11月24日 国際報道2016
11月24には「和食の日」。
語呂合わせで“いい日本食”と読めることにちなんで2014年に制定された。
世界的にも人気が高まっている和食だが
この日本の味をもっと親しんでもらおうという動きが広まっている。
中国広東省広州で今年7月にオープンした日本料理店。
看板料理は中国では珍しい「手打ちそば」だが
値段が高いことや知名度不足で中国人は客全体の2割にとどまっていたという。
そこで「そば」だけではなく中国人が大好きな刺身も楽しめるお得なセットメニューも考案。
9月から高所得者向けのスマートフォンアプリで宣伝する作戦に出た。
すると中国人客は5倍以上に増加。
今では客全体の8割を占めるまでになった。
(日本料理店店員 )
「アプリで店を決める人が増えている。
そばの味を広めるため積極的に宣伝したい。」
味に満足した客は中国版のLINE微信(ウェイシン)に写真を投稿。
評判はネットでさらに広まるようになった。
(客)
「ここの手打ちそばは弾力があり美味しかった。」
(日本料理店 料理長 井上英樹さん)
「ネットがなかったら正直中国のお客さんは今ほど来てないと思う。
日本に行けなくても中国で本物の日本料理を食べられる店にしたい。」
中国で8億人とも言われるスマートフォンの利用者にいかに訴えるか。
日本の味を広げるカギになっている。
東南アジアのインドネシア。
朝食におかゆを食べる人が多い。
コメが主食の国である。
こんなインドネシアに日本のパンを売り込もうと
日本のパンメーカーが2年前から進出している。
甘いものが大好きという国民性を狙い
菓子パンを主力商品にコンビニなどで1日5万個を販売している。
(客)
「日本のパンは柔らかくておいしい。
甘党なので中身が多いのがうれしいです。」
それでもまだまだ購買層が限られているインドネシア。
会社が新たな消費者として注目しているのが日系企業の工場で働く人たちである。
工場の食堂にパンを置くことで知名度を上げ
家庭でも使用してもらおうと考えている。
(ヤマザキインドネシア 齋藤一郎社長)
「お客様の方も生活様式が変わってきているので
パンの需要はいろいろなところで広がっています。
そこにぜひ切り込んでいきたいと思う。」
人口2億5,000万の巨大市場に日本のパンを広げる取り組み。
現地の好みに適応しながら着実に歩みを進めている。
12月13日 編集手帳
太宰治の『斜陽』に「経済学」を語ったくだりがある。
〈人間というものはケチなもので、
永遠にケチなものだという前提が無いと全く成り立たない学問…〉であると。
ケチというよりも、
“惜しむ”学問だろう。
お金を惜しみ、
資源を惜しみ、
時間を惜しむ。
経済活動という地図上に、
無駄のない最短の道順を追求してやまない。
国の財政も家計のやりくりも、
地道ながら尊い“惜しむ”心があって初めて成り立つ。
その対極にあるものは、
一獲千金を狙う賭博だろう。
「惜」という字の心(立心偏)が金に置き換わると、
錯誤の「錯」になる。
心が金に…は、
ギャンブル依存症の悲劇そのままである。
歳末恒例「今年の漢字」は〈金〉だという。
メダルラッシュに沸いたリオの夏を思い出す前に、
与野党の攻防がつづく通称「カジノ解禁法案」を連想してしまった。
日本選手団の面々には少々申し訳ない気持ちでいる。
経営上の妙味がどれほどあろうとも、
カジノは人の不幸と不運を養分にして咲く徒花(あだばな)である。
日本経済の定評であった優秀の「秀」の字が悲しい金にまみれ、
「銹(さび)」に変わる。
見るに忍びない。
11月24日 国際報道2016
大学世界ランキング第1位 オックスフォード大学
卒業生のノーベル賞受賞者が世界最多 ケンブリッジ大学。
この2つの大学を筆頭に世界の研究 開発をリードしてきたイギリス。
しかしいま大きな岐路に立たされている。
きっかけは国民投票によるEU離脱。
研究者からは
離脱によってEUからの助成金が打ち切られるのではないか
と危惧する声が上がっている。
自然科学の分野で最先端の研究を行っているシェフィールド大学。
