100円のコスト上昇の売価への転嫁は44円:
帝国データバンクが6月3日から6日までの間に実施した「価格転嫁」への調査では「自社の主な商品・サービスにおいて、仕入れコストの上昇を販売価格やサービス料金にどの程度まで転嫁できているか」を尋ねたのだった。
その結果では「多少なりとも価格に転嫁できている」企業は73.3%に達していた。しかし、内訳を見ると、仕入れコストの上昇分に対し「全て転嫁できている」は6.4%に止まっていた。続いて「8割以上できている」企業は15.3%、「5割以上8割未満まで出来ている」企業は17.7%、となった。一方では「全く転嫁できていない」企業も15.3%に上る。
総じて見ると、価格転嫁をしたと考えている企業で、コストの上昇分に対する販売価格への転嫁の割合を示す「価格転嫁率」は44.3%と半分以下に止まっている。これでは仕入れコストが100円上昇した場合は、そのうち44.3円しか販売価格に反映できていなかったことを示している。
一部の企業からは「零細企業の為仕入れ価格の上昇分を販売価格に100%転嫁しなければ経営を維持できない。今後も上昇分は販売価格に転嫁していく」(家具・建具卸売)と言った声が聞かれる一方、「何とか値上げしたいが、取引先の了解を得られない」(梱包)や「価格交渉を進めたいが、他社との競合もあり困難な状況」(印刷)などと厳しい声も上がっている。
上記の調査の背景には、「新型コロナウイルスやロシアによるウクライナ侵攻などの情勢を背景にした原材料費の高騰に加え、極端な円安の進行などの様々な要因で仕入れコストが上昇している。経済産業省はこうした状況に鑑み、下請け企業がコスト上昇分を取引価格に転嫁しやすいようにする為に、5月24日に開いた中小企業政策審議会の専門委員会に「下請け中小企業振興法」の基準改定案を示したこと」があった。
私には上記の零細企業の声の中で「何とか値上げしたいが、取引先の了解を得られない」(梱包)や「価格交渉を進めたいが、他社との競合もあり困難な状況」(印刷)辺りが、我が国独得の二重三重の下請け構造の下にある業者が何時までも直面している困難な状況を表していると思って読んだ。デイビッド・アトキンソン氏ではないが、我が国の会社の99%が中小業者である以上、ここすとjyの問題点がここにも現れているのだろうと考えさせられた。
参考資料:紙業タイムス社刊 Future誌 22年6月27日号