8月20日 編集手帳
スギセンこと杉山先生は試験の採点にこだわりがあった。
答案用紙に点数でなく、
大きな丸か花丸を付ける。
「できました」と「良くできました」の2段階評価だった。
戸惑う親らにスギセンは説いた。
100点を取らせるのは簡単です。
でも小学校を卒業すれば先はずっと厳しい競争が続く。
せめて、
今だけでも…
ノンフィクション作家の稲泉連さんは随筆「歌の時間」(岩波新書『先生!』所収)で、
型破りな恩師を誇らしげにつづる。
常識的には正しいと言えない。
けれど、
「子どもたちは花丸が大好きなんです」と闘う姿は<どんな教師よりも教育的な存在であった>
これもまた、
強い信念に基づき実施される策なのだろう。
大阪市の吉村洋文市長が全国学力テストの結果を教員の人事評価に反映させると表明した。
市の成績は低迷が続く。
数値目標を定めて奮起を促すそうだ。
点数主義の是非は問うまい。
ただ、
稲泉さんは書いている。
自分が一番よく知っていたと。
<懸命に勉強した後の花丸は誇らしく、
そうではなかったときはみすぼらしく見える>。
誇らしい花丸がつくといい。
児童にも先生にも。