9月11日 編集手帳
先ごろ惜しまれながら亡くなった桂歌丸さんは、
じかに拝聴したにちがいない。
その師匠、
古今亭今輔に名言がある。
<迎えの拍手はきのうまでの人気、
降りる時の拍手は今の人気>
大坂なおみ選手(20)に迎えの拍手はどう聞こえたろう。
テニスの全米オープン決勝はセリーナ・ウィリアムズ選手(36)の女王復帰を望む観衆で埋まった。
完全アウェーである。
そのうえ審判の判定を機にブーイングがわき起こった。
サービスエースを決めても、
ざわざわするだけ…。
よく踏ん張れたものである。
大坂選手が日本勢として初めて、
世界の四大大会を制した。
それにしても表彰式までブーイングとは大会の品位を貶(おとし)めるものだろう。
だがそこを2人が救った。
「もうブーイングはやめて」と元女王がいい、
大坂選手は
「みんながセリーナを応援していたのは知っています。
こんな終わり方ですみません。
試合を見に来てくれてありがとう」。
空気は一変して、
温かな拍手が会場をつつんだ。
テニスの強さばかりではない。
やさしさ、
素直さに心を動かされたのだろう。
新女王が初々しく誕生した。
おあとが大変よろしい。