複雑な思いで山林からの土砂崩れの報道を見ていた:
正直なことを言えば「土砂崩れは非常に残念と言うか、遺憾な状態だった」と痛感していたのだった。あの全国に拡がった膨大な面積の山林の管理というか手入れの状況では、危険だったと思っていたということだ。
何処の何方が言い出したかの記憶が定かではないが、我が国土を外国人に説明する時に「これほど狭い面積でありながら、その70%以上は山乃至は丘陵地帯(英語では mountainous と言えとあったが)であり、住むのに適した(英語では habitable だった)平地は概ね太平洋岸に集中しているので、自然に南側では人口密度が稠密になる。それ以外の北側等は居住には適切とは言いがたいと言え」と聞かされたことがあった。「なるほど。的確な説明であるな」と思った。
その我が国の国土の大部分を占める山岳から丘陵地帯はほとんどが落葉樹(=広葉樹で、英語では hardwood などという)で、秋から冬の紅葉の時期には誠に美しい景色となって、観光に訪れる外国人をも楽しませるのである。だが、世界でも最大級だった紙パルプ・林産物業界の会社に20年以上も勤務した私は、林産物部門に在籍していた訳ではないが、森林の管理については「門前の小僧的」な知識が付くまでの教育は受けていた。
W社の用語では Managed forest となっているが、森林は常に人手をかけて管理し手入れされているのだった。それは一旦一定の面積の自社の森林の立木(standing timber などというようだ)を全部伐採した跡には、土壌を手入れした後に計画植林で自社で育成した苗木を植えていくのだ。主たる樹種のベイマツ(Douglas firという針葉樹で、英語では softwood という)は成長して伐採するまで50年を要すると聞かされていた。
その森林では一定以上成長したあとで適当に間引きするし、下枝を払って空気、即ち酸素が十分に回るようにと、日光が地面に当たるように管理し調節するのだ。こうすることによって、土壌が豊かになるし強固な地盤が出来るのだ。ベイマツは針葉樹であるから、種が飛んできて自然に生えてしまう広葉樹は当然ながら間引いてしまう。このように管理された森林を横から見ると、上の方にだけ葉がある木が一定の間隔で立っているように見える。この管理の手法はドイツ式で、ドイツからの移民が設立したW社は当然のことながらドイツ式に従っていた。
ここまでのところでお気付きの方があると思うが、こういう森林の管理方式にはかなりの人手と熟練を要する。これ以外にも切り出した材木を搬出するべき林道も完備していなければならないし、輸送手段のトラック(logging truck)も多数準備せねばならない。また、苗木を育成する種苗園は当然ながら完備し整備しておく必要がある。言うまでもないかも知れないが、我が国の山や丘陵のように小規模で急勾配では、このような管理態勢が整えにくいと思う。それに最大の問題点は材木業は利益が挙がるかという事である。
そこに生じたのが、アメリカやカナダ等からの丸太や製材品や合板等の輸入である。話は一寸変わるが、私が1972年に初めてアメリカに渡って広い広い機械化されたトウモロコシの農場を見て「何だ、アメリカでは農業は産業なのだ。そして我が国は言わば家内産業に過ぎないという規模の差がある」と痛感させられた。森林の管理育成にもこれと同じ事が言えるのではないかと思う。
例えば、W社がワシントン州やオレゴン州を中心に所有している山林の面積は600万エーカー(1エーカー=約1,200坪、四国よりも広いのである)と広大で、言わば大量生産であり、物理的にも科学的にも精密に管理・運営されているので、十分に採算が取れていたのだと思っている。故に、当初は我が国に向けて丸太の輸出から始めたのだった。それは1960年台のことで、私は経緯も何も知らないが、輸入の木材に国内の林業が大量生産で低価格の輸入品に押されて衰退していったのだと聞かされていた。
話が遠回りしたようだが、その為に言わば放置された森林というか丘陵地は間引きもされず土壌も育たずにいたので、大量の雨が降れば地盤が水分を含んで緩み、山が立木ごと崩れる事態に立ち至ったのだと考えている。しかし、何時もあの森林を見て思ったことは、あの急勾配な森林の中に入ってアメリカ式に管理するのは容易ではないだろうし、利益の上がらない事業には人手をかけてはいられないだろうと、密かに危惧していた。であるから、あのように頻発する土砂崩れを「人災」とは言えない気がするのだ。
私には我が国の林業を不採算な産業にしてしまったのが何処の誰の責任かなどは解らない。だが、輸入の丸太や製材品等を売り込んだアメリカやカナダにも責任の如きものの一端があるのではないかと言う気がしてならない。別な見方をすれば、産業対家内工業が争えば如何なる事態になるかは明らかだったのだろう。それもこれも国土の面積の差が大きな原因になっていたと言えるとも思う。崩れているのがほとんど太平洋岸であることも象徴的だ。安倍総理、如何に対応されますか。
