日米新貿易協議が開始 通商戦争にどう挑むか 対トランプ政権交渉術」の長い題名:
昨10日夜は途中から気が付いて聞き始めたが、幸いにも聞き逃した点はなかったと思う。語り手は細川昌彦中部大学特任教授、片山さつき自民党参議院議員、リチャード・クー野村総研研究員だったが、私の受け止めでは台湾系アメリカ人で神戸育ちとかのクーは両氏に圧倒されていたようだった。
非常に簡単に私が印象深く聞かされて勉強になった点だけをいくつか挙げておこう。先ずは片山議員だが、この番組に出る度ごとに、国会はどうしているのか知らないが、非常に頻繁に海外に出掛けて良く具体的な事情を調査しているし、然るべき要人にも会っていて、提示する統計類も説得力があったと思わせてくれる。細川特任教授はMITI時代の経験だけでものを言っているのではなく、現在でもかなりしっかりした情報源が数多く確保されているなと思わせる発言をする。クー氏の発言はそれらに比べると弱いのではないかとうこと。
順序不同になるが私が興味を持って聞いたのが、トランプ大統領の自動車とその部品の輸入に対して25%の関税をかけると声高に言う戦法に対する細川、片山両氏の見解というか批判だった。私でさえデトロイトはかかる高率の関税を賦課して欲しいなどとトランプ政権に請願していないとは聞いていた。両氏もその点を真っ向から肯定され、トランプ大統領とてもそれを実行するよりも、その言わば脅しにも似た戦法でわが国及び他国に対して他の輸入品目で譲歩を迫るか、例えばわが国に対しては牛肉なり大豆等の輸入を増加させよという材料にする狙いがあると解説された。
そして、両氏の解説では「我が国に対してはその先にあるものが、我が方でも先刻承知の『ならばFTA交渉に応じろ』という件があるのだと言う。そうでないと、例えば現在38%の高率になったままの牛肉の関税はWTOの取り決めがあって、これ単独では引き下げ交渉は許されないのである。これはトランプ大統領がTPPから脱退した以上解っていたことで、そうであれば更にその先にWTO脱退を匂わせるのも見え透いている」となっていた。
この辺りは細川氏の持論とでも言いたいトランプ大統領の常套手段的な手口の読みであり、更に11月までに何とかしない限り中間選挙への影響は免れないだろうとと言われるのだ。トランプ大統領は景気の好調もあって支持率は50%には達しているが、これまではラストベルト向けの手の打ち方に偏重しており、ここから先はファームベルト向けの具体策も講じていかねばならないのであるという指摘だった。
両氏は「また、自動車にしても我が国はアメリカのご意向を有り難く承ってアメリカ生産を増やし、150万人もの人員を採用してきたが、ここから先は単に関税対策で迂闊の現地に従来型の新工場の建設は出来な時代となる。それは言うまでもないことで、電気自動車や自動運転の車が要求される時代が直ぐそこまで来ているのだから」と補足された。私でさえも理解できることだが、トランプ大統領は何処までこういう世の中の変化に追い付いておられるのかと思ってしまう。
ところで、日米新貿易協議だが、細川氏はアメリカUSTRのライトハイザー代表については「アメリカ人の中でもお友達になりたくない人」とアッサリと切って捨てた。理由は「この人は自分たちの要求を一方的に主張するだけで、相手の言い分には耳を貸さないから」だそうだが、私にはアメリカ人に良くある型で「これを言うことで失うものはない」通してくるの種類だと思わせてくれる。
だが、その強硬さのコインの裏側には「トランプ大統領に一切の譲歩も、相手の主張を聞いてくることも許されていないという、お使い奴的な面があるのでは」と疑う。そういう狭い幅の権限した与えら得れていないという点では、ポンペオ国務長官の対DPRK交渉でもその制約があるのではとの感が否めない。