研究現場はいま深刻な事態に直面している。
EU離脱決定後に
物理天文学部のチームが他のEUの国のグループとの共同開発から外されたのである。
共同研究するはずだったグループから送られてきたメールに書かれていたのは
あなた方には共同研究から抜けてもらうことが決まった
主な理由はEU離脱だ
(シェフィールド大学 ポール・クラウザー教授)
「とても悲しい結果だ。
イギリスとの共同研究はリスクが高すぎると考えたのだろう。」
研究現場での異例ともいえる“イギリス外し”。
理由の1つは
共同研究にイギリスのメンバーが含まれると
離脱によってEUの助成金がもらえなくなるかもしれないと警戒されたことだった。
イギリスには国際的に競争力のある大学が多く
これまで世界とりわけEUから優秀な人材や資金が集まってきていた。
科学分野の研究水準は世界でも最高峰と言われるケンブリッジ大学。
産学連携が盛んで
大学周辺にはベンチャー企業や金融機関が集積し
学園都市を形成している。
それを支えていたのがEUからの資金だった。
ケンブリッジ大学での研究を生かし
3年前 航空機に与える気象の影響を分析するベンチャー企業を起ち上げた
アダム・デュランさん(37)。
設立にあたりEUが中心になっている機関から約6,000万円の助成金を受けていた。
しかしEU離脱で追加の支援が受けられる保証がなくなり
デュランさんは会社を他のEUの国に移転することも考えているという。
(ベンチャー企業 CEO アダム・デュランさん)
「長期的にはEU域内への移転などあらゆる選択肢が必要です。
私たちのような小さな会社はイギリス以外での活動を完投するのが自然です。」
EUからの助成金はイギリスの大学の研究費用の26%を占め
先端研究には欠かせなくなっている。
研究現場の懸念を受けイギリスのメイ首相は
研究開発に毎年2,800億円を投資する方針を明らかにした。
(イギリス メイ首相)
「われわえは研究開発に対する投資の増額を約束する。
新たな資金は化学研究と多くの優先順位の高い技術に直接投資する。」
しかし研究者たちの懸念は助成金問題にとどまらない。
離脱によって移動の自由が制限されることになれば
他のEUの国からの人材を確保しづらくなるというのである。
これまでEU域内の人たちはビザがなくても
イギリスで住む場所や働く場所を自由に選ぶことができた。
しかし離脱後には
ビザの発給や出入国の際の審査など
さまざまな制限を受ける可能性がある。
北部グラスゴーにあるがん研究施設。
「彼はドイツ
彼はイタリアから来たんですよ。」
ここで働く約3分の1が他のEU加盟国からの研究者。
これまで移動の自由を背景にEU各国から優秀な人材が集まってきた。
しかしいまイギリスに排他的な空気が生まれることで
研究に影響が出るのではという不安が広がっている。
(イタリア人研究者)
「ここは研究に恵まれた環境です。
去りたくないです。」
(キャンサーリサーチUK 研究責任者 カレン・バウスデン氏)
「EUからの研究員は極めて重要な存在です。
移動の自由を失わないよう強く訴えます。」
専門家は
対応を誤ればイギリスの研究分野の競争力の低下は避けられないと指摘する。
(科学コンサルタント マーティン・ショムショー氏)
「もし移動の自由がより厳しくなれば
明らかに学生や研究員などの確保に影響するでしょう。
政府は
EUからの資金アクセスと他の国の研究者との連携維持に全力を注ぐべきです。」
11月21日 国際報道2016
安くておいしい魚としてタイの庶民に親しまれているティラピア。
塩をたっぷりまぶして炭火で焼き上げる。
身は柔らかくくせのない味わいである。
数人で分け合える大きさが200バーツ(約600円)で楽しめる。
実はこのティラピアは日本ともとても深い関係がある。
プミポン国王が亡くなり追悼ムードに包まれるなか
バンコク近郊である展示会が開かれた。
ティラピアは亡くなったプミポン国王がタイに残した贈りものとして
あらためて注目されている。
タイ全土に流通しているティラピアの歴史をあらためて知ろうというものである。
