新宿少数民族の声

国際ビジネスに長年携わった経験を活かして世相を論じる。

IR法案が成立

2018-07-21 10:47:07 | コラム
何処となく違和感が:

通常国会が実質的に終わり、野党どもがあの手この手で反対したIR法案が成立したと報じられた。その成立までの過程は兎も角、私には何となく違和感があったのだ。それは、我が国にカジノが適しているか否かや依存症になる人が出てくるかどうかではなく、余程諸外国から来て下さるだろう人を増やす策を講じない限り、自国民の懐から収入を挙げようとしているように見えるからだ。

私は1972年から数えればアメリカを70回以上往復してきたと思うが、その間にラスベガスは在職中には一度も訪れる機会がなかったし、リタイヤー後の1994年2月と2005年2月に行ったことしかなかった。しかも、1994年は言わばアルバイトで出張したのであって、カジノに入ってはみたが、自分の金を使って(失って?)いる暇はほとんどないほど多忙だった。2005年は夢のグランドキャニオンをパック旅行で訪れた後で、LAに入る前に一泊しただけのことだった。

そこで、これまでの2度のラスベガス旅行を比較してみよう。最初の時は「この街は明らかにカジノを目指してくる人たちの為のものだ」という印象で、一流と思われるホテルの宿泊代もその点を考慮したのか経済的に設定されていたし、室内も言ってみれば「愛想なし」だった。また、所謂アメニティー・グッズも行き届いていなかった。市内も治安には配慮されているとの説明だったが、どちらかと言えば「絢爛豪華」にはほど遠い町並みだった。

ところが、2005年には全く異なる印象の豪華な大都会という印象で、11年前とはまるで変わっていたのには寧ろ驚かされた。豪華なホテルの中には多くのヨーロッパのブランド品のブテイックが軒を並べているし、市内にもその種の専門店のような店舗が増えていたのだった。言ってみれば様変わりで、現地に住む日本人のガイドの説明では「この街は最早カジノに依存していない。毎年3,000万人もの観光客が訪れるが、そのうち僅か10%がカジノを目指している」となっていた。

事実、そこには所謂アウトレットが2箇所もあり、そこが目当ての観光客と言うよりも買い物客が著しく増えたのだそうだ。実際には、それらのアウトレットには通常の乗車賃が$2の市内を走っているバスが$5で発行している一日乗車券を利用すれば、効率的に回れる仕組みになっていた。実は、我々もその一日乗車券を大いに利用して市内の観光とアウトレットでの経済的な買い物を楽しんだのだった。

ご存じの方は多いと思うが、ラスベガスはネバダ州の広大な砂漠の中にあるので、施設でも何でも拡張に利用できる土地は幾らでもあるのだ。故に、カジノに依存せずとも買い物と観光で訪れる人たちを誘致する方向に転向したというのか、カジノと買い物の2本立ての街になったのだと、私は解釈した。それほどの変貌振りだったと言いたいのだ。

そこで、我が国のIRだ。何処に作られるのか知らないが、カジノとホテルだけではラスベガス並の3,000万人(注:2005年にガイドから聞いた数字)を誘致するのは容易ならざる業だと思う。それと言うのも、我が国のように利用できる土地の面積が限られていては、カジノ以外に大勢を惹き付ける一大ショッピングセンターやアウトレットや観光名所を設けることが出来るのだろうかと考えてしまう。要するに、RIを訪れる人の何%をカジノ以外に惹き付けられる施設を設けられるのかという疑問である。

私はあの法案を提出するに当たって、何処の何方がラスベガスやアトランティック・シテイーやマカオ等の現状を現地で調査されたのかなと思っている。正直に言って、私はラスベガスでは合計30ドルをスロットマシンに献納しただけで、市内観光とアウトレット巡りを楽しんできた。カジノは別に入場料を負担する訳でもないので、お客様たちがデイーラーたちにここぞという時に限って負けていく状態くらいは見学する時間は取れた。

冗談半分に言えば、御殿場の周辺にカジノを設ければ富士山は近いので観光は出来るし、豪華なプリミアム・アウトレットだってあるではないか。