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シンガポール 歴史的建造物を残そう

2015-08-29 07:15:00 | 報道/ニュース

8月25日 キャッチ!


8月 シンガポールは建国50周年を迎えた。
世界有数の金融センターとして
また多くの物流を担う貿易港として急速な経済発展を続けてきたシンガポール。
1人当たりのGDP 国内総生産は世界第9位 50,000ドルを超える豊かな国のひとつである。
しかし経済発展の陰ではシンガポールの昔ながらの景観が開発によって失われてきている。

シンガポール北部の住宅地。
高層住宅のすぐ隣に目を転じると懐かしい景色が広がっている。
南国を思わせるヤシの木やでこぼこの道路。
その周りにいまではあまり見られなくなったトタン屋根の一軒家が並んでいる。
マレー語で村の意味を持つカンポンと呼ばれる集落。
サッカー場ほどの広さの土地に25世帯が暮らし
昔ながらの生活様式を守り続けている。
ここはいま観光客の間でひそかな人気スポットとなっている。
(ドイツ人観光客)
「昔のシンガポールがあると聞いた。
 こんなところがあるとは思わなかった。」
地元の人にとっても今や珍しいようである。
(地元住民)
「シンガポールではこうした地区が消えようとしている。
 かつてのシンガポールがどんな場所だったか娘にも伝えたい。」
シンガポールがまだマレーシアの一部だった60年ほど前に地主のスンさんの父親が土地を購入。
地元の人に貸し与えたことによって集落がつくられた。
親子2代で土地を守り抜いてきた。
(カンポン地主 スン・ムイホンさん)
「ここはとても自由よ。
 好きなものを育て訪問者と自由に会話できる。
 とても素晴らしいわ。」
このような集落はかつてシンガポール全土に広がっていた。
しかし政府が土地を収用するのに有利な法律が制定されたことなどから
1960年代後半以降 公共住宅の開発が急速に進められる。
住宅価格も低く設定されたことなどから国民の大半に一気に普及していった。
シンガポールに残る最後のカンポンにも開発の足音が近づいている。
スンさんたちのクラス集落でも去年から周辺の雑木林が伐採され
住宅の建設が始まった。
スンさんはいま地域の外の若い人に集落存続の希望を託そうとしている。
自宅の一部を開放して普段の生活ぶりを紹介している。
(観光客)
「ここは車の騒音がなく
 聞こえるのは鶏や犬の鳴き声くらい。
 街なかよりも自然が豊かなこの集落の方が好き。」
(カンポン地主 スン・ムイホンさん)
「訪問者が集落を残すべきだと思えば政府に働きかけてくれるでしょう。」
こうした伝統を記録に残す取り組みも始まっている。
シンガポールが独立した年に生まれたジェローム・リムさん。
カンポンのような昔ながらの建物や風景を写真に収めている。
これまでに撮影したのは国内の100か所以上。
子どもの頃の思い出の場所が次々と消えていくことに危機感を覚えたのがきっかけだった。
撮影した写真はインターネット上に掲載することで大きな反響が寄せられた。
(ジェローム・リムさん)
「シンガポールは変化のスピードが穂あの国に比べてあまりにも早いため
 昔のシンガポールを求める人々の思いは年々強まっています。」
ジェロームさんはいまネット上で知り合った仲間と
歴史的な建物を散策するツアーを行っている。
この日はさまざまな世代の15人が集まった。
訪れたのはシンガポールが独立するはるか前の1892年に建てられた歴史的建造物。
現在は保育園として利用されている。
赤道直下に位置するシンガポール。
エアコンがなかった時代に涼しさを得られるよう広い間口が設けられている。
また熱気がこもる天井近くには風が通り抜ける工夫がなされている。
ジェロームさんのこだわりは
気づかれることのないこうした先人たちの知恵をあらためて紹介することである。
(ツアー参加者)
「物事は変化しているので過去を知る必要があります。
 今を生きる私たちは過去との絆を求めているんです。」
(ジェローム・リムさん)
「歴史的なものの保存こそが私たちの足跡を知る手がかりです。」

シンガポールでも最近は歴史や伝統により重きを置くようになっている。
90年代に入ってからは文化的な遺産を後世に伝える国の機関が設置された。
ここでは貴重な建物が残る9つの地区を歴史を伝える散策路に指定し
学校教育にも生かすなど
歴史や伝統を保全してさらに生かす取り組みが進められている。
シンガポールはこれまで経済成長を最優先に進めてきたが
建国当時からの発展を知る多くの世代が高齢者となった。
また外国人の人口が全体の40㌫にまで増え
国家や国民のアイデンティティーが問われるようになってきたこともこうした分野に重きを置く要因の一つとなっている。
ただ現実問題としてシンガポールの国土は狭く
開発が可能な土地が少ないのが現状である。
開発が保護かをめぐる厳しい取捨選択は引き続き行われることになり
ペースが鈍りつつある経済成長を維持しながらシンガポールらしさを守ることができるかが課題となっている。




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