正直なことを言えば「土砂崩れは非常に残念と言うか、遺憾な状態だった」と痛感していたのだった。あの全国に拡がった膨大な面積の山林の管理というか手入れの状況では、危険だったと思っていたということだ。
何処の何方が言い出したかの記憶が定かではないが、我が国土を外国人に説明する時に「これほど狭い面積でありながら、その70%以上は山乃至は丘陵地帯(英語では mountainous と言えとあったが)であり、住むのに適した(英語では habitable だった)平地は概ね太平洋岸に集中しているので、自然に南側では人口密度が稠密になる。それ以外の北側等は居住には適切とは言いがたいと言え」と聞かされたことがあった。「なるほど。的確な説明であるな」と思った。
その我が国の国土の大部分を占める山岳から丘陵地帯はほとんどが落葉樹(=広葉樹で、英語では hardwood などという)で、秋から冬の紅葉の時期には誠に美しい景色となって、観光に訪れる外国人をも楽しませるのである。だが、世界でも最大級だった紙パルプ・林産物業界の会社に20年以上も勤務した私は、林産物部門に在籍していた訳ではないが、森林の管理については「門前の小僧的」な知識が付くまでの教育は受けていた。
W社の用語では Managed forest となっているが、森林は常に人手をかけて管理し手入れされているのだった。それは一旦一定の面積の自社の森林の立木(standing timber などというようだ)を全部伐採した跡には、土壌を手入れした後に計画植林で自社で育成した苗木を植えていくのだ。主たる樹種のベイマツ(Douglas firという針葉樹で、英語では softwood という)は成長して伐採するまで50年を要すると聞かされていた。
その森林では一定以上成長したあとで適当に間引きするし、下枝を払って空気、即ち酸素が十分に回るようにと、日光が地面に当たるように管理し調節するのだ。こうすることによって、土壌が豊かになるし強固な地盤が出来るのだ。ベイマツは針葉樹であるから、種が飛んできて自然に生えてしまう広葉樹は当然ながら間引いてしまう。このように管理された森林を横から見ると、上の方にだけ葉がある木が一定の間隔で立っているように見える。この管理の手法はドイツ式で、ドイツからの移民が設立したW社は当然のことながらドイツ式に従っていた。
ここまでのところでお気付きの方があると思うが、こういう森林の管理方式にはかなりの人手と熟練を要する。これ以外にも切り出した材木を搬出するべき林道も完備していなければならないし、輸送手段のトラック(logging truck)も多数準備せねばならない。また、苗木を育成する種苗園は当然ながら完備し整備しておく必要がある。言うまでもないかも知れないが、我が国の山や丘陵のように小規模で急勾配では、このような管理態勢が整えにくいと思う。それに最大の問題点は材木業は利益が挙がるかという事である。
そこに生じたのが、アメリカやカナダ等からの丸太や製材品や合板等の輸入である。話は一寸変わるが、私が1972年に初めてアメリカに渡って広い広い機械化されたトウモロコシの農場を見て「何だ、アメリカでは農業は産業なのだ。そして我が国は言わば家内産業に過ぎないという規模の差がある」と痛感させられた。森林の管理育成にもこれと同じ事が言えるのではないかと思う。
例えば、W社がワシントン州やオレゴン州を中心に所有している山林の面積は600万エーカー(1エーカー=約1,200坪、四国よりも広いのである)と広大で、言わば大量生産であり、物理的にも科学的にも精密に管理・運営されているので、十分に採算が取れていたのだと思っている。故に、当初は我が国に向けて丸太の輸出から始めたのだった。それは1960年台のことで、私は経緯も何も知らないが、輸入の木材に国内の林業が大量生産で低価格の輸入品に押されて衰退していったのだと聞かされていた。
話が遠回りしたようだが、その為に言わば放置された森林というか丘陵地は間引きもされず土壌も育たずにいたので、大量の雨が降れば地盤が水分を含んで緩み、山が立木ごと崩れる事態に立ち至ったのだと考えている。しかし、何時もあの森林を見て思ったことは、あの急勾配な森林の中に入ってアメリカ式に管理するのは容易ではないだろうし、利益の上がらない事業には人手をかけてはいられないだろうと、密かに危惧していた。であるから、あのように頻発する土砂崩れを「人災」とは言えない気がするのだ。
私には我が国の林業を不採算な産業にしてしまったのが何処の誰の責任かなどは解らない。だが、輸入の丸太や製材品等を売り込んだアメリカやカナダにも責任の如きものの一端があるのではないかと言う気がしてならない。別な見方をすれば、産業対家内工業が争えば如何なる事態になるかは明らかだったのだろう。それもこれも国土の面積の差が大きな原因になっていたと言えるとも思う。崩れているのがほとんど太平洋岸であることも象徴的だ。安倍総理、如何に対応されますか。