12月19日 編集手帳
外国で酒場を開くため、
2人の男が様々な酒を仕入れて船に乗る。
ところが上陸寸前、
瓶詰の商品には重税がかかると知らされ、
瓶を開けて二つの樽(たる)にぶちまけた。
一つ目の樽の酒はひどい代物だったが、
二つ目は美酒となり大もうけする。
帰国後、2人は汗だくで再現を試みるが…
オー・ヘンリーの短編『幻の混合酒』である。
税との闘いは時に思わぬ恩恵をもたらす。
ウイスキーが熟成のうまみと琥珀(こはく)色を得たのは、
税逃れに木樽に隠したのがきっかけという。
この20年余、
ビール会社の闘いを応援してきた人も多かろう。
少しでも安くと、
麦芽の少ない発泡酒、
別の原料を使う「第3のビール」を次々と開発した。
だが、
税制改正で、
今後10年かけ、
みなビールと同じ税率になるそうである。
ビールは減税され、
発泡酒は捨て石となる感もある。
かつては政府税調の会長に「酒文化を損なっている」と味まで酷評された。
味わいを磨き、
健康志向に応え、
企業努力は消費者の心をつかんできた。
税対策ではなく品質の競争に専心すれば、
もっとうまい酒が生まれよう。
税制が「賢者の贈り物」になればいい。