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デンマーク 新・移民政策 “ゲットー”の名のもとに

2018-09-12 07:00:00 | 報道/ニュース

8月21日 国際報道2018


福祉国家として知られるデンマークで
いま移民に対する政策に大きな異変が起きている。
政府がイスラム教移民などが暮らす地区を「ゲットー」と名付け
貧困や犯罪を減らそうとしている。
「ゲットー」とは
第二次世界大戦中 ナチス・ドイツがユダヤ人を隔離するために作った居住地区である。
デンマーク政府は新たな移民政策を“ゲットー・プラン”と名付け
厳しい姿勢を打ち出している。
「ゲットー」という言葉にはナチス・ドイツ時代のユダヤ人居住区以外にも
大都市の貧しいマイノリティーが密集して住む地域を否定的に表現する際に使われる言葉である。
デンマークのラスムセン首相は今年3月
この「ゲットー」という刺激的な言葉をあえて使って
“ゲットー・プラン”と呼ばれる移民に対する政策を発表して波紋を呼んでいる。
“ゲットー・プラン”とはどのようなものなのか。
1960年代から移民を労働力として受け入れてきたデンマーク。
シリアの内戦など最近の中東の混乱もあり移民は増え続けている。
全人口579万人に占める移民の割合は現在 8,6%に達している。
ただ国民の間では移民が就職せずに福祉に頼っているとして
“福祉にただ乗りしている”という不満がくすぶっている。
こうしたなか201年に誕生したのが厳しい姿勢を示すラスムセン政権である。
ラスムセン政権が今年3月に打ち出した“ゲットー・プラン”。
移民や難民が住民の半数を超え
失業率が高い国内30か所を「ゲットー」に指定する。
窃盗などの犯罪を他の地域よりも厳しく処罰したり
社会統合を進めるため
1歳になった子どもたちは週30時間以上保育園へ通うことを義務付け
デンマークの言葉や男女平等などの価値観を学ばせるなどとしている。
「ゲットー」の住民をデンマーク社会に溶け込ませるための対策を強化し
貧困や犯罪を減らそうというものである。

デンマークの首都コペンハーゲン。
約2,500人が暮らすミュルナパーケン団地。
政府が指定する30の「ゲットー」の1つで
欧米以外からの移民が約8割を占めている。
失業率の高さが大きな問題となってきた。
ラスムセン首相は今年
こうした“「ゲットー」の中にデンマーク社会に溶け込む努力を怠っている人がいる”と批判。
移民に対するあらtな対策“ゲットー・プラン”を打ち出した。
(デンマーク ラスムセン首相)
「働かずに福祉で得たカネで暮らし
 犯罪が多い地区がある。
 政府は問題の多い地区を完全になくす。
 「ゲットー」を一掃する。」
政府の対策は差別的ではないか?
首相はそんな問いかけに平然と答えている。
(デンマーク ラスムセン首相)
「確かにある部分では差別的だと認める。」
ラスムセン政権の移民対策に対して市民の意見は割れている。
(市民)
「機会を利用して支援を受け過ぎの人もいる。」
「移民を歓迎しないのは寛容の精神に反する。
 「ゲットー」も問題です。
 特定の地域の人を差別しています。」
ミュルナパーケンの住民の間には“ゲットー・プラン”に動揺が広がっている。
自治会長を務めるパキスタン出身のアスラムさん。
“ゲットー・プラン”は団地の住民への偏見を助長することになると言う。
(自治会長 アスラムさん)
「通りを隔てた人は保育園に通うか選択できる。
 なぜ私たちはだめなのか。
 法治国家なのに特定地域の人だけ権利を奪われるということだ。」
アスラムさんは
政府が選挙対策のためイスラム教徒を標的にしているとして
“ゲットー・プラン”を見直してほしいと訴える
(自治会長 アスラムさん)
「特定の地区に住んでいる住民から憲法上の権利を奪うことは差別だ。
 住民はみんな自分をデンマーク人だと感じているのに
 なぜ認められないのか?」
移民問題に詳しい大学教授は
特定の集団を標的にした政策は社会を分断するだけだと警鐘を鳴らす。
(ロスキレ大学 ミシェル・ペース教授)
「政権は社会をあおるため戦略的に“ゲットー”という言葉を使い
 標的とされた儒眠だけでなく
 社会全体に怒りの感情をかきたてている。
 この風潮は1920~30年代に
 社会がファシズムへと突き進んだころと同じだ。
 “よそ者だ”“危険だ”とレッテルを貼り扇動したあの頃のようだ。」
一方 移民の中にも自分たちからデンマーク社会に溶け込む努力をするべきだとして
政策を支持する人もいる。
シリア生まれのナサ―・カダ―議員である。
祖国とのつながりやイスラムの教えを厳格に守るだけでは社会から孤立するだけだと言う。
(デンマーク議会 カダ―議員)
「出身国の文化とデンマークの文化の両方を持つことは可能だ。
 「ゲットー」にはそれを拒否しているかのような人もいる。
 同化を求めているのではなく
 デンマーク社会の一員として生きてほしい。」
ミュルナパーケンの団地でも
デンマーク社会への統合に向けた住民側の努力が始まっている。
この日 団地では子どもたちがゴミ拾いなどの活動に汗を流していた。
子どもを指導する男性は19年前にレバノン内戦を逃れデンマークに来た。
こうした活動を通じて
子どもたちに社会のルールを身につけてほしいと考えている。
(子どもを指導する住民)
「時が来れば団地を出てデンマーク社会に出ていく。
 その時に困らないよう
 ルールを守るなど規範を教えていきたい。」



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