新宿少数民族の声

国際ビジネスに長年携わった経験を活かして世相を論じる。

旅先での簡単な英会話 #4

2022-06-01 08:43:26 | コラム
「旅先での簡単な英会話」の補足:

大変有り難い事に、この会話集を2017年に3回ほど連載したものを未だに読んで下さる方がおられると知り得たのだった。中でも#3が目立っているので、今回は思いつくままに「これを知っていると便利だ」と思う表現を取り上げて補足してみようと思う。なお、#3もそのまま再録しておくようにしよう。

“Business or pleasure?”
解説)これは(敢えて「アメリカに」とするが)目的地に到着して最初に出会う会話が入管(passport controlなどとも言うが》でのこの質問だ。これを現地の係官に早口で言われれば「何の事?」と戸惑ってしまうのだ。

簡単に言えば「仕事か遊びか?」なのだが、私が経験した限りでは旅行社は「“Sightseeing.”と言いなさい」と教えていた。ところが、入館の係員たちは“Sightseeing?“とは尋ねてこないので困るのだ。勿論”Sightseeing.“で通じるのだが、私はこのような日本式の英会話を教え込む事に少し疑問を感じている。

“Cash or charge?”
解説)「何とかpay」が普及してからアメリカに行っていないので、今でもこう尋ねられるかどうか確認できていないが、アメリカで買い物をするか食事をしたときに「現金かクレデイット・カード払いか?」と、こう言って訊いてくるのだ。こう訊かれると、トラベラーズチェックで払おうと思っていた方は戸惑う事もあるが、あれは現金と一緒だ。これほどアメリカ人たちはどんな少額でも躊躇う事なく“Charge.”と言うのだ。

尤も、彼らは安全の為もあって、通常はtipや駐車場の料金の支払いの為の程度の僅かな現金しか持っていないのだ。私もこれに倣って、精々$10程度のcashしかポケットに入れていなかった。ところが、治安が良い日本から来られた方は躊躇わずに衆人環視の中で現金払いにして、貰った釣り銭を財布に戻して見せてしまうのだ。彼らは「信じられない」と言う。それは「泥棒に現金を持っていると通告するのと同じような危険性があるから」なのだと教えられた。

“May I just take a look around?”
解説)買い物に関しての表現。アメリカの店主や店員たちは、ただ黙って入ってきて見るだけで何も買わない冷やかしのお客を嫌う傾向があると思っていて良いだろう。そこで、店に入ったときに「見て回って良いですか」と、こう丁寧に言って断っておく必要がある。“May I?”とまで言っておけば、まさか“No.“とは言わないだろう。その代わりに”Let me take a look first.“でも良いと思う。

私の経験では確かAtlantaだったと記憶するが、こう断って入った靴屋で暫く見て回って悩んでいたら、店主と思しき者に「もう好い加減に買ったらどうだ」と凄まれたのだった。「アメリカでは冷やかしは何とか通用するが、ドイツでは駄目だ」と聞かされていたので、95年に生まれて初めてデユッセルドルフとケルンに仕事で出掛けたときには、店に入るのを躊躇っていた。だが、勇気を出して入ったルイビトンでは結局買わずに出てしまったが苦情は来なかった。

「パンケーキを。少なめで」:
解説)アメリカの食べ物は我々にとっては異常かと思えるほど量が多いものだ。パンケーキもその例外たり得ない。私は正直なところ、これとホットケーキの何処が違うのを寡聞にして知らない。これも朝食のメニューにあるので、注文される方が多かったと思う。ところが、実際に現れるパンケーキは「まさか」と思うほど量が多いだけではなく、20~30 cmもあるかと思うほど多くの枚数が積み重ねられていた。

そこで、手を付けるのを躊躇っていると、同席した上司が次からは「ショート・スタック(=”short stack)と言えば良いのだ」と教えてくれた。次の機会には”I’d like to have pancakes. Short stack.”と言ってみると、およそ半分と思える量のものが出てきて難なく消化出来た。そこで私はこれを「半分で良い」という意味だと勝手に解釈してきた。しかし、後年(リタイヤー後に)何気なく検索してみると「通常は3枚重ねのところを2枚にすること」と出てきた。

この量のことだが、悩まされたことも多かったが、時には悪戯にも使ったものだった。その一つに私が好んで注文していた”steamed clams”があった。これは我が国の「アサリの酒蒸し」と同じような料理と考えていて誤りではないかも知れないが、アメリカではただ単に蒸しただけのようだ。これはシアトル辺りの”sea food”が美味い地域では、人の手が加わった料理ではないので美味であり、遠来のお客様にもお勧めしたものだった。

ところがこれには問題があって、余りに量が多く、前菜として注文するとそれだけで満腹になってしまうのだった。そこで、私は時には所謂「メイン・デイッシュ」として注文することもあったほど多いのだ。わがままを言われて悩まされたお客様を悩まそうとお薦めして、食べきれずに苦悩されるところを見て密かに気分を良くしていたこともあった。この場合は”I want a half size.”とでも言えば良いと思う。

「これが私のクレデイット・カード」:
解説)これはホテルでチェックインする際に必要な行動の台詞。ご存じの方は多いと思うが、アメリカの(他の地域でもそうすることが多いと思うが)ホテルでは先ずクレデイット・カードを提示してカードの番号を記録させる。これは「性悪説」を信奉する国ならではの習慣で、こうすることで「泊まり逃げ防止」とでも言おうか、宿泊料金の回収の手段を確保するのだ。提示で出来ないカードを持っていない人か、提示を拒否する人からは宿泊料金を超えるような額の”deposit”(=保証金)を取り立てる。

因みに、アメリカではカードを持っていない、即ち、銀行やカード会社が発行しないことを「経済的に信用がない人物」と見做すのである。

1980年代だったか、初めて海外出張をされる地方の工場の技術者数名をカリフォルニア州の工場にご案内することになり、事前にご説明に上がり何が何でもクレデイット・カードだけはお持ち頂くことをお願いした。私はシカゴに用事があったので、後日カリフォルニア州のホテルを本社から予約しておくので、そこで合流することで別れた。

ところが、実際にホテルで合流すると全員が憤慨しておられた「御社は非常に失礼なホテルを予約してくれたではないか」と言って。不審に思って確認すると、全員が未だクレデイット・カードを取得されたことがなく、今回も現金だけを持ってこられたのだった。

その為に、ホテルは当然のこととして高額な?保証金を要求したのだったが、全員はそれを自分たちが不逞の輩と見做されたのだと解釈して、我が社を非難しておられたのだった。この辺りは、私からあらためてアメリカの文化を解説して差し上げてと納得頂いたのだった。クレデイット・カードを取得されない理由は「俺は借金をするのを潔しとしないからだ」と力説された。参った。

なお、クレデイット・カードだが、A、M、V、Dだのと数多く種類があるが、ホテル等の受ける側では手数料の高いカードを嫌う場合がある。とは言っても拒否するという意味ではない、念の為。一度、私はあるホテルでA、D、Mとチェックインの際に並べて試したところ、最初の2枚を「ノーサンキュウ」と言って笑いながら返してきた。

 因みに、「カードでとってくれますか」乃至は「カード払いで良いか」と言う時には、”Do you honor credit card?”と言う。”Do you take credit card?”では”Yes, I do.”と言ってカードを取られてしまう結果になりかねないので要注意だ。掲題は”Here’s my card.”で良いだろう。