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“エビ大国”タイ~養殖復興の道は

2016-09-03 11:30:00 | 報道/ニュース

8月25日 キャッチ!


エビ大国 タイ。
数年前までは
日本でもおなじみのバナメイエビやブラックタイガーなど年間50万トンを生産し
世界最大のエビ輸出国だった。
しかし廃業になり放置された養殖場が各地に点在している。
原因となったのは
エビの内蔵を腐らせ突然死させる
EMS(早期死亡症候群)と呼ばれる謎の病気である。
2011年ごろから東南アジアなどの養殖場にまん延した。
タイ中部でバナメイエビの小食を営むデチヤ・バンルーデーさんも大きな打撃を受けた。
一時は生産量が90%減少したという。
隣で養殖をしていた友人はあきらめて廃業してしまった。
(養殖業者 デチヤ・バンルーデーさん)
「何度も感染しましたが打つ手がなかったのです。」
タイのエビ生産量は一昨年にはそれまでの半分以下に落ち込んだ。
この危機にどう対処するのか
世界の科学者たちが調査に乗り出した。
対策を話し合うためタイの首都バンコクで開かれた国際会議に出席した
東京海洋大学 廣野育生教授。
問題の解決はタイだけでなく日本にとっても重要だと廣野教授は考えている。
(東京海洋大学 廣野育生教授)
「タイからの水産物輸入は常に日本のトップ5に入る。
 1人でやるよりたくさんでやった方が解決の道は広がっていく。」
原因をつきとめるため
日本とタイの共同研究が2011年から始まった。
病気の感染に腸炎ビブリオ菌が関係していることはすでに分かっていたが
自然界にごく普通に存在する腸炎ビブリオ菌を
養殖現場からなくすことは困難である。
そこで病気が発生したふ化場や養殖場から水やエビのサンプルを集め
菌の特徴を丹念に調べた。
その結果 新たな遺伝子配列が見つかった。
この特殊な遺伝子配列を持った腸炎ビブリオ菌だけが病気の原因となり
稚エビやエサの取引を通じ次々に広がていったのである。
研究グループは装置を使って病原菌の有無を調べる方法を開発。
各地の水産試験場を通じて普及に務めている。
(現地研究者)
「装置を使うと業者も助かります。」
病原菌を検出する手段ができたことで
タイのエビ養殖は少しずつ立ち直ろうとしている。
商品の稚エビが感染し全く売れなくなってしまったというふ化場。
水槽などをすべて消毒して事業を再開してからは
サンプルを定期的に試験場に送り
病気が発生していないか目を光らせている。
さらに水質や塩分濃度にも気を配り
エビが健康に育つ環境を整えることにした。
その結果
(ふ化場オーナー)
「稚エビの生存率が高まり
 売り上げは過去最高で収入も2倍になりました。」
一時は生産量が90%減ったという養殖業者のデチャさんも
新しい養殖のあり方を模索している。
エサのやりすぎや過密な環境を見直し
水の浄化装置も導入した。
また抗生物質を使うのはやめ
自然に近い方法で育てるようにしたところ
生産量は増加に転じたという。
(養殖業者 デチヤ・バンルーデーさん)
「病気を克服して
 エビ養殖の未来が開かれました。
 世界の人々に安全なエビを食べてもらいたい。」
(東京海洋大学 廣野育生教授)
「私たちは安心安全に食べれるようになるし
 タイで養殖したものは環境に被害を与えずに生産性がよくなり
 お互いにハッピーな養殖産業に向かっていっている。」

バナメイエビなどのエビの卸売価格は
病気がピークだった2013~2014年ごろにはほぼ2倍に高騰した。
日本でも冷凍エビの値段が上がったり
品薄のために外食チェーンで一部のメニューが取りやめになったり
影響が出た。
今現在は価格は下がってきている。
病気の原因が特定されて対策が進んだことが一因である。
ただ別の要因もある。
インドやインドネシアなどの生産量が増えて
新たな輸出国として台頭してきたのである。
従来のエビ輸出国タイの養殖業の回復はまだ一部にとどまっているのが現状である。
病原菌の対策ができて感染の拡大は防げるようになった。
タイ政府も検査を無料で受けられるようにしたり
水質管理の指導をしたりして養殖業者を支援している。
ただ治療薬などの抜本的な解決策はまだ無い。
また病原菌の発生を抑えるために養殖のやり方を変える動きもあるが
そのための大きな設備投資が出来るのは
基礎体力がある一部の業者が中心である。
零細な養殖業者の場合は
一度打撃を受けるとなかなか立ち直ることができないのが現状である。
放置された養殖場が復活する見通しはまだ立っていない。
日本とタイの共同研究は
タイで持続可能な養殖業を育てて安定的な食資源を得るために
日本政府の支援で始まったものである。
エビが健康の育つ環境を整えた結果
生産量が上がって収入までアップしたというのも大切なポイントである。
少しでもたくさん生産しようとしてエビとエサをたくさん入れ
抗生物質も使う方法が
病気の異常なまでのまん延を招いたとも言え
それでは長続きしないことが理解されつつある。
日本で安心安全なエビが食べられるようにするためにも
持続可能な東南アジアでの取り組みを
これからも責任を持って支援していく必要がある。
2014年をピークにタイ国内でもエビが値上がりした。
タイで生産されたエビは9割が輸出用である。
1割がタイ国内で食べられているが
もともとエビは高めの食材なので
一般の人にとってはエビの値上がりはあまり大きな問題とは思われていなかった。
日本でエビがtごろな値段で食べられるのは
タイの人たちの地道な努力のおかげである。




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