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エジプト “説教”大論争

2016-09-24 07:45:00 | 報道/ニュース

9月7日 キャッチ!


イスラム教徒にとって大切な毎日の礼拝。
特に金曜日の昼間は皆でモスクに集まり神に祈りをささげる。
そして人々はイマームと呼ばれる宗教指導者の説教に熱心に耳を傾ける。
説教のテーマは
宗教上の戒めから日常生活の過ごし方まで
多岐にわたる。
装いを清潔に保つことを神も推奨しています
人々は知識と経験に裏打ちされたイマームの一言一言を胸に刻み
それを精神的な支えとして日々の暮らしを送っている。
しかしエジプトでは最近この見慣れた光景も異変が起きている。
イマームが手元の紙を見ながら説教をするようになったのである。
その理由とは・・・。
エジプト政府は今年7月
説教の内容を統一することを決定。
毎週 説教のテーマとテキストを発表し
全国のイマームたちに一律同じ話をさせることにした。
清潔さこそ教養ある人間のふるまい
テロと汚職に反対
背景には
2年前のアラブの春による混乱が広がって以降
エジプトで相次ぐようになったテロの発生がある。
一部のイマームたちがモスクを拠点に過激な思想を広めていると見た政府は
説教の内容によっては度々イマームたちを拘束してきた。
しかし事態は一向に改善されないため
説教の内容自体を統制することにしたのである。
エジプトのモスクには政府所属のイマームがいる。
彼らの多くは政府の統制に従った。
(政府所属 イマーム アデル・マラギ師)
「統一された説教は正しいやり方です。
 国を混乱させる過激思想と戦うにはとても大きな影響力を持ちます。
 もっと早く導入すべきだったと思います。」
しかしモスクに通っている信者の受け止め方は様々である。
(信者)
「説教の統一は過激思想を遠ざけます。」
「地域ごとに問題も違うので
 地域に応じた説教をすべきです。」
エジプトのモスクには政府から派遣されているイマームの他に
アズハルと呼ばれる宗教機関から派遣されているイマームがいる。
イスラム教スンニ派が最高権威とするアズハルは
政府の統制に真っ向から反発。
傘下のイマームたちも一斉に反対の声を挙げた。
その1人 アズハル所属イマームのラビア・ガフェル師。
大学でイスラム教について教える傍ら
モスクでイマームを務めてきた。
日々 市民との対話や新聞やテレビのニュースをヒントに
何を伝えるべきなのか考え
今も説教のテーマや中身は自分で決めている。
イマームは経験に基づき自らの言葉で伝えなければ
メッセージの力は失われてしまうと心配している。
(アズハル所属 イマーム ラビア・ガフェル師)
「用意された説教を読むのではイマームが意欲や想像力を失い
 説教にも訴求力が無くなります。」
信者の中には
説教が統制され魅力を失えば
逆に過激派に付け入るスキを与えてしまうと懸念する人もいる。
ホサム・ムハンマドさんは中学校の教師として
また3人の子どもの親として
若い世代にインターネットやスマートフォンが急速に普及する現状を見てきた。
(中学校教員 ホサム・ムハンマドさん)
「子どもたちが何を見てもやめさせることはできません。
 過激派が子どもたちに思想を植え付けるのも簡単なのです。」
ホサムさんの子どもたちは毎日自分たちだけでパソコンを使っている。
(長男 アブデルモネム君 13歳)
「インターネットではどんなゲームやビデオも楽しめます。
 お父さんがいない時は見たいものが何でも見られるよ。」
インターネットの利用を通じて
誰もが過激な思想に触れる可能性がある以上
対抗するには
今こそより説得力のある説教が必要だとホサムさんは考える。
(中学校教員 ホサム・ムハンマドさん)
「政府が書いた説教では解決になりません。
 修業を積んだイマームの話の方がテロと戦う上では効果的で
 みな言うことに従うでしょう。」

政府もここまで大きな反発を招くとは予想していなかったと思われる。
真っ先に反対の声を上げた宗教機関のアズハル
トップは大統領が任命することになっていて
ある程度政府の影響下にある。
にもかかわらず強硬な姿勢を見せているのは
宗教活動の根幹にかかわる問題だと認識しているからである。
一方 治安の安泰を最優先課題と考える政府としては
相次ぐテロに対し手をこまねいているわけにはいかないという切実な事情がある。
刑務所に収容されている受刑者の間で
過激派のリクルートが行われている可能性が指摘されている。
これに対してエジプト政府は
他の受刑者に影響を及ぼしそうな受刑者は独房に移すという対策をとっているが
受刑者それぞれの思想を完全に把握することは難しい。
さらに深刻なのがインターネットによる過激思想の浸透である。
当局も掲示板などへの書き込みを監視しているが
サイバー空間での活動を完全に把握するのは不可能に近い。
このためできることとして手を付けたのが
モスクでの説教に対する規制だったのである。
これまでも
過激思想を抑えるために宗教を力で抑え込むという方法は多くの国でとられてきた。
しかし抑え込めば抑え込むほど反発が強まり
過激化が進むというのがその教訓である。
一方で過激思想に若者が引きつけられていく背景には
教育を受けても仕事に就けず生かす場所がない
未来に希望が持てない、
といった経済的な苦境や
これを放置してきた政府への不満があるという指摘もある。
ただ経済状況の改善には長い時間がかかるうえ
状況が改善すれば過激派が必ず防げるという保証もない。
テロへの対処
若者の過激化の防止という課題は
いまやイスラム教徒を大きく変える
エジプトなどの国々だけでなく世界全体の課題と言え
国際社会としての取り組みが求められる。




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