主人公の永田一雄は妻との間が冷え切って、中学生の息子も家庭内暴力をふるうようになり、死を考え始めていた。そして厳格だった父に死期が迫っていた。そんな一雄はある晩、ワインカラーのオデッセイに誘われるまま乗せられる。運転手は橋本さん、助手席には息子の健太君。5年前に交通事故で亡くなって成仏できない二人は、大きな後悔を背負って生きている人々を車に乗せて人生の分岐点まで連れて行くのだった。若い頃の父親も登場し、一雄は人生のやり直しを模索する。
父と子、夫と妻、何気ない言葉・態度がその関係性をつなげたり、切ったりする。人生はやり直しがきかない。実に悲しい、切ない物語。でも、一縷の光が見える終わり方にほっとした。重松清の人生を紡ぐ物語は奥が深い。
重松清からあなたへのメッセージ
「あなたが魔法を信じるのなら、もしかしたら、橋本さんたちに出会うかもしれない。サイテーの現実にうんざりして、もう死んだっていいやって思っているとき、不意に目の前にワインカラーのオデッセイが現れたら、それが橋本さんの車だ。乗り込めばいい。あなたにとって大切な場所に連れていってもらえばいい。」