La douce vie

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「柔らかな頬」 桐野夏生

2024-05-06 | book/comic
幼児失踪事件を軸にした物語。

こういう事件のご家族の苦しみようは想像を絶する。ただ、この物語の母親(主人公)に関していえば、事件前からの行動や人間性が丹念に描かれていることで、私個人としてはこの物語に関し、主人公への共感性は生まれず、物語の成り行きを傍観者として読み進めることができる。

この母親にとって、周囲の人は家族すら無自覚であっても利用価値で関わり、相手の気持ちや状況など察したり、思いやりを示したりしようとしない。自分の感情に正直で邪魔になるものは切り捨てる。それが、自分の意志でない時に呆然として、傷付く。その価値観は事件後時間が経っても変わることなく、一生変わらないだろう、と思わせる。

ちなみに結末は私の個人的な考えはあれは母親の夢ではないかと思う。それまでに内海やカスミがいくつか見る白昼夢のひとつだと思う。それは、たとえ物語でも子供が無事である可能性を信じたいという私の願望の表れかもしれない。


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