梅雨の低山は、信州でも蒸し暑くアブラムシやヤブ蚊にたかられて鬱陶しいのですが、そんな中での山仕事はもうドロドロになります。麦茶を半分ほど凍らせていきますが、吹き出る汗と共にどんどん補給しても追いつかないほどです。それでも爽涼な風が吹き抜けるとほっとします。
そんな週末の除伐の最中に見つけたのが赤い実がたわわに実るナツグミの樹でした。森の赤いルビーというところでしょうか。野生のものを見たのは初めてのような気がします。小鳥が種を運んできたのでしょう。真っ赤に熟れた実をひとつ口に含むと、甘い果肉が口の中に広がり、最後にわずかな渋みが残ります。いきなり小さな頃の記憶が蘇りました。
子供の頃、わが家にはグミの木がなく近所の家の露地にあって、そこのおばさんの厚意で食べさせてもらっいました。毎年、梅雨の季節が楽しみなほど好きで、どうしてうちにはグミの木がないのだろうと思っていました。梅雨の晴れ間に夏の匂いがする青空が覗く頃、雨露に光るひんやりしたグミを夢中で頬ばった記憶は、桑の実などと共に忘れがたいものです。
グミ(茱萸・胡頽子)は、グミ科グミ属の総称です。グミには、主にナツグミとアキグミがありますが、花期ではなく実のなる時をいいます。以前紹介したミヤマウグイスカズラは、実が小さいためか、グミのように渋みが無く甘いのに、別名を乞食グミなんていわれます。ビックリグミやトウグミなどの大果種はナツグミの変種です。総称して山グミといい鳥の餌にもなります。
挿し木で増やせるので、グミの盆栽を作ろうと、今年出た若枝を少し切ってきました。植木鉢や庭のあちこちに植えていずれかが育ったら植え替えて盆栽にするつもりです。
漢字の茱萸は、「しゅゆ」とも読みます。山茱萸(サンシュユ)という春に黄色い花を咲かせる樹があります。秋にグミのような赤い実をたくさんつけますが、ミズキ科でグミ科ではありません。実は、滋養強壮の効能があり、山茱萸酒を作ります。別名は、花がハルコガネバナ(春黄金花)、赤い 実をアキサンゴ(秋珊瑚)といい、中国・朝鮮半島原産です。小さな液果の総称を茱萸と呼んだのでしょう。
茱萸袋というのがあって、その昔、重陽(ちょうよう)の節句に、邪気を払うために身につけたり御帳にかけたりしたそうです。茱萸嚢(しゅゆのう)ともいいます。
もうひとつの胡頽子は、「ひぐみ」とも「ごみ」とも読みます。久美でぐみとも読んだようです。たくさん実がなるので、和名抄には諸成(もろなり)とも書かれました。語源には諸説あって定かではないようです。ちなみにお菓子のグミは、ドイツ語でゴムのことで果実のグミとは全く無関係です。
★ここに登場した昆虫や花、樹木は、【MORI MORI KIDS Nature Photograph Gallery】をご覧ください。信州の花3、樹木8、昆虫3、蝶・蛾・蜻蛉2で、ご覧いただけます。拡大写真もあります。
★妻女山に今年もアサギマダラが飛来しました。妻女山の真実について、詳しくは、本当の妻女山について研究した私の特集ページ「妻女山の位置と名称について」をご覧ください。