1月28日 国際報道2016
西本智実さん。
世界的にも数少ない女性指揮者である。
華麗に指揮をするその姿からファンの間で「王子すぎる指揮者」とも呼ばれている。
11月上旬 西本さんは中東の聖地エルサレムを訪れた。
指揮するのはイスラエルのオーケストラ エルサレム交響楽団である。
イスラエル大使館の依頼で共演が実現することになった。
リハーサルの初日。
メンバーに短く段取りを説明する。
「第1 第2 第3とやって最後にアダージェット。」
これまでに30カ国で指揮してきた西本さん。
初めてのリハーサルはいつも空気が張りつめる。
(指揮者 西本智実さん)
「緊張感というのはすごくあります。
やはり国によって
楽団によってずいぶん違う。
やりとりしながら作っていきますので
お互いいろいろ見合ってというのもあります。」
西本さんは20代後半にクラシック音楽の本場 ロシアに留学。
世界的にも女性の指揮者が少ないなか
伝統あるロシアのオーケストラで実績を重ねた。
エルサレムを訪問するのは初めてである。
旧市街では土産物屋や日用品店が並ぶ石畳の路地を異なる宗教の人がすれ違う。
(指揮者 西本智実さん)
「いや もう初めての光景に圧巻といいますか
いろんな香辛料の臭いとか含めて
言葉とか聞こえてくる言葉とか。」
イスラエルは常に意識していた国だと言う。
ロシアや世界各地で数多くのユダヤ系の音楽家と接し
影響を受けてきた西本さん。
今回の訪問はその源流をたどる旅でもある。
(指揮者 西本智実さん)
「私の先生とか
これまで共演してきた音楽家たちはユダヤの方が非常に多いので
そういう人たちがいろんなところで後押ししてくださって
今に至っていますので。」
リハーサルはいつも試行錯誤の連続である。
国や文化の異なるもの同士
指揮者として楽団をどうまとめていくか
真剣なやりとりが続く。
(指揮者 西本智実さん)
「最初に提示する
強い意志を出すこともあります。
やってみて今ひとつ手応えがあれだなと思ったら
またちょっと違う方法を考えていく。
もちろん相手があってのことなので。」
演奏を通じてイスラエルの空気や文化を表現したいと考える西本さん。
指揮することにしたのは
ユダヤ人の作曲家であるマーラーの「交響曲第5番」である。
(指揮者 西本智実さん)
「マーラーもユダヤの方ですし
ユダヤとかかわりの深い作曲家の作品をと思った。
その中でも非常に有名なマーラーということで話がぴたっときたわけです。」
公演当日。
「マエストラ トモミ・ニシモト」
緊張する楽団員の人たちの間を進む西本さん。
地元の人々で会場は大入り満員となった。
本番。
(観客)
「見事だった。
すばらしかった。」
「彼女はオーケストラをコントロールし
表現豊かで非常に感動的な演奏を披露した。」
西本さんは
人々の聖地への思いやユダヤ人の積み上げてきた歴史を体で感じたと言う。
(指揮者 西本智実さん)
「その国々特有のものというのを自分で得るためにいろんな国でやってきたわけですけども
そちらの部分を今後はどんどんいろんな国々で出していこうという考えですね。」