8月4日 キャッチ!
中国 杭州にある信用取引のサービスを提供するインターネット金融仲介会社。
株価がまだ急な上昇を続けていた今年5月
個人投資家からの問い合わせが殺到していた。
この時期 この会社は顧客に対し
最大で保証金の4倍を融資して株取引をさせていた。
中国当局の監督を受ける証券会社の信用取引に比べ
貸し付けを受けるための条件はほとんどなく
より高額な融資を受けられるとして顧客が急拡大した。
(インターネット金融仲介会社 柳陽CEO)
「(5月当時)いまは相場が良いので借りる人がとても多く
貸すためのお金が足りない状況です。」
しかし6月中旬 株価が急激な下落を始めると顧客は損失を抱え
保有する株式を売らざるを得なくなった。
この会社では6月から7月にかけて約3割の顧客が株式を売却したと言う。
こうした動きが投資家の間に広がり株価の下落が加速した。
上海のテレビでは地元の個人投資家への影響を特集。
投資家たちが受けた経済的な損失は少なくない。
株価の下落で個人投資家1人平均で40万人民元(約800万円)の損失が出たなどという調査結果を伝えている。
高額な消費分野での影響も出ている。
上海のこの不動産業者では契約のキャンセルなどが相次いだと言う。
(不動産会社 担当者)
「株価下落のため6月下旬~7月の住宅販売件数は少なかったです。
購入予定の人がキャンセルしているので影響は大きいです。」
7月中旬 中国当局はこれまで当局の監督を受けずにグレイゾーンとされてきたこうした取引を厳しく規制すると発表。
杭州のインターネット仲介会社もサービスを停止した。
去年から10か月ほどの間に
のべ15万人の顧客に貸し出した金額は約1,000億円にのぼったと言う。
(インターネット金融仲介会社 柳陽CEO)
「今回停止した業務はわが社の業務の大半を占める主力の事業で
会社への影響はとても大きいです。」
中国当局も証券取引の規制に乗り出したが
株価急落への対応は
なりふり構わないとまで形容された。
中国当局は
国有企業や上場企業などの大株主に対して株式売却を制限したほか
政府系金融機関などを通じて直接株式の買い支えを行った。
上海の個人投資家からは一定の評価を得ているが
中国の株式市場に投資する海外の投資家などからは厳しい意見も寄せられている。
個人投資家たちが集まることで有名な上海中心部の広場。
株価の大幅な下落を経験した後も週末になると大勢の人が集まって今後の相場の動向を議論している。
強気の声ばかりが聞こえたこれまでと違って
慎重な見方や当局の下支え策を頼りにする弱気な声も聞かれる。
(個人投資家)
「これまでの利益はすべてなくなりこの10年間ははかない夢のようでした。
夢から覚めたら身動きが取れなくなっていました。」
「政府による下支え策がなければ社会は動揺するので仕方ないです。」
一方 中国以外の市場関係者からは中国当局の対策に疑問の声も出ている。
日本の資産運用会社 三井住友アセットマネジメント上海事務局。
この会社では中国株に投資して資金を運用する信託商品を販売してきた。
市場での自由な取引を制限する中国当局の今回の対応
所長の矢野裕久さんは驚きを隠せなかったと言う。
(上海事務局 矢野裕久局長)
「経営陣に株を売却しないよう指導することは
先進国の株式市場ではほとんど無い。
非常にまれな例だったと思っている。」
株価下落の影響を避けるため
上場企業の約半数が市場での売買を停止する事態にまでなった。
この影響で中国株を組み込んだ投資信託商品について
一定の期間 購入や解約を停止せざるを得なかった。
海外の主要な株式市場では考えられない事態が起こった中国市場。
世界第2位の経済規模を持つ中国の魅力は感じつつも
矢野さんは戸惑いを感じている。
(上海事務局 矢野裕久局長)
「中国の成長率と
今回のような市場のリスク要因を見極めながら投資判断する必要がある。」
海外の投資家からは
市場のメカニズムを無視していると批判の声が上がっている。
中国はこのところ株式市場の対外的な開放を徐々に進めてきていただけに
逆行するような今回の対応に多くの市場関係者が
やはり中国は特殊な市場だと改めて強く認識する形となった。
この影響から
最近 上海市場に流れ込む外国人投資家の資金は減少しているとも言われる。
上海市場の株価は6月のピーク時と比べると30%近く下落しているが
それでも1年前と比べると60%以上高く
まだ高い水準ではないかという指摘もある。
国外からの批判はあるものの
いま下支え策を緩める姿勢を見せれば国内の投資家にさらに不安が広がり
株価の急激な下落に再び陥る可能性もある。
社会の安定を重視する中国当局としてはしばらくはかじ取りの難しい状況が続く。