そこで紹介されたのがティラピアが広まるきっかけを作ったプミポン国生。
そして天皇陛下のお姿。
1964年 当時皇太子だった天皇陛下が初めてタイを公式訪問された。
タイの人々が食糧難に苦しんでいることを知り
翌年 育てやすく栄養が豊富なティラピアを50匹
プミポン国王に寄贈された。
とても喜んだプミポン国王は王宮の池で繁殖させた。
そして自ら「プラー・ニン」と名付け
タイ各地の養殖業者に無料で配ったのである。
こうしてこの魚はタイの食卓に欠かせない存在となった。
(バンコク市民)
「買いやすい魚が日本から紹介されたことに感謝しています。
プラー・ニンを食べるたびに
プミポン国王
そして日本のことを思います。」
プミポン国王は
「まるでわが子のような存在だ」として
一切口にはしなかったということである。
11月19日 経済フロントライン
JR四国は
豊かな自然を満喫できる観光列車に力を入れている。
来年春に導入する観光列車「四国まんなか千年ものがたり」。
香川県と徳島県の内陸部を走る予定である。
テスト走行にはJR四国の半井真司社長も同行。
社長自らサービスの細かな部分まで指示した。
日本人だけでなく外国人観光客も呼び込もうと会社をあげて準備を進めている。
(JR四国 半井真司社長)
「とにかく四国に足を運んでいただく。
そのきっかけ作りをしていきたい。」
JR四国は発足から30年近く厳しい経営環境が続いてきた。
現在 1日1キロあたりの平均乗客数は
国鉄時代に廃線の目安となった4,000人未満という路線が6割を占めている。
(JR四国 半井真司社長)
「四国は全国に先駆ける人口減少
ならびに少子高齢化が進んでいる。
そういう状況の中で全部の路線の維持ができるのかという意味合いでいうと
はっきり言って厳しいところはある。」
人口減少に加え高速道路の整備が収益の悪化に拍車をかけた。
大半の路線に並行して高速道路が作られ
鉄道の利用者が奪われてきたのである。
収入の減少を補うための取り組みの1つが観光列車である。
2年前に導入した「伊予灘ものがたり」。
瀬戸内海沿岸を走り
その眺望が人気を博している。
「すごいな。」
そしてもう1つ
観光列車の通過に合わせて自発的に出迎える沿線の人たちの姿が感動を読んでいる。
「みんな振ってくれてる。」
「なんていい人たちや。」
「ぐっと来ました。」
「泣いてました。」
「あんなに地元の人におもてなしをしてもらえるって。
みんなに乗ってもらいたい。」
収益の改善のためJR四国は経営の多角化を進めている。
ホテルの営業
マンションなどの不動産事業
そして飲食店の経営などである。
鉄道などの運輸部門の売り上げは約300億円
その他の事業の売り上げは150円余となっている。
鉄道以外の収入をさらに増やしていく計画だが
会社単独で路線を維持し続けていくのは容易ではないと考えている。
(JR四国 半井真司社長)
「鉄道は限界がある中で
それ以外でどういうふうに収益を上げていくのか。
これからの最大の課題になってくる。
特に高齢化の中で公共輸送は非常に重要だと思っているが
公共交通ネットワークをどんな形で維持していくのか
もっと言えば誰が負担して維持していくのか
議論をしていただく場が必要だろう。」
11月19日 経済フロントライン
全国各地を走る観光列車。
車両やサービスにそれぞれの地域の特色を打ち出している。
「ななつ星in九州」は
一流の料理人が地元の食材を使った料理を提供するサービス。
「伊予灘ものがたり(愛媛)」は
絶景ポイントで列車がスピードを緩めたり一時停止したり。
観光列車を次々と導入している会社のひとつが関西の私鉄 近鉄である。
3年前 最初に導入した「しまかぜ」。
大阪 京都 名古屋を出発し
伊勢志摩地域をめぐる。
平均の乗車率は90%である。
料金は通常の特急よりも千円ほど高め。
しかし座席の前後の幅が広いためゆったり座ることができる。
沿線の特産を使った様々な食事。
主に女性客をターゲットにしている。
(乗客)
「贅沢っていうの 幸せを感じますね。」
