CubとSRと

ただの日記

羽仁五郎という名前を耳にすることはなくなったな~。

2023年06月26日 | 心の持ち様
 書評 BOOKREVIEW 
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 なぜこうもトンチンカンな言論が日本に蔓延っているのか
  まっかな偽物、なにも知らない『専門家』、偽善家らは『営業左翼』で生き延びる

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 飯山陽『愚か者!  あっち系の懲りない面々』(ワック)
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 読み出したら止まらない、語り口が井戸端会議で、判りやすい。「あっち系の懲りない面々」の矛盾と偽善が瞬間で把握できる稀な本である。
 語り口が現代風でテンポも速い。
 著者は中東専門家、それもイスラム思想研究家だから、前回の高山正之氏との対談も面白かった。
 この本でもイランとサウジの仲直りを中国が仲介したが、日本のメディアはまったく本質を理解しないで浮き足立った分析を展開した。このあたりの詳細は一番読み応えがあり、「こどもニュース」の解説者イケガミの言っていることがどれほどリアルな世界からかけ離れた愚論であるかが了解できる。

 徹底的にシリアスなのに漫談風だから面白さは二倍。抱腹絶倒のあと、残る感想といえば、左翼が日本にまだ生き残っているという摩訶不可思議な事態である。こればかりは評者(宮崎)には理解できない。

 なぜ司馬遼太郎や松本清張という左翼作家がまだ読まれるのか。それは戦後日本人が史観を失い、GHQが壊した歴史の中枢にあった日本精神が遠くへ行ったからだろう。
 上野千鶴子なる「天下の偽物」は、「営業左翼」だった。「おひとり様」は、営業看板で実生活は結婚していたというから偽善も甚だしい。
 しかしいるよね、この手の営業左翼たちが。。
 この箇所を読んで次は瀬戸内寂聴の批判が聞けるかと思ったが、三浦瑠麗批判へ飛んでいる。寂聴女史は売僧だったが、まだ偽宗教思想なるものに欺されている信者がいる。それもかなりの数である。

 戦後、GHQ路線にしたがった御用聞き学者、評論家がごまんと出て丸山真男などが代表するが、林房雄はかれら進歩的ブンカジンを珍歩的ブンカジンと一括していた。
 革命を煽った羽仁五郎など、豪邸に住んでいた。そのことに矛盾と認識できないという感性の持ち主だった。
 こうした「あっち系」のガクシャらが書き殴ったベストセラー本は、最近は古本屋も引き取らず産業廃棄物である。

 昭和四十年代に『営業左翼』が輩出した。
 野坂とか大島渚とか。大江とかがいたが、この世界の矛盾と偽善をかぎ取って開高健は離脱した。
 石原慎太郎も江藤淳も麻疹のような左翼的風潮に欺瞞を発見し、日本回帰した。おくれて清水幾太郎とか吉本隆明とかも営業左翼はやめたが、日本回帰は出来なかった。

 営業左翼全盛から半世紀をへたが、おどろくべし。まだ論壇の片隅にいたのだ。
 朝日新聞は嘗て「アカが書き、やくざが売って、馬鹿が読む」といわれた。いまは「馬鹿が書き、やくざも売らず、読者無し」となった。
 ところが奇妙な言説をはく「愚か者」たちと、彼らのコメントを好んで載せるメディアがハイエナのように生き残り、うろつきまわり、衆愚を育てている。だからヤマガミが出た。

 偽物の典型は前述の上野千鶴子、三浦瑠麗、イケガミ某、加藤登紀子など。三浦の論文は教員の立場から言えば論文の形式もなしていない落第点トカ。外国人でもエマニエルトッドやチョムスキーらをばっさりと斬る。

 さて本書を読みながら評者はしきりと新宿ゴールデン街の風景をなつかしく思い出したのだ。
 左翼全盛時代、前田という『論壇バー』でいかなり喧嘩をふっけられた。朝日新聞と文春(当時の文春はアンチ朝日だった)が同席する「花の木」では、本田靖春と天皇制をめぐって激論を闘わせた。
 この店は村上兵衛、柴田穂、佐々克行らのたまり場だった。アングラ俳優や左翼編集者があつまる某店はゴシップの吹きだまりのようで紫煙が立ちこめていた。あの雰囲気がいまはない。
 過日、昼下がりのゴールデン街を歩いた。もちろん店は閉まっているが、営業左翼がつどうような雰囲気はなく、歩いているのは出入りの酒屋と写真を撮影する観光客ばかり、あの時代ははるか彼方へ去ったのだ。

 日本はG7に足並みをそろえたがるが、ほかの六カ国とは文化も歴史も異なり、G7的な価値観を日本が共有する必要なはいとして飯山さんは、一言で言う。
『世界の価値観を決めるのは欧米じゃない』
新聞を読んでいかりがこみ上げたら、本書を読むとすっきりするだろう。

       ◎☆□☆み□☆☆□や☆◎☆□ざ☆□☆◎き☆□☆◎  



 「宮崎正弘の国際情勢解題」 
    令和五年(2023) 6月24日(土曜日)弐
        通巻第7808号 より
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