CubとSRと

ただの日記

まずは、戦後の日本から具体的に何が奪われたのかを知る

2023年06月09日 | 心の持ち様
 
書評 BOOKREVIEW
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  淡々と語られる愛国心の目覚めから予備自衛官に挑んだ日々
   合気道が歴史への覚醒を呼び起こし、自然と農業と狩猟、そして尖閣へ

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葛城奈海『日本を守るため、明日から戦えますか?』(ビジネス社)
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 現代日本人は国際的に「情勢認識が乏しい」とよく言われる。お花畑で育った平和を乙女の祈りのように口ずさんでいれば平和は維持できると、若者ばかりか、驚くべし、国会議員の半分近くが「信じている」。
 ウクライナ人が聞いたら尻餅をつくに違いない。
 広島G7や核議論で、なんとも日本は国際的常識以下のレベルで議論している現実に、多数の国会議員は焦りも感じないらしい。
 いや、著者の葛城さんもそうだったのだ。
 「中学高校で私が受けた教育に『日本人らしさを育むもの』はすっぱりと抜け落ちていた」
 過去の日本はみんな悪いと吹き込まれた。それがアメリカのしかけたWGIPの洗脳の仕掛けだと気がついたのは映画『ムルデカ』が切っ掛けだったという。
 合気道をならっていても、なぜか指導者の考え方とは距離を置いた。稽古場にミニチュアの神社が置かれていたのも違和感があったと正直に言われる。
 自然への関心はもとより深く東大農学部では有機農業を学び実践した。この体験が『國を守る』とは何かを考える状況に誘ったのだという。そのうえで在学中、合気道の練習に励んだ動機は、読んで感動した『次郎物語』に「武士道とはいかに死ぬかの道である」という『葉隠』の一節があって関心を抱いてきたからだった。潜在意識に蓄積されていたのだ。

 或る日、目覚めた。
いかに自虐史観からぬけだせたかの個人的体験。たぶんそれは戦後教育をうけて育った多くの日本人に共通のことだが、実体験ゆえに説得力がある。
 そして気がついたら葛城さんはすぐに闘いを始めたのだ。気がついても立ち上がらず評論家に徹する人とは劃然と異なるのである。せめてブルーリボンでもつけてください、とよびかける。
 闘いは悪でなく、ときに正義であり、戦う決意が必要なのだ。そして葛城さんは予備自衛官の試験を受け、防衛省の案内のガイドに専従し、尖閣諸島へは十五回も渡航し、その活動の多彩さには目を瞠らせれる。

 神武天皇肇国の理念は「八紘一宇」(『日本書記』では「八紘為宇」)である。
 「だから本来の日本を取り戻したい。そのために、まずは、戦後の日本から具体的に何が奪われたのかを知ることが必要です。だからこそ、『墨塗り教科書』の墨を剥ぎ、その下に書かれていたことを知ることは大きな意味がある」と力説する。

 余滴ながら鯨は日本文化であり縄文時代から鯨漁は盛んだった。本書で教わった新事実(というより評者が知らなかったのだが)がある。
 なぜ日本の捕鯨が批判の対象になったか。
1972年のベトナム戦争中にアメリカが突如、日本に捕鯨問題で難癖をつけ、以後、国際問題化して日本は非難の矢面に立たされた。裏舞台は、おりからの国連人間環境会議で、ベトナムにおける枯葉剤という残忍な米軍の作戦への批判をさけるためのスケープゴーツだったこと。しかも日本の捕鯨に火をつけながら米国は、『ミサイルや衛星の潤滑油として使うマッコウクジラの頭由を日本から輸入していたというのだから御都合主義に開いた口がふさがりません』(207p)。

 蛇足ながら174pの「道鏡が高位を狙った」という箇所は「皇位」の誤植デス。


 「宮崎正弘の国際情勢解題」 
    令和五年(2023)6月8日(木曜日)弐
        通巻第7786号より
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