「普通の特急とは全然違う。」
「飛行機のファーストクラスみたいだねって。」
近鉄が観光列車に力を入れるのは通勤・通学客の利用が減ってきているからである。
背景にあるのは人口減少と高齢化。
全体の乗客数は20年前に比べ3割近く減少している。
(近畿日本鉄道 観光事業統括部 下釜恭道課長)
「乗客の減少を補っていかなければならない。
定期以外の客
特に観光の客を取り込むことで鉄道会社の収益を確立していきたい。」
そこで「しまかぜ」の他にも観光地を結ぶ列車を次々に運航することにした。
伊勢志摩地域を走る「つどい」。
3両すべてに子どもの遊び場を作った。
親子連れに乗ってもらい沿線にある観光施設の利用促進を狙っている。
(乗客)
「こういう列車があると来たいと思います」
さらに今年9月に運航を開始したのが「青の交響曲(シンフォニー)」。
大阪と奈良の吉野を結ぶ。
ターゲットはシニア世代が中心である。
バーカウンターを用意しお酒を豊富に取り揃えている。
観光列車による売り上げは全体から見ればわずかだが
減収を補う1つの手段として今後も力を入れていく方針である。
(近畿日本鉄道 観光事業統括部 下釜恭道課長)
「地域によって素材が違いますので
いろいろな観光特急ができる。
興味を持っていただいて
鉄道の旅の需要が全体のパイとして上がっていく。」
11月18日 おはよう日本
11月にアメリカのロサンゼルスで開かれたモーターショー。
地元企業が動画を公開し注目を集めた。
ほぼ真空状態のチューブの中を高速で移動。
リニアモーターカーのように磁石の力を利用して
飛行機より早い時速1200㎞で移動する未来の乗り物である。
計算上は東京ー大阪間をわずか30分で移動できる。
2021年の実用化が目指されている。
さらに会場ではこうした技術が普及した未来の社会はどうなるか。
自動運転が進化し
単なる移動手段とは異なる新たな車の姿も示された。
11月15日に始まったロサンゼルスのモーターショーは
38のブランドが参加する世界有数の展示会である。
2050年に車はどんな姿になっているのか。
そのビジョンを競うコンテストが開かれた。
なかでも注目を集めたのは
自動運転の車が将来どこまで生活を変えるのか
未来の姿を競うコンテストである。
各国の大手自動車メーカーやデザイン会社など5つのチームが参加した。
アメリカの映画関連会社がかかげたテーマは「ムービー・ナイト」。
車内の窓ガラスがすべて映画のスクリーンに変わり
360度映画の世界に浸りながら目的地まで移動できる車である。
日本の自動車メーカーのホンダが出展したのは5人乗りのカプセル。
普段は超高層ビルの中の部屋の一部で
人々はここで暮らしているという想定である。
外出するときもこのカプセルで移動する。
動くことができるのは道路だけではない。
ロボットの足を取りつければ深い森の中も自由に移動できる。
今までの車の概念を覆したアイデアだった。
コンテストの結果は
「優勝チームは“ホンダ”。」
自動運転の可能性を広げる世界観が最も高い評価を獲得した。
(ホンダ リッキー・スー主席デザイナー)
「車は興奮だけじゃなく
今後はくつろぎや安全を提供できる。
未来の車でそれを提供していきたい。」
暮らしを大きく変える可能性を秘めた未来の車。
自動運転の先を見据えた競争はすでに始まっている。
11月17日 国際報道2016
インドネシアのアチェ州は12年前
スマトラ島沖地震の後に発生したインド洋大津波で16万人以上という膨大な犠牲を出した。
バンダアチェ市内にある津波博物館。
インド洋大津波の記憶を後世に伝えようと2009年に開館した。
館内には巨大津波で被災した品々が多数展示されている。
新たに設けられたのは
日本の「稲村の火」を公開するコーナーである。
「稲村の火」とは
1854年 安政南海沖地震が起きた際
潮が引いていくのを見て津波の襲来を予想した商人 濱口梧陵(ごりょう)が
刈り取ったばかりの自分の稲の束に火をつけて村人に危険を知らせ
多くの命を救った
という話である。
(訪問者)
「津波の兆候がどんなものか初めて知りました。」
