8月28日 おはよう日本
東京の神宮球場を本拠地にするヤクルト・スワローズ。
昨季 首位と44ゲーム差の最下位に沈みながら入場者の数の伸び率はセリーグ トップだった。
どういう戦略だったのか。
ターゲットは“サラリーマン”。
神宮球場の周りはオフィス街。
ヤクルトはサラリーマン向けの企画を次々と打ち出している。
たとえば8月24日金曜日に球場にやって来たサラリーマンのお目当ては
「生ビール半額ということで。」
「ビール半額。
美味しいビールを飲みに来ました。」
この日は“生ビール半額ナイター”。
通常1杯750円のところ350円で売り出した。
この日はいつもの倍以上の57,000杯が売れた。
球団は今シーズン“生ビール半額ナイター”を5回開催した。
何度も足を運んでもらおうという狙いである。
同じ東京に本拠地を置く巨人に常に集客で遅れをとってきたヤクルト。
これまで神宮球場には空席が目立つことも少なくなかった。
こうした状況をなんとかしたいと球団は5年前
ファンクラブ会員を徹底調査。
平日に訪れた客の7割以上がサラリーマン世代であることがわかり
そこに活路を求めたのである。
サラリーマンが球場に足を運びやすくするため
去年から観客席にも工夫をした。
仕事の都合で遅れてきても座って観戦できるように
半分以上の試合ですべての座席を指定席にした。
(観客)
「指定席だったら
行く日さえ決めていればいい席で見られるので
そういう意味では忙しい人にとってはありがたい。」
ターゲットを明確にした集客の戦略。
元プロ野球選手でソフトバンクホークスの経営にも携わった小林至さんは
球団を取り巻く環境の変化が大きく関わっていると分析している。
(江戸川大学社会学部 小林至教授)
「プロ野球はテレビで露出をする“空中戦ビジネス”から“地上戦”に。」
プロ野球人気が高かった90年代
ほとんどの球団は地上波テレビの放映権料や親会社からの補填で経営成り立たせてきた。
ただ景気の悪化や地上波での中継の激減。
危機感を抱いた球団はこれまでにも増して集客に力を入れるようになってきたのである。
(江戸川大学社会学部 小林至教授)
「どぶ板営業をプロ野球がやることを考えてなかった。
自分の足で立たなければ
球団がビジネスとして成り立たない。
目覚めないといかんでしょ ということだった。」
こうしたなか今年から将来を見据え
新たなターゲット戦略を打ち出しているのが西武ライオンズである。
プロジェクト名 “L FRIENDS”。
子どもをターゲットに
世代を超え末永くファンになってもらうことを目指している。
STEP①野球の楽しさを知ってもらう
開幕前の3月 選手が出向いてチームのロゴ入りの帽子を埼玉県内の小学生にプレゼント。
31万個配った。
さまざまなスポーツや娯楽がある中まず野球に興味を持ってもらおうという狙いである。
大型連休中の4月29日には試合を見に来た小学生以下の子どもにグローブを無料配布。
さらにこの日は選手が使っている練習場を開放。
野球の楽しさを実際に体感してもらった。
(小学生)
「帽子をもらってからよく来るようになった。」
(父親)
「野球自体に興味を持つようになったかなと感じます。」
プロジェクトの中心メンバーの1人 後藤広樹さん。
2年前までおもちゃメーカーで働いていた。
後藤さんが考えた次のステップは
STEP②選手を好きになってもらう
かつての経験を生かした取り組みを実行した。
夏休み中の8月18日に配った麻雀風のボードゲーム。
西武版としてアレンジしている。
選手の特徴によって役を設定した。
今季ホームラン数
中村(リーグ8位)・浅村(リーグ4位)・山川(リーグ1位)
この3人をそろえると“和製大砲あがり”という役で高得点が出る。
家族で遊びながら選手を知ることができると好評である。
(母親)
「目で見てわかるので子どもは大好きだと思います。
文字だけ背番号だけよりも
顔が入ってる方が好きだと思います」
西部は今シーズンすでに16試合でチケットが完売。
去年を大きく上回るペースで球団も大きく手ごたえを感じている。
(西武ライオンズ 事業部 後藤広樹マネージャー)
「単年度的な活動ではなく
お子様に対して
将来のロイヤルカスタマーになる方々でもあるので
将来 自分のお子さんを連れてくるぐらいまで
ずっとライオンズを好きになってもらえるよう
こういった活動は続けていきたい。」