8月23日 編集手帳
かつて、
ベルギーは中立を宣言し、
外交で平和を維持できると考えた。
他国の「善意」に依拠したのだ。
結果、
2度の世界大戦でドイツの侵略を許した。
戦後、
ベルギーはこれを教訓に、
集団的自衛権行使に重きを置く自国防衛に転 じた。
国際政治学者の細谷雄一氏の論文に詳しい。
「1%でも善意に頼れない国があれば、
私たちの安全は破壊される」と、
細谷氏は小紙で語っている。
70年前の8月、
日本も同様の経験をした。
ソ連の満州(現中国東北部)などへの侵攻だ。
中立条約を守るという善意がソ連になく、
多くの日本人が犠牲になった。
今、
安全保障関連法案に対し、
「中国や北朝鮮が日本を攻撃するはずがない」との批判がある。
両国にも善意が通じる人は少なからずいようが、
北朝鮮独裁政治の動向は予測困難だ。
戦闘機を自衛隊機に異常接近させた中国軍人もいる。
<地獄は善意の敷石で敷き詰められている>。
欧州のことわざで、
『世界ことわざ大事典』には「悪人の中には善意の行為を主張するやからが多い」との解説もある。
確率1%でも悪意への備えを怠らないことが、
安全保障の肝である。