モリモリキッズ

信州里山通信。自然写真家、郷土史研究家、男の料理、著書『信州の里山トレッキング東北信編』、村上春樹さんのブログも

清滝から奇妙山へ。悪戦苦闘の山行(妻女山里山通信)

2010-01-21 | アウトドア・ネイチャーフォト
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 清滝観音堂は、信濃札所第十一番で、 仏智山 明真寺 (真言宗)より200mほど上にあります。山門を抜けて杉林を登ると観音堂が見えてきます。寺伝によると、天平年中(729~749)、聖武天皇の時代に奇妙山で霊感を受けた行基が千手観世音菩薩を掘り安置し、後に坂上田村麻呂が堂塔を創建したということです。大同年間(806~810)には、七堂伽藍が整い、二十六坊を有し繁栄したそうです。

 往古は清滝の上にあったといわれ、そのため清滝観音堂(養蚕観音)と呼ばれています。その後、滝下に移され、1822(文政五)年に現在地に建立。1837(天保八)年に焼失。1849(嘉永二)年に現在の御堂が建立されました。御詠歌は、「 清滝や 川瀬の波の 繁ければ 心静めて 頼む後の世」
 その観音堂から徒歩で15分ほど登ると清滝と阿弥陀堂があります。

 今回ここから奇妙山へ登ろうと思ったのは、往古観音堂があったという滝の上の谷を見てみたいということと、父から昭和初期に、郷土史の授業の遠足で奇妙山から清滝を巻いて下りてきたことがあると聞いたからです。実はそのルートは恐らく今回のルートとは全く別のものだろうと後で判明するのですが…。

 清滝から奇妙山への山行は、のっけからザレ場の急登で始まり、849m北の鞍部から尾根に乗ったのもつかの間、崖に阻まれます。尾根上は岩場で乗れないことが判明、延々と崖下の急斜面をトラバース(水平移動)するはめになり、山頂から延びる尾根にぶつかって行く手を阻まれた後は、40~50センチの積雪の谷を詰めることになりました。やっとの思いで谷の最上部まで行くと三方を崖に阻まれました。なんとか右手の尾根を越えると再び崖下のトラバース。高い崖がそそり立ち、主尾根にに登れそうな場所は全くありません。奇妙山山頂下を巻いて進むと、向こう側が崖の小尾根に着きました。やむなく50mほど下降して向こう側へ。登りながら横へ進むと、やがて階段状の崖場下に着きます。前方には再び高い崖。

 主尾根に取り付けそうな場所はここしかないと判断。見ると日本羚羊の足跡が上部へと続いています。ジグザグに登る日本羚羊の足跡を追いかけて崖を登ると、雪を被った主尾根が見えてきました。清滝から3時間20分あまりの悪戦苦闘の山行でした。急登と急斜面のトラバース続きでかなり脚が疲労。日溜まりの倒木に腰掛けておにぎりを食べていると、私が悪戦苦闘した崖を楽しそうに猪の母子が5、6頭ヒョコヒョコと登ってきました。あまり暖かい陽気なので、彼らも奇妙山遠足に来たのかなと思っていると私に気が付いて脱兎のごとく消えていきました。

 尾根について昼を食べて安心したのか山頂へ向かうはずが間違えて反対へ、コブ二つ目で気が付いて戻りました。山頂は、40センチほどの白銀の世界。北側の戸隠連峰、飯縄山、妙高山、斑尾山、高社山などが一望できました。帰路は南東尾根へ。雪のヤセ尾根を進むと狭い岩場へ。崖の先端に神官像が立っていますが、道はそこからトラロープを何度か使って急な崖を一気に下ります。岩の上の雪の下が凍っていて恐怖でした。ここは登りに使った方がよさそうです。

 1077mのコブで二回目のお昼。ここからは843mへ下る古いルートがあるようで、多分父が下りたのはこのコース。東豊林道で分断されてしまいましたが、昔は843の鞍部から清滝に下る山道があったのではないでしょうか。今回は、林道を調べるのも目的のひとつなので尾根を真っ直ぐ保基谷岳方面へ。やがて東豊林道の支線に出ます。あとは出発地点の清滝に向かって長い林道歩きをするだけ。林道は、清滝の反対側の山へと下りています。そこからは、歩いたルートが一望できますが、とんでもないコースであることは一目で分かります。どうりで「清滝 奇妙山」と検索をかけても、山行ルポがひとつも出てこないわけです。

 奇妙山は、行基が留錫(りゅうしゃく)した地で、臨死再生の修験の山なのです。古名を帰命山といい、一名を佛師嶽、佛師ケ嶽といいます。帰命とは、「仏の救いを信じ、身命を投げ出して従うこと。帰依」ということですね。奇妙な山ということではないのです。今回のルートは、まさにそれを感じさせるものでした。ただ、私が藪山やバリエーションルートを登るのは、藪山マニアではなく、ネイチャーフォトを撮影するためなのですが、今回はルートファインディングに忙しくそれどころではなかったのが残念でした。

★このトレッキングは、フォトドキュメントの手法で綴るトレッキング・フォトレポート【MORI MORI KIDS(低山トレッキング・フォトレポート)】にアップしました。こちらをクリックしてご覧下さい

★ネイチャーフォトは、【MORI MORI KIDS Nature Photograph Gallery】をご覧ください。キノコ、変形菌(粘菌)、コケ、花、昆虫などのスーパーマクロ写真。滝、巨樹、森の写真、特殊な技法で作るパノラマ写真など。トレッキング・フォトルポにない写真もたくさんアップしました。
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