11月14日 国際報道2016
フランス西部の中学校。
10月に応急処置の訓練が行われた。
(講師)
「傷口は手で押さえること。
自分の手は必ずカバーして。」
フランスの公立学校は過激派組織ISイスラミックステートがテロの標的にすると宣言している。
政府はこの秋から
すべての学校で不審者の侵入対応訓練を
さらに中学校には応急処置の訓練を義務付けた。
(生徒)
「慣れないので少し難しいです。」
(校長)
「残念ながら現状では生徒が襲われた場合に備えた対応が必要です。」
この1年 フランスでは各地でテロが相次いだ。
フランス北部ノルマンディー地方の教会は今年7月
イスラム過激派とのつながりがある疑いで監視対象となっていた男2人に襲撃された。
フランスではこうした監視対象者は今や1万1,000人にのぼる。
その情報の取り扱いがいま問題となっている。
政府は監視を効果的に行うためだとして
情報を厳しく管理し
こうした人物がいる自治体にさえ情報を提供していない。
これに対して自治体ではいらだちと不安が高まっている。
テロにかかわる人物がすぐ近くに潜んでいる恐れもあるとして情報提供を求めている。
(エブルー市 市長)
「市内の誰が危険人物で
何人いるのか
わからなければ市民の安全は確保できません。
国だけではもはや安全を確保できない。
国も我々を支援すべきです。」
さらにテロ対策の最前線に立ってきた警察官たちも不満を爆発させている。
テロ対策に終わりが見えず
パリ近郊では警察官が犠牲になる事件も起きた。
疲労と緊張が続く現状に耐えかね連日のように各地でデモを行っている。
(デモ参加者)
「もううんざりです。
労働条件も安全確保の面でも。」
「装備も現場の人員ももっと増やしてほしい。」
国を挙げた警戒が続くなか
態勢や待遇が見直されなければ
長期にわたるテロとの戦いは難しいと悲鳴を上げているのである。
一方で異なる文化や宗教を持つ人たちの共生を目指そうという動きもある。
パリ近郊の町サングラシアン。
この日 市長が子どもたちの集まる施設を訪れた。
(サングラシアン市 市長)
「私たちの歴史を記念して祝日があるのよ。」
子どもたちがフランス国民として同じ価値観を共有できるよう
国の歴史や文化を教える活動に力を入れている。
(サングラシアン市 市長)
「子どもたちとのこういう触れ合いは特に重要です。
“共に生きよう”という意識を育むことができます。」
市長が共生のカギだと考えているのが
イスラム教ともキリスト教徒も公の場で宗教色を出さないという国是を徹底することである。
フランスでは公立学校でイスラム教徒がスカーフをかぶることは禁止されている。
市長はさらに考えを推し進め
今年6月 自らは
“スカーフをかぶったて人がいる焦点をボイコットする”と宣言した。
この市長の行動がさらなる対立を生むことになった。
イスラム教徒たちは
“市長がイスラム教徒の自由を奪い分断をあおっている”と反発している。
(イスラム系団体支援者)
「市長はイスラム教徒を“2級市民”扱いしています。
“共生”だと言われても上から目線の押しつけに聞こえます。」
パリの同時テロから1年。
終わりのないテロの脅威を前に
フランス社会では不信感や敵意が深く根をおろし
重苦しい閉塞感に包まれている。
(社会学者)
「我々は講師ともにテロにがんじがらめになっています。
テロは対立を深め
人々は他社を認めず
閉鎖的な社会を求めるようになります。」