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落日燃ゆー城山三郎

2020年04月01日 | 読書

評価5

東京裁判で絞首刑となったA級戦犯7人で唯一の文官であった元総理、外務大臣・広田弘毅の生涯を綴った名作。持論の協和外交に努めながら、その努力を妨害し続けた軍人と共に処刑されるという運命を迎えた広田は一切の弁解をせず死を受け入れる。「物来順応」「自ら計らわぬ」の言葉が重い。

極東軍事裁判(東京裁判)の場で、一切の弁明を断って、国を代表する者としての責任を死をもって果たした広田。保身ゆえに見苦しい姿をさらす軍人たちとの人間性の違いに驚いた。10万人を超す減刑嘆願の署名が集まり、当時の吉田首相がGHQへ減刑の直談判をしたことは当然のことである。

広田弘毅の実像を初めて知った。東京裁判の理不尽さを改めて感じた。あの時代のことをもっと知りたいと思った。

統帥権問題にからんで「長州の作った憲法が日本を滅ぼす」とのフレーズが何度も出て来る。「長州出身の首相が日本を滅ぼす」ことにならないようにとの思いがよぎった私であった。