8月24日 国際報道2018
4年前 ロシアへの併合に沸いたクリミアの人々。
(ロシア プーチン大統領)
「クリミアは戦略的に重要な土地で
強く安定した統治が必要だ。
それが出来るのはロシアだけだ。」
今年 ロシアと直結する橋が完成。
開通式ではプーチン大統領自らダンプカーのハンドルを握り一体感をアピールした。
ウクライナの南に位置するクリミア半島。
かつてはロシア帝国の領土だったが
ソビエト時代の1954年 ウクライナへと帰属が変更され
ソビエト崩壊後もウクライナ領となる。
クリミア半島の人口は現在約190万人。
ロシア系住民が6割を超えるほか
黒海沿岸のセバストポリにはロシア海軍が駐留してきた。
2014年
ロシア軍が事実上掌握しているクリミア自治共和国政府が
ロシアへの編入を求める住民投票を行い
97%の人が賛成したと発表された。
プーチン大統領はロシアへの編入を表明し実効支配を開始した。
しかし国際社会は
“違法な住民投票だ”
“力による国境線の変更”と非難している。
クリミア半島の最も東にある都市 ケルチ。
ロシアの対岸からはわずか20kmのところに位置する。
ここで最近目立つのはロシア本土からの観光客である。
海峡を望む公園などをまわる観光コースが人気を呼んでいる。
(ロシアからの観光客)
「すごくきれいで気に入りました。」
観光客が増えた理由は
今年5月 ロシア本土とクリミアが巨大な橋で結ばれたことにある。
橋は全長19㎞の自動車専用道路で
プーチン政権が4,000億円余を投じて建設を進めた。
(ロシア プーチン大統領)
「クリミアはより力強くなり
われわれの結束は一段と強まる。」
橋の完成後3か月で200万台以上の車が行き来したという。
橋の近くにあるカフェでは
客の増加に加えてメニューも増やすことができたと喜んでいる。
物流が改善され
ロシアから牛肉などの食材を仕入れることができるようになったからである。
(カフェの経営者)
「私たちは橋などのインフラをテレビではなく目の当たりにしています。
これまで見たことがない大規模な開発に驚いています。」
併合後 ウクライナから送電が止められ
たびたび見舞われていた大規模停電にも対策を講じた。
ロシア政府がロシア南部から送電線を引くことで
電力をロシアだけでまかなえるようにしたのである。
しかし医療や教育の改善が遅れていることや
地域経済が振るわないなどとして
ロシア政府への不満の声も出始めている。
4年前の住民投票ではロシアへの編入について100%近い人が賛成したと発表された。
しかし去年の世論調査では
住民投票が今行われれば賛成すると答えた人は79%にとどまっている。
(市民)
「国家プロジェクトで橋は作りましたが
地元では何もできていません。」
「併合されてよくなるはずが実際の暮らしは悪化しました。」
地域経済が落ち込んでいる原因の1つが主要産業である農業の不振である。
これまでクリミアでは農業用水のほとんどを
ウクライナから続く全長400kmほどの水路から得てきた。
クリミアがロシアに併合された直後
ウクライナ政府は
上流にあるダムの水門を閉じ水の流れを完全にストップさせた。
(ウクライナ グリムチャク副大臣)
「国際法では
占領した国がその地域の社会情勢に対応する必要があります。
クリミアをウクライナに戻すために
ロシアに今より厳しい制裁を課す考えです。」
農業法人の技師を務める ワレリー・ファジェーエフさん。
30年以上にわたってこの地で小麦や米などを栽培してきた。
この夏クリミアでは35度にもなる猛暑が続き
3週間以上も雨が降らず
農業はさらに厳しい状況に追い込まれている。
(農業法人 技師 ワレリー・ファジェーエフさん)
「今年の収穫はほぼゼロでしょう。
水路に水がなく雨も降らないという2つのマイナス要因があるからです。」
ロシア側は
水の供給が止められたことでクリミアに農地の9割が使えなくなったと主張。
責任は水の供給を止めたウクライナ側にあるとしている。
(クリミア行政府農業省 セルゲイ・グリーギン局長)
「将来的には隣の兄妹国(ウクライナ)の世界観や政治方針が変わってほしいが
問題はすぐには解決しないでしょう。
ウクライナの政策で
今後クリミアの住民が猛反発する恐れがあります。」
ロシアによるクリミア併合から4年半。
産業や住民生活にじわじわと影響が広がり始めている。