だけはその轍は踏まないぞ」との固い決意も見えるような気さえする。

以上、後難を恐れてというか「もしかして自分の意見は大間違いかも知れないが」との留保条件をつけることが出来れば、トランプ大統領がこれまでに打ち出してきた一見何の脈絡もないかのような特異であり強引にも見える戦略の大部分が上手く行けば(英語ならば succeed という単語が相当するが)世界ではこれまでの仕組みや常識や秩序が変わって行ってしまう可能性はあると思わせてくれる。そこまでの事柄を成し遂げた大統領として歴史的な存在になるだろうと思って見ている。特に、対金正恩とそこに連なる中国(習近平)とロシア(プーテイン)とのアメリカの力関係が、これまでから一変してアメリカに有利に展開していくかも知れない。

そこに何時も専門家とマスメディアが採り上げる話題に「日本国の蚊帳の外」説である。だが、その他にも今回のトランプ大統領と金正恩との会談との切っ掛けを演出したのは親DPRKにまっしぐらの韓国の文在寅大統領の存在があったのである。この点にも注目すべきだと唱える専門家がいる。文在寅大統領を拉致問題でも活用すべきだったと言いたいようだ。だが、安倍総理は水面下でも手を打ってきていたと言って「蚊帳の中にいた」と穏やかに反論しておられた。

DPRKを巡ってのトランプ大統領の会談(もし予定通りに実現し金正恩を説得されたら)の成果如何では、中国とロシアが今後どのようにトランプ大統領とアメリカと我が国も含めての関係を、どのように変化させていくのかが重要な関心事になって行くかと思っている。我が国はここでは安倍総理とトランプ大統領との盟友の間柄を十分に活かしていくべきだと思うが、遺憾ながら国内、就中国会では野党6党だったかが、ここを先途とばかりに安倍内閣打倒のみに専念している。私は断じて我が国はそのような事案に明け暮れている時ではないと思うのだ。