「耳がおかしくなったら中耳炎」だ、としか考えられなかった中学生が、「外耳炎」なんてものがある、と知った。その知識だけのままで大人になった。
三十も半ばを過ぎて、職場の上司の突然の入院で「突然、立って歩くことすらできなくなる」なんて病気があると知った。
それが三半規管の異常に拠るものだと。耳の病気、という範疇になる。
体の疲労、神経疲れなどで、突然起こるらしい。そして数日で回復する場合もあれば日数がかかることもある、早い話が能く分からない病気だ。「突発性難聴」などと同じ、か。
見た目特に弱っている風でもないのにとにかく立って歩けない。
当然、発症時は元気そうでも、立っているだけで気分が悪くなるのだから、当然歩くことができず、放っておけばどんどん身体が衰えていく。突発性難聴もおそらく同じことが起きているんだろう。
上司が入院している時、直接その話を聞いたのだけれど、まさか自分が同じような経験をするなんて思ってもいなかった。全くの他人ごと。
いや想像すらできなかった。自分に引き寄せて考えてみる、なんてこと考えられなかった。健康体だったんだろう。
数年前から数度、軽症ながら同じような経験をしている、と日記に書いてきた。
でも今回はそれとは発症までの状況が違う。簡単に言えば「バッカじゃねえの?」「あほちゃう?」の範囲。
耳周辺にある経絡を刺激することで、肩凝り等の頭部の不調を改善しようとしてやったこと。
と言えば恰好はいいけど、早い話、耳を強く引っ張り過ぎた、ということだ。
勿論「痛みに耐えられる範囲で」、と思ってやったのだが、本人が辛抱できる痛みより、軟骨の方がやわだった(単に老化している?)ということだ。
おそらく引っ張られたせいで頭部にくっついていた耳の軟骨が剥がれ、その隙間にリンパ液だか何だか知らんけど滲出したのだ。
それで頭を巡らしたり耳を触ったりするとガサガサという水の移動する(ような)音がする。
実害は(CDではなく)、SPレコードを掛けた時やラジオのチューニングが合ってない時のように、雑音が気になって聴きたいことが能く聞こえないということ。痛みは全くない。あるのは気障り。ただひたすらうざったい。脳内に向けてスピーカーが設置されているみたいで「ガサガサ」「ゴソゴソ」と鬱陶しいことこの上ない。
まあ、軟骨のことだ(すっかり決めつけている)、二三日で再びくっつくだろう。
そう思って今日が三日目。
頻度は下がったが、まだ思い出したように「ガサガサ」が始まる。