このコーナーの設立にかかわったムザイリン・アファンさん。
ムザイリンさんは地元の大学で津波防災の研究をしている。
日本の研究者との交流の中で「稲村の火」の話を知り
自己犠牲と他人への思いやりの精神に心を打たれたと言う。
(ムザイリン・アファンさん)
「自らの財産を燃やしてまで
多くの人を救ったことに感動しました。」
ムザイリンさんが防災の研究を始めたのは自身の苦い経験がきっかけだった。
両親と兄弟 合わせて8人をのみ込んでいく津波を前になすすべがなかったのである。
(ムザイリン・アファンさん)
「津波のことを知らず
何が起きるのか予測もできませんでした。
『逃げろ』と言えば逃げる時間もあったはずなのに。
家族を救えなかったことを悔やんでいます。」
復興が進むアチェでは住宅や道路が整備され
人口も増え始めている。
しかし新しく移り住んだ人や子どもたちは津波の恐ろしさを知らない。
(住民)
「そんなに頻繁には起きないでしょう。」
「防災訓練に参加したことはありません。
津波はもう来ないと思っています。」
二度と同じ悲劇を繰り返したくない。
ムザイリンさんは大学の授業でも「稲村の火」の物語を教材に使っている。
(ムザイリン・アファンさん)
「地震が起きたら
高台に避難して命を守るよう子どもたちに意識付けるには
どんな方法が効果的でしょう?」
この日の授業では
津波を知らない子どもたちにどうやって非難の仕方を教えるのかを考えた。
そして子どもが口ずさめるよう「稲村の火」を題材にした歌を作った。
(学生)
「どんな旋律なら子どもが覚えやすいでしょうか。」
「ドラえもんは?」
「え~ドラえもん?」
(学生)
「この歴史から教訓を学ぶことができます。
後世に残すべき話です。」
ムザイリンさんは学生たちを連れて地元の小学校を訪ねた。
そこで歌を子どもたちに歌ってもらった。
もし海面が下がったら
高台に逃げて
津波の日に思い出して
濱口梧陵のお話を
(生徒)
「どうすれば津波から身を守れるか
わかる歌でした。」
「歌だとわかりやすかった。
高台に逃げて家族を守ります。」
(ムザイリン・アファンさん)
「“稲村の火”は人々を救っただけでなく
災害時の被害を抑えるという教えです。
私たちも濱口梧陵の行動を共有していきたいです。」
ムザイリンさんは
今後 州政府とも連携して
歌やセミナーなどを通じてインドネシア各地に「稲村の火」の教訓を伝えたい
と話している。
同時に
大津波を経験した人たちの証言記録を集め
博物館で誰もが疑似体験できるようにして
津波の記憶を残していきたいということである。
(食べログ)
東京メトロ有楽町線「銀座一丁目」駅7番出口より徒歩1分
東京メトロ銀座線「京橋」駅2番出口より徒歩3分
東京メトロ銀座線「銀座」駅A13出口より徒歩5分
JR有楽町駅より徒歩5分
キラリトギンザ8F
12月6日 編集手帳
ぴったり87センチだという。
「一本足打法」の王貞治さんが、
高く上げた右足を踏み出す。
軸となる左足と、
着地した右足の距離である。
野球評論家の近藤唯之さんによれば、
87センチは畳の横幅だという。
巨人軍の打撃コーチ、
荒川博さんの自宅に敷かれていた畳である。
千回振っても寸分違わぬスイングになるよう、
畳の横幅を体に刻み込んだ。
バットを振って振って、
振り抜く。
“荒川道場”の異名はダテではない。
王選手は道場通いを休まなかった。
「これからうかがいます」。
深酒でろれつが回らず、
このひと言を電話で伝えるのに3分かかったという伝説が残っている。
鍛える側も、
鍛えられる側も、
練習の鬼であったろう。
一本足打法が完成したのはいつですか?
7年前、
講談社の宣伝誌『本』でスポーツライターの二宮清純さんに問われて、
荒川さんは答えている。
〈完成しなかったね〉。
なんと厳しい目だろう。
「世界の王」を育て、
荒川さんが86歳で亡くなった。
天賦の才能も、
ときに鬼となり、
情熱の火の玉となり、
磨いてくれる人がいて光輝くのだろう。
「天」という字は“二人”で出来ている。
11月17日 キャッチ!
