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母校・盛岡一高や岩手のスポーツ情報、読書感想、盛岡風景などをお伝えします。

当時私は小学2年生

2017年04月21日 | 読書

時は昭和39年夏、10月に開催される東京五輪を前に大会妨害を企てる男がいた。
男の名前は島崎国男。秋田出身の東大大学院生。
父違いの兄が出稼ぎ先で急死したことで、五輪景気に沸く大都会東京と貧困にあえぐ古里との落差に島崎の心は乱れる。そして、警察は島崎の周囲の人間を取り込みながら島崎にジワリジワリと接近する。当時の日本の世相を織り込みながら話は進む。

島崎の動き、島崎の周囲の動き、警察の動きが年月日入りで同時進行だったり、前後したりして進む。複眼的な進行が物語の奥行きを拡げ、スケールをより大きなものにしている。大都会の喧騒、浮かれる姿と東北の片田舎の深く沈む姿がなんともいえない昭和39年の日本を表現している。当時小学2年生だった私の心が揺れた。サスペンスというよりも「ノスタルジック小説」と呼ぶべきかもしれない。言うまでもなく吉川英治文学賞受賞の傑作!!!下巻が楽しみである。