要するに両氏はトランプ大統領はTPPから撤退した以上、FTAに持って行かざるを得ないのだが、それにしたところで、既にTPPが(11ヵ国での批准は終わっていないが)ある以上、それ以上の関税の引き下げは容易ではないのである。従ってトランプ大統領の現在の任期中に方々の国とのFTAの締結には時間的にも無理が生じるのだが、その辺りを読み切ったならば、わが国からも主張すべきは堂々と言っていく必要があると指摘していた。尤もである。
私がこの他に勉強になった点は片山さつき議員が「大統領はアメリカ通商法第232条により、必要に応じて関税を賦課することを発動できる」と指摘した点だった。但し、彼女は「これまでには忘れられていたかのような苔むした条文を持ちだした」と解説した。これにより、私の認識では「関税は何処かの国からの不当廉売により被害を被っている業界から商務省に請願し、時間をかけて綿密な調査を行ってダンピングか当事者国内での輸出品の補助金の交付等によると確認できて初めて課税できる」を飛び越して、トランプ大統領が恣意的にやっておられたのではないと解った次第だ。
何れにせよ、トランプ大統領は今日まで40年間も貿易赤字を垂れ流してきた輸入依存から脱却を図っておられるのは決して誤った方向ではない。だが、その手法には世界の多くの国に不利益をもたらしかねない面があるのは問題ではないかというのが結論的なところだった。私は22年以上も対日輸出に従事してきたが、アメリカがかくも長き貿易赤字を続ける状態を見て「アメリカとは懐が深く世界の輸出国に恩恵を与えているのか」とすら考えていた。
そして、私はその赤字の背景には諸々の産業の空洞化があり、質の低い労働力に対しては強硬な職能別組合に押されて時間給を上げ続けた結果で国外の低賃金の国に生産拠点を移していき、非耐久消費財等の輸入を中国等に依存する形にしたのは彼ら自身の、敢えて英語で言うと“fault”であると信じてきた。トランプ大統領の狙いはアメリカ国民からみれが大変宜しいのだろうが、「アメリカファースト」に徹しすぎるのも問題があるのではないかと思わせる。私流にうんと悪い諺を使えば “After me the deluge”(後は野となれ山となれ)なのかとすら考え込まされるのだ。
昨10日夜は途中から気が付いて聞き始めたが、幸いにも聞き逃した点はなかったと思う。語り手は細川昌彦中部大学特任教授、片山さつき自民党参議院議員、リチャード・クー野村総研研究員だったが、私の受け止めでは台湾系アメリカ人で神戸育ちとかのクーは両氏に圧倒されていたようだった。
非常に簡単に私が印象深く聞かされて勉強になった点だけをいくつか挙げておこう。先ずは片山議員だが、この番組に出る度ごとに、国会はどうしているのか知らないが、非常に頻繁に海外に出掛けて良く具体的な事情を調査しているし、然るべき要人にも会っていて、提示する統計類も説得力があったと思わせてくれる。細川特任教授はMITI時代の経験だけでものを言っているのではなく、現在でもかなりしっかりした情報源が数多く確保されているなと思わせる発言をする。クー氏の発言はそれらに比べると弱いのではないかとうこと。
順序不同になるが私が興味を持って聞いたのが、トランプ大統領の自動車とその部品の輸入に対して25%の関税をかけると声高に言う戦法に対する細川、片山両氏の見解というか批判だった。私でさえデトロイトはかかる高率の関税を賦課して欲しいなどとトランプ政権に請願していないとは聞いていた。両氏もその点を真っ向から肯定され、トランプ大統領とてもそれを実行するよりも、その言わば脅しにも似た戦法でわが国及び他国に対して他の輸入品目で譲歩を迫るか、例えばわが国に対しては牛肉なり大豆等の輸入を増加させよという材料にする狙いがあると解説された。
そして、両氏の解説では「我が国に対してはその先にあるものが、我が方でも先刻承知の『ならばFTA交渉に応じろ』という件があるのだと言う。そうでないと、例えば現在38%の高率になったままの牛肉の関税はWTOの取り決めがあって、これ単独では引き下げ交渉は許されないのである。これはトランプ大統領がTPPから脱退した以上解っていたことで、そうであれば更にその先にWTO脱退を匂わせるのも見え透いている」となっていた。