ブラジル人がこよなく愛する酒“カシャーサ”。
その楽しみ方はさまざまだが
柑橘系の果物を入れたカクテルが人気である。
ライムにたっぷりの砂糖
そこにカシャーサを注ぎ込むと
日本でもおなじみの“カイピリーニャ(かわいい田舎娘”のでき上がりである。
カシャーサの特徴は
ブラジルの大地の栄養を十分に吸ったサトウキビの独特の風味と
喉に残る苦味。
その野性味あふれる味を
ブラジルのライムやリンゴなどの果物
そしてミントの葉の香りとともに楽しむ。
同じ蒸留酒のウイスキーやテキーラなどと比べると世界にはあまり知られていない。
そこでブラジル政府はカシャーサを国際的なブランドに育て上げようと
2009年にカシャーサの定義を決めた。
国内でサトウキビを使って作られるアルコール度数が38~48度の蒸留酒だけに
その名を使えることにした。
しかし世界的に知名度を上げるのはまだまだこれからである。
(カシャーサ販促団体 カルロス・リマさん)
「海外で消費される余地は大いにあります。
政府にはもっとPRしてほしいです。」
ブラジルに渡ったポルトガル人が持ち込んだサトウキビで最初に作られたと言われるカシャーサ。
地元では今年を誕生500年の節目の年と考えている。
この記念の年に合わせて愛好家は小規模ながら独自にカシャーサ作りに励んでいて
なかには熟成を重ね芳醇な香りに挑戦する愛好家もいる。
サンパウロ郊外に住むウィリー・ジルさん(70)。
もともと法律関係の仕事に従事していたが
60歳になったのを契機に「自分が愛する酒を追求したい」と一念発起。
カシャーサ製造の工房を作った。
手作りには独特の個性が出ると自慢する。
(カシャーサ工房経営 ウィリー・ジルさん)
「私のカシャーサを皆が味わい満足してくれるのが一番の喜びです。」
手作りの魅力は作業の丁寧さである。
ジルさんが原料に使うのは自分の畑で育てた無農薬のサトウキビだけ。
また発酵させる際にも大規模工場で使うような化学酵母は使わない。
(カシャーサ工房経営 ウィリー・ジルさん)
「私たちの酵母はサトウキビ汁から抽出します。」
ジルさんは酵母の抽出だけに10日間もかかる手間を惜しまない。
ジルさんが最もこだわるのは「黄金」と名付けられた銘柄である。
ブラジルの国を代表する3種類の木で作った樽で熟成させ
それぞれを絶妙な配合でブレンドしている。
不純物が入っていないか
1本1本自らが確認をする。
ジルさんのカシャーサには愛情とこだわりが溶け込んでいる。
ジルさんの工房は話題となり
連日のように工房見学者が訪れる。
(観光客)
「とても愛情を込めているのが印象的でした。」
「お土産用にたくさん買いました。」
ジルさんはこれからも手作りのカシャーサを素晴らしさを伝え続けたいと話している。
(カシャーサ工房経営 ウィリー・ジルさん)
「私の夢はカシャーサが世界的に有名になることです。
私の造ったカシャーサも貢献できればいいと思います。」
11月16日 おはよう日本
10月 京都市の中心部で行われた警察の夜間パトロール。
2人1組で
一見するとこれまでのパトロールと違いがないように見えるが
そのやり方は大きく変わっている。
パトロールに出る前に警察官たちはパソコンをチェックするようになった。
「この辺ね 発生予測。
この周辺を綿密に警ら(パトロール)します。」
いつどこでどのような犯罪が発生するか
あらかじめ予測してから出かける。
それを可能にしたのが全国で初めて導入された“予測型犯罪防御システム”である。
10年前から蓄積され今も日々増えていく10万件を超える膨大な犯罪発生情報
いわゆるビッグデータ。
これに独自の計算式を当てはめることで
どのような犯罪がいつ発生する可能性が高いのか
エリアごとに予測できる。
エリアは犯罪の種類ごとに150m四方の範囲で色分けされ
その犯罪が発生する可能性が高いほど色が濃くなる。
こうしたエリアを重点的にパトロールし犯罪の防止を目指す。
この日警察官たちはシステムが性犯罪が起きると予測したエリアに向かった。
特に可能性が高いと予測された場所ではふだん使わない赤色灯を点灯。
あたり一帯に警察が警戒していることを知らしめる。
他のチームが警戒するのは「車上狙い」。
住宅が立ち並ぶエリアで発生が予測された。
薄暗いコインパーキングに留めてあった車が被害に遭っていないか念入りに見回る。
「簡単に時間帯と犯罪の種類を指定して
検索したらすぐに予測結果が出るので
効率的かなと。」
