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親のゆめ つぎつぎ消して子は育つ

2016-09-04 11:30:00 | 編集手帳

8月26日 編集手帳

 

 『青い山脈』や『長崎の鐘』などで知られる歌手の藤山一郎さんは少年の頃、
勉強が苦手だったらしい。
慶応普通部を卒業するときの成績は52人中51番 だったと、
文芸春秋編『あの人/この人/いい話』(文春文庫)にある。

ちなみに52番が「芸術は爆発だ!」の岡本太郎さんであったという。
かろうじてビリ をまぬかれた藤山さんは東京音楽学校(いまの東京芸術大学)に進み、
こちらは首席で卒業している。

尻を叩(たた)かれても咲かなかった花が、
めぐる季節には黙っていても咲く。
何の分野であれ、
才能とはそういうものなのだろう。

名古屋市で小学6年生の佐竹崚(りょう)太(た)君(12)が刺殺された事件には胸がふさがる。
「成績が思わしくなく、
 勉強させようとして口論になった」。
逮捕された会社員の父親(48)はそう供述している。
蕾(つぼみ)を散らせて、
どうする。

サラリーマン川柳の旧作がある。
〈親の希(ゆ)望(め)つぎつぎ消して子は育つ〉。
それがごく普通の、
幸せな家庭の風景である。
なあ、オヤジ、あの夏は俺も勉強でずいぶん搾られたな…。
生きてさえあればいつか、
父子で昔ばなしを肴(さかな)に酒を酌み交わす日もあっただろう。

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