この辺りは細川氏の持論とでも言いたいトランプ大統領の常套手段的な手口の読みであり、更に11月までに何とかしない限り中間選挙への影響は免れないだろうとと言われるのだ。トランプ大統領は景気の好調もあって支持率は50%には達しているが、これまではラストベルト向けの手の打ち方に偏重しており、ここから先はファームベルト向けの具体策も講じていかねばならないのであるという指摘だった。
両氏は「また、自動車にしても我が国はアメリカのご意向を有り難く承ってアメリカ生産を増やし、150万人もの人員を採用してきたが、ここから先は単に関税対策で迂闊の現地に従来型の新工場の建設は出来な時代となる。それは言うまでもないことで、電気自動車や自動運転の車が要求される時代が直ぐそこまで来ているのだから」と補足された。私でさえも理解できることだが、トランプ大統領は何処までこういう世の中の変化に追い付いておられるのかと思ってしまう。
ところで、日米新貿易協議だが、細川氏はアメリカUSTRのライトハイザー代表については「アメリカ人の中でもお友達になりたくない人」とアッサリと切って捨てた。理由は「この人は自分たちの要求を一方的に主張するだけで、相手の言い分には耳を貸さないから」だそうだが、私にはアメリカ人に良くある型で「これを言うことで失うものはない」通してくるの種類だと思わせてくれる。
だが、その強硬さのコインの裏側には「トランプ大統領に一切の譲歩も、相手の主張を聞いてくることも許されていないという、お使い奴的な面があるのでは」と疑う。そういう狭い幅の権限した与えら得れていないという点では、ポンペオ国務長官の対DPRK交渉でもその制約があるのではとの感が否めない。
要するに両氏はトランプ大統領はTPPから撤退した以上、FTAに持って行かざるを得ないのだが、それにしたところで、既にTPPが(11ヵ国での批准は終わっていないが)ある以上、それ以上の関税の引き下げは容易ではないのである。従ってトランプ大統領の現在の任期中に方々の国とのFTAの締結には時間的にも無理が生じるのだが、その辺りを読み切ったならば、わが国からも主張すべきは堂々と言っていく必要があると指摘していた。尤もである。
私がこの他に勉強になった点は片山さつき議員が「大統領はアメリカ通商法第232条により、必要に応じて関税を賦課することを発動できる」と指摘した点だった。但し、彼女は「これまでには忘れられていたかのような苔むした条文を持ちだした」と解説した。これにより、私の認識では「関税は何処かの国からの不当廉売により被害を被っている業界から商務省に請願し、時間をかけて綿密な調査を行ってダンピングか当事者国内での輸出品の補助金の交付等によると確認できて初めて課税できる」を飛び越して、トランプ大統領が恣意的にやっておられたのではないと解った次第だ。
何れにせよ、トランプ大統領は今日まで40年間も貿易赤字を垂れ流してきた輸入依存から脱却を図っておられるのは決して誤った方向ではない。だが、その手法には世界の多くの国に不利益をもたらしかねない面があるのは問題ではないかというのが結論的なところだった。私は22年以上も対日輸出に従事してきたが、アメリカがかくも長き貿易赤字を続ける状態を見て「アメリカとは懐が深く世界の輸出国に恩恵を与えているのか」とすら考えていた。
そして、私はその赤字の背景には諸々の産業の空洞化があり、質の低い労働力に対しては強硬な職能別組合に押されて時間給を上げ続けた結果で国外の低賃金の国に生産拠点を移していき、非耐久消費財等の輸入を中国等に依存する形にしたのは彼ら自身の、敢えて英語で言うと“fault”であると信じてきた。トランプ大統領の狙いはアメリカ国民からみれが大変宜しいのだろうが、「アメリカファースト」に徹しすぎるのも問題があるのではないかと思わせる。私流にうんと悪い諺を使えば “After me the deluge”(後は野となれ山となれ)なのかとすら考え込まされるのだ。