京都府警がモデルにしたのはアメリカ西部カリフォルニア州のサンタクルーズ市警である。
5年前に犯罪予測システムを導入。
その判断に忠実に従ってパトロールを実施することで
犯罪の発生率を2割近く減らすことに成功した。
京都府警では去年3月に現地を視察。
システムがいかに力を発揮するか目の当たりにした。
(刑事企画課 情勢分析支援室 田中智士室長)
「効果があると肌身で感じることができた。
究極の犯罪の抑止対策のひとつの方法が“予測”。
犯罪がエスカレートする前に犯人を捕まえる。」
都府警はこのシステムをベースにさらに防犯対策を強めたいとしている。
アメリカの警察が原則 システムの予測に忠実に動くのに対して
京都府警は日本の警察が培ってきた現場の警察官たちの知恵や工夫も加え
パトロールの方針を柔軟に変えてもいいと指導している。
(刑事企画課 情勢分析支援室 田中智士室長)
「経験や知識が要らないということではなく
相乗効果で2つを組み合わせて使ってもらえたらなと。」
未来の犯罪を予測し先回りする。
新たな警察活動に向けた試みが始まっている。
11月15日 国際報道2016
フランスで暮らすイスラム教徒の移民は500万人にのぼると言われ
フランス社会の一部を形成してきた。
ところが同時テロを受けて国内に非常事態宣言が敷かれると
「違法な活動を行っていた」などとして
20か所以上のイスラム教の礼拝所は強制的に閉鎖に追い込まれた。
イスラム教徒の間では「いわれのない嫌疑をかけられ不当だ」と不満が募っている。
(イスラム教徒)
「今や起きていることすべてがイスラムのせいになる。
どこでも悪者扱いされる。」
「すごく不満です。
もう周囲と手を携えて何かしようという気になれません。」
この1年
特に差別や偏見の標的となってきたのがイスラム教徒の女性がかぶるスカーフである。
最近では大学や職場でもスカーフの着用が問題視されるようになり
路上ではぎとられる事件まで起きている。
10月 パリ郊外で開かれた小さな写真展はイスラム女性への差別をなくそうと開かれた。
スカーフをかぶった女性たちが自身の主張を表現。
作品に登場するハシバ・サトーリさんは心の内を思い切って現した。
(サトーリさん)
「閉ざされたシャッターは国家を示し
“イスラム嫌い”人種差別を表現しています。
私は閉ざされたシャッターを開きたいのです。
大切なのは閉じこもらずに行動すること。
自分たちのことをもっと話すのです。」
週末になると青空市場に足を運ぶサトーリさん。
支援団体とともにイスラム教徒の女性への理解を呼び掛けている。
しかし活動の最中に非難を浴びることも少なくない。
(男性)
「宗教はいま過激な方向へ向かっている。」
(サトーリさん)
「過激派と一緒にしないで。
私は自分の意志でスカーフをかぶっているのよ。」
(男性)
「スカーフを脱げないのは夫が許さないからだという人もたくさんいる。」
(サトーリさん)
「そういうケースもあるけれどすべて一緒にしないで。」
(男性)
「哲学者も言っている。
自分で考えろ 服従するなとね。」
(サトーリさん)
「ほらね これが“イスラム嫌い”です。
自由と言いながら私に自由を与えない。」
フランス社会に広がるイスラム教徒への差別や偏見。
これに拍車をかけたのが今年7月に南部ニースで起きたテロ事件である。
チュニジア人の男が大型トラックで花火見物客に突っ込み
86人が犠牲になった。
フランス国民にとって大切な「革命記念日」に
子どもを含む大勢の命が奪われたことで
イスラム教徒への風当たりがますます強くなっているのです。
(住民)
「イスラムの人たちを何かにつけて疑ってしまう。
いけないことだけど過激派と重ねてしまいます。」
(イスラム教徒の住民)
「以前と全く違い
皆から疑いの目で見られます。
娘のことが心配で買い物にも行けません。」
当時 現場に居合わせたアメンダリ・ヤヤウィさん(32)。
チュニジア人の父とフランス人の母を持ち移民2世としてこの町で育った。
ヤヤウィさんはトラックが目の前に迫るなか海岸に飛び降りて危うく難を逃れたが
その時の光景はいまだに脳裏から離れないと言う。
「逃げ惑う人の中に幼い男の子もいたんだ。」
実はこの時の犠牲者の約3割はイスラム教徒で
ヤヤウィさんが目撃した男の子も同じ町に住むイスラム教徒の移民だった。
男の子はテロの犠牲になった。
ヤヤウィさんの心をさらに傷つける出来事があった。
