少し前にジブリの本を読んで思い出したのがこの1冊です。
映画「Shall we ダンス?」は当時、日本で映画を観にいくのは今以上にハリウッド作品が主流という時代でしたが、閉塞感があった日本の映画界でスマッシュヒットを飛ばし、その後、アメリカでもヒットするという異例ずくめの映画でした。
その、アメリカ公開へ至る契約の攻防から舞台挨拶やインタビューのためのアメリカツアーまでを詳細に書かれた1冊。
まず、ミラマックスとの攻防。映画をずたずたに編集されて、ショックを受けるも、2時間枠に入れた方がヒットする、という相手の条件をのみ、かつ、作品の意味が変わらないような綿密なカットをする様。
カットとは別に、日本人なら言わなくても分かるような事柄。たとえば、当時の日本人の中年男性が社交ダンスを始めたら、多少なりとも奇異な目で見られそうな時代背景、「愛してる」とわざわざ口にしない夫婦関係。そういうものはアメリカ人にとっては理解できないもの。そのため、日本にはない解説を冒頭に入れたりする。
そして、契約書の攻防。これはもうライオンに鼠が戦いを挑むような不利な形勢。
そして各地を周り、取材を受け続けるところも、取材者の写真から取材内容まで詳細に書き残している。毎日のように同じような質問。それならともかく、いろいろなキャラのインタビュアーに辟易する姿がうかがえる。
周防監督は記録魔なのか!というくらい、綿密に描かれている。こういう記録ができる人だから「Shall we ダンス?」のような誰がみても分かるような映画が作れるのだろうな。
ただ、周防監督が「Shall we ダンス?」以降寡作になってしまったのは、このハリウッドとの攻防が原因だったのではないかと勘繰りたくなってしまう。