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村山聖よ永遠なれ!

2017年02月28日 | 読書

村山聖(さとし)、1969年(昭和44年)広島県府中町に生まれる。1998年(平成10年)8月、29歳、膀胱癌が肝臓に移転し逝去。

幼い頃に腎臓病(ネフローゼ症候群)という難病に罹患するものの、脅威の集中力と負けず魂で幾度となく入退院を繰り返すも、1982年13歳の中学生で奨励会合格。そして、なんと!谷川浩司、羽生善治を凌ぐ2年11ヶ月のスピードで奨励会を勝ち上がり、1986年17歳の若さでプロデビュー(4段)。この間、何度も村山聖は入退院を繰り返しているの、に、だ!その風貌とその言動とその生活とその棋風から怪童と呼ばれ、名人に挑戦する権利を有する将棋界トップA級まで登り詰めた村山聖9段の短くて熱すぎる29年間を大崎善生が綴るノンフィクションの傑作。

私はこの本で「棋士・村山聖」の存在を初めて知った。
涙ながらに読み終えて、動く村山聖を見たいと思って平成10年2月28日の羽生善治とのNHK杯決勝の動画を見た。村山が亡くなる半年前だ。その時、村山は癌の再発を医師から告げられている。そんな中での対局。グレーのスーツに紺のネクタイ姿の村山は頭で描いていたほどむさくるしくもなく、病魔の進行もうかがわせない落ち着いた堂々とした佇まい。その風格に驚く。結果は敗戦寸前まで追い詰められていた当時4冠の羽生が村山の信じられない一手で息を吹き替えし勝利。その後、村山は最後の命の炎を燃やすように5連勝を飾るのだった。その後も8月に亡くなるまで4月3局、6月2局戦っている。

病気と闘い続け、相手棋士と戦い続けた29年。神様はなんという試練を村山少年に与えたんだろうと思う。あまりにもむごい。でも生きる勇気をもらった。本当にこの本を読んで良かった。しばらく将棋番組を見ることはなかったが、今度から見てみようと思う。村山聖の同世代、谷川浩司と羽生善治の活躍と後輩たちの活躍を。そう言えば村山はITには縁遠い人間だったという。昨今の将棋界の騒動を村山はどう思っているのだろう・・・