追悼の場で父の祖国チュニジアの国旗をあしらったTシャツを着ていたヤヤウィさんに
若者が突然心ない言葉をあびせたのである。
(ヤヤウィさん)
「彼は僕を見て『そのTシャツに描かれているのはISの旗か?』と聞いてきた。
自分がテロリスト扱いされたことに衝撃を受けた。
二重に傷つけられた。」
自分もフランス人なのになぜこのような差別を受けなければならないのか。
ヤヤウィさんは不条理を感じている。
(ヤヤウィさん)
「人々は僕を見てフランス人だと思わない。
アラブ人の顔で髭があるだけでテロリスト扱いだ。
でも僕はフランス人だ。
フランスで生まれ育ち学校に通い働き
フランスで生きている。
僕はテロリストじゃない。
同じ人間です。」
いつまたテロが起きるのか。
社会全体が漠然とした不安に包まれるなか
国民の分断は一層深まっている。
’イスラム教指導者)
「イスラム差別は頂点に達しています。
まるで社会とイスラム教徒の衝突を望んでいるかのよう。
10年後のテロの予備軍を生み出す恐れもあるでしょう。」
11月14日 国際報道2016
フランス西部の中学校。
10月に応急処置の訓練が行われた。
(講師)
「傷口は手で押さえること。
自分の手は必ずカバーして。」
フランスの公立学校は過激派組織ISイスラミックステートがテロの標的にすると宣言している。
政府はこの秋から
すべての学校で不審者の侵入対応訓練を
さらに中学校には応急処置の訓練を義務付けた。
(生徒)
「慣れないので少し難しいです。」
(校長)
「残念ながら現状では生徒が襲われた場合に備えた対応が必要です。」
この1年 フランスでは各地でテロが相次いだ。
フランス北部ノルマンディー地方の教会は今年7月
イスラム過激派とのつながりがある疑いで監視対象となっていた男2人に襲撃された。
フランスではこうした監視対象者は今や1万1,000人にのぼる。
その情報の取り扱いがいま問題となっている。
政府は監視を効果的に行うためだとして
情報を厳しく管理し
こうした人物がいる自治体にさえ情報を提供していない。
これに対して自治体ではいらだちと不安が高まっている。
テロにかかわる人物がすぐ近くに潜んでいる恐れもあるとして情報提供を求めている。
(エブルー市 市長)
「市内の誰が危険人物で
何人いるのか
わからなければ市民の安全は確保できません。
国だけではもはや安全を確保できない。
国も我々を支援すべきです。」
さらにテロ対策の最前線に立ってきた警察官たちも不満を爆発させている。
テロ対策に終わりが見えず
パリ近郊では警察官が犠牲になる事件も起きた。
疲労と緊張が続く現状に耐えかね連日のように各地でデモを行っている。
(デモ参加者)
「もううんざりです。
労働条件も安全確保の面でも。」
「装備も現場の人員ももっと増やしてほしい。」
国を挙げた警戒が続くなか
態勢や待遇が見直されなければ
長期にわたるテロとの戦いは難しいと悲鳴を上げているのである。
一方で異なる文化や宗教を持つ人たちの共生を目指そうという動きもある。
パリ近郊の町サングラシアン。
この日 市長が子どもたちの集まる施設を訪れた。
(サングラシアン市 市長)
「私たちの歴史を記念して祝日があるのよ。」
子どもたちがフランス国民として同じ価値観を共有できるよう
国の歴史や文化を教える活動に力を入れている。
(サングラシアン市 市長)
「子どもたちとのこういう触れ合いは特に重要です。
“共に生きよう”という意識を育むことができます。」
市長が共生のカギだと考えているのが
イスラム教ともキリスト教徒も公の場で宗教色を出さないという国是を徹底することである。
フランスでは公立学校でイスラム教徒がスカーフをかぶることは禁止されている。
市長はさらに考えを推し進め
今年6月 自らは
“スカーフをかぶったて人がいる焦点をボイコットする”と宣言した。
この市長の行動がさらなる対立を生むことになった。
イスラム教徒たちは
“市長がイスラム教徒の自由を奪い分断をあおっている”と反発している。
(イスラム系団体支援者)
「市長はイスラム教徒を“2級市民”扱いしています。
“共生”だと言われても上から目線の押しつけに聞こえます。」
パリの同時テロから1年。
終わりのないテロの脅威を前に
フランス社会では不信感や敵意が深く根をおろし
重苦しい閉塞感に包まれている。
(社会学者)
「我々は講師ともにテロにがんじがらめになっています。
テロは対立を深め
人々は他社を認めず
閉鎖的な社会を